六話 帰り路その2
駅を出た時にはすでに夜になっており、上を見上げると夜空には綺麗な星が輝いていた。
蒼士と駅を出て10分、二人は公園のブランコに座っていた。
「時に浅っち」
「いきなり何だ?蒼士」
「あの時間に駅にいたってことは、あの部活活動してたのか」
あの部活とは、もちろんKK部のことである。
「まあな、KK部始まって以来の大きな壁にぶつかってね」
ブランコを漕ぎながらため息を吐く。
「大きな壁?」
廃部通告のことを話すつもりはなかったが、何か情報を得られる可能性があると思い、今の現状を蒼士に話した。
「はははは、まじかよ廃部通告されるなんて凄いな」
「笑い事じゃないんだよあと一週間しかないんだよそこでだ情報ある?」
「情報?」
「部活で上手くいってない人、顧問と上手くいってない人、辛い練習についてけずに辞めそうな人がいるかどうかってこと」
秀の言葉に聞いた蒼士はふっと笑い秀に言った。
おそらく秀の質問の意味がわかったのだろう。
「他の部活がどうかは知らないけど、少なくとも俺が入ってる陸上部にはそんな奴はいないぜ」
蒼士は石月と同じく陸上部に所属しているが、種目は長距離ではなく短距離で、一年からレギュラーであり次期部長候補でもある。
そして、石月に思いをよせる一人でもある。
「そうか、そりゃ残念蒼士が入ったら、たちまち脚光を浴びてたのにな」
「俺が陸上部を辞めるなんてことないよ、俺は陸上が大好きだしな」
「石月のこともだろ」
秀がそう言ったとたんに、周りがしーんとなり、ブランコの鎖と鎖がすれる金属音しか聞こえなくなっていた。
「な、な、何言ってんだよ、別に俺はアイツのこと何とも思ってないよ」
(動揺し過ぎだろ)
それにしても蒼士の反応はなかなかにいいものだ。
ということでワンパンチ
「そうか、何とも思ってないなら良かった、ライバルが一人減ってさ」
「嘘だろお前も石月のこと好きなのか?嘘だよな」
「うそー、てかお前もっていうことは、やっぱり蒼士石月のこと好きなんだ」
ブランコから降りて地面に置いていた鞄を取る。
先に公園の出口に向かう。
「やっぱ蒼士ほどからかいがいがある奴はいないわ」
「誉めてんのか貶してんのかどっちだ」
「もちろん両方だよ」
屈託のない笑顔で答える。
公園の出口で家が違う方向のため、蒼士とはそこで別れた。
~~自宅~~
自宅に入りリビングに入るとすでに家族が食事を始めていて、家族が迎えてくれた。
「あらお帰りなさい、珍しく遅かったわね、悪いけど先にご飯食べてるわよ」
母親の浅村 洋子
家の家事全般をこなしつつ、とある小学校教師で我が家の稼ぎ口
「お帰り、ほんと珍しく遅いじゃない」
姉の浅村 咲恵
短大生でスタイルはいいが性格が最悪のため彼氏が出来てもすぐ別れてしまう
家事は一切できず、姉が作った料理で彼氏を二人ほど病院送りにした威力を持つほど
浅村家はこの二人と秀を合わせ3人家族である
父親は秀が小さい時に死んでいて、記憶すらあまり残っていない
「着替えて、手を洗ってきなさいご飯温めておくから」
「ああ、わかったよ」
「んで、あんた今日こんなに遅かったのよ」
「お、何心配してくれてんの」
「ば、バカねそんなわけないじゃないの」
少し頬を赤めながら猛反論する。
蒼士と一緒でからかいがある。
「冗談だって、姉さんの性格上そんなわけないし」
「あんたね、人をからかうのもいい加減にしなさいよ」
味噌汁を飲もうとした時真横から拳がとんでくるがそれを簡単にかわし、次の攻撃が来る前にごちそうさまをして、部屋に逃げ込む。
「はあー何か今日はどっと疲れたな」
ふと時計を見るとまだ8時ごろであったが、想像以上の疲労のため、さっさと風呂でも入って、いつもより早く布団に入って眠りについた。