五話 作戦開始
その日の放課後まで石月とさえも一言も喋らなかった秀は放課後すぐに携帯をひらいてとある人物にメールを送って、その人物が来るのを待った
来るのかどうかは分からないがその人物が来るのを待ち続けた
そして待ち望んだ時が来た
「………メール通り来ましたよ浅村君」
「来てくれて助かったよ石月」
不穏の空気が流れるなかで先に口を開いたのはもちろん秀だった。
「石月、俺の言葉に別に耳を傾けなくていいから聞いてくれ」
「……………」
「いいか………………」
―会議室―
ハキハキとした声で、どんどん指示を与え、あたえられた者は各自もち場所に散っていく
「二組の作業はこれらのプリントをまとめてこの背表紙を貼っていただきたいのですがいいですか?」
「………分かりました」
「では私達は行きますのでよろしくお願いします」
鍵を壁に立て掛けて役員は全員持ち場に移動していった。
「しょうがない、やるか!!」
長机に置いてあるプリントを集めて背表紙を貼っていく
しかし一人でこのプリントをまとめて背表紙を貼るには多すぎた。
「ふーやっぱり多いな…この量は」
少し疲れたため椅子に座ろうとした時
「泉さん、手伝いに来たよ」
「石月さん!?…………でも大丈夫だよ、私一人でできるから」
「うーん頑固だな、じゃあジュースでも飲みに行こ」
「え!?いや私はここで仕事をしなきゃいけないから…」
「いいでしょ、たかが3分ぐらい大丈夫だって」
強引に泉を会議室から連れ出して、自動販売機の所まで連れ出した。
硬貨を入れてボタンを押すて時だった
「泉さん、こんな所で何をしてるんだ?」
声をかけてきたのは会議室で指示を出していた男であり、 泉にわざと多く仕事を出している張本人である。
「こんな所で油売ってる暇はあるのかい?」
「………それは」
「できてるからこんな所にいるんじゃないの」
「石月さん!?」
「絶対大丈夫だよ、私を信じて♪」
「へぇ、そこまでいうのなら見してもらおうか」
嫌味な口調と、嫌味な笑顔を浮かべた後、3人は会議室に向かった
「さあ、部屋の鍵を開けてくれよ、まあ開けにくいとは思うけどな」
男の吐き気のする言葉に泉は部屋の鍵を閉めることに気づいてしまった。
スカートのポケットに鍵が入っていなかったからで、スカートのポケットを少し焦りながら探しているの泉を見た男子はニヤリと笑った
「おい、もしかして鍵を無くしたんじゃないんだろうな」
「泉さん、ジュース買うときに私に鍵を渡したじゃない、財布をとるとき邪魔だからって」
ポケットから鍵を取り出して泉に渡した。
「えっ、えっ!?……………ああ、そうだったね」
驚きながらも、会議室の鍵を開けてその扉を開けた。
「なっ!?そんなバカな」
「えっ!?」
3人が見た光景は、長机に置いてあるプリントが全て、まとめられ背表紙が貼られていた。
「ね、だから言ったでしょ」
「ぐっ……」
そしてぐうの音も出ない男にトドメの一言
「こんな所で油売ってる暇はあるのかい♪」
皮肉たっぷりに込めた言葉に男はすたこらと会議室を出ていった。
「これは……一体?」
あり得ない光景に目を白黒させる泉、確かにあの量をこんな短時間で仕上げるのは普通の高校生では無理だ
普通の高校生では……
勿論これを仕上げたのは精霊と契約しているちょっと変わった高校生
その高校生は先ほどまで石月と泉がいた自動販売機の所で男がイライラしながら帰ってくるのを新藤と楽しんでいた
「くぅー、こういうのもたまにはいいね♪」
「ああ、これで奴が泉の仕事を減らせばいいんだけどな」
「浅村君……」
意外な所まで考えていたことに新藤は少し感心していた。
缶コーヒーを飲んでる途中で、ブー、ブー、ブーと太ももで携帯が唸っていた。
(メールかな?)
携帯をスライドさせ受信したメールを開いた
「誰から?」
「携帯を覗くな!」
軽めにデコぴんで新藤から携帯を守る
「もぉー、そんなんだったら覗き見防止のフィルムをつけときなさいよ」
「それは金がかかるから嫌だ、それにデコぴんはただだからな、それじゃ」
「こらー、私はやられぞんかい!」
新藤のヤジに耳を傾けつつその場を後にした。
―KK部―
「おーい、石月待たせちまったか」
「別に大丈夫だよ、ゴメンね急に呼びだしちゃったりして」
「いいって、俺も同じようなことをしたんだ、お互い様だろ、それで用件は何?」
秀の言葉に少し笑みを浮かべながら後ろにやっていた手に持っていた紙を広げて見せた。
“入部届”と書いてあり、入部する部活がKK部て書いてあった。
「じゃーん♪」
「……………」
「あれ、私何かやっちゃったかな?」
間違いなくやらかしてしまった石月に秀の第一声
「いい病院知ってるぞ」
「こ、これはちゃんと自分で決めたことなの!!」
「あのな〜、陸上部始まって以来の長距離の星が何してんるだよ!!」
「もう陸上部じゃないもーん」
頬をぷっと膨らませる石月の頬を片手で膨らました頬を潰した。
「あのなー、お前が陸上部を辞めて陸上部がはい、そうですかって言ったのか」
「そんな訳ないよ、今だってKK部に隠れてたんだよ」
「ん!?隠れてたって?」
「あ、また来た!」
指を指した方向に見ると、北合の陸上部がこちらに走って来ていた。
「な、なんじゃありゃーーーー!!!!」
「んーと、私を陸上部に戻そうとする人達だよ」
「冷静になってる場合か逃げろよ!!」
「足が疲れた……」
小動物がすがるような目をしているのを秀が無視できるはずもなく
「しっかり捕まってろよ」
「了解♪」
「韋駄天!!」
「な、誰だ、あのとてつもないスピードを出す奴は!?」
もちろん普通の高校生が韋駄天に追いつけるはずがなくあっという間に二人の姿は見えなくなった。
結局学校中を走り回って着いたのはKK部だった。
「はぁ、はぁ、はぁ、疲れたー」
「お疲れ様です♪」
「あ、お帰りなさい石月さん」
「お帰りなさいって西脇、石月が何したか知ってんのかよ」
「はい♪新しい部員ですよね、これで部員は後二人ですね」
「部員二人って何が?」
それを聞いた西脇は持っていた携帯をするりと落としていた。
「浅村君、廃部通告されてから二日経ってるんですよ」
ああそんなこともありましたねなどと思いにふける秀
「でも、本当によかったのか石月は」
「私はただ走ることが大好きなだけで陸上部に入ったようなものだからいいの、夜走れるようになったしね」
軽く秀のウインクをする石月に、同じくウインクでこたえた。
「これで部員は後二人と顧問と副顧問の合計四人だね」
「じゃあ俺は顧問と副顧問を担当するわ、職員室に一番通いなれてるしな」
「悪い意味でですけどね」
「うっ!?まあとりあえず顧問情報を新藤からもらうか」
椅子に座ってゆったりとメールを打ち、新藤に送信した。
「んじゃあ、今日は帰りますわ」
「あ、はいお疲れ様」
カバンを手に取り、部員から出ていった。
―昇降口―
自分のロッカーから靴を取り出し、校門から出ようとした時、一人の生徒が校門に立っていた
「い、泉さん!?」
「こ、こんばんは浅村君」