四十八話 レーガル攻防戦
秀とラウルの一騒動から2週間
とある一室、暗闇の中にあるのは円卓と一本の蝋燭、さらに四つ椅子のみ。
そして蝋燭の微かな明かりでぼんやりと浮かぶ3人の顔が円卓を三角形で囲んでいた。
「例の件だが、着々と進んでいるようだな」
「ああ計画事態は問題ないんだが、一つ別の問題が出てきている」
「問題だと?」
「精霊契約者が二人確認できた」
「ほお、風の剣士の他にいたのか」
「一人は帰って来たと言うべきだろうな」
「なるほどシグマか…」
「もう一人は風の剣士の友人だそうだ、ちなみにそいつは氷獣王と契約してるそうだ」
「面白いじゃないか…よしそいつの相手は俺にやらしてもらおうか」
「ならば私はシグマとでもするが、お前はどうするディア」
「Zzz・・・・」
「おい!!大事な会議で寝るとは何事だディア」
円卓を両手で強く叩きディアを起こす。
「うるさいわね、昨日レイラちゃんと遊んで疲れてんのよ、それに会議始めるのはいいけど一人足りないんじゃないの」
「心配ない奴ならもうすぐ来る」
一人の男の予想は正しく、それから一分も経たないうちに部屋のドアが開けられ一人の少年が入ってきた。
「はぁ、はぁ、すいません寝坊しちゃって遅れました」
「寝坊したことは確かにいかんが今日ぐらいは許してやろう、さあお前も早く相手を選べ」
「相手ですか?」
少年が空いている残りの席に座ると、円卓の上に二枚の写真が置かれた。
「これは………一枚はラウルってのは分かるんですが、もう一枚のこの少年は誰ですか?」
「この前の会議で言った風の剣士だ、おそらくコイツとの戦闘は避けられんだろう」
「じゃあ僕がコイツとやりますからディアさんはラウルで我慢してくださいね」
「私は別に誰でもいいけどね」
「さて、では一時間後に作戦を実行だ」
パンパンと手を叩くと、四人全員が立ち、一人づつ部屋から出ていった。
レーガル侵略作戦まで後一時間
―レーガル城―
「行くぜ秀!!」
ちゃっかり物質憑依に慣れている連、魔力操作に関しては秀を圧倒的に上にいってた。
「おいおい、ブンブン振り回してたって俺にはあたんねーぞ連」
「そうか…ならこれでどうだ」
一旦距離を置いた連はアイスニードルとアイスドラゴンを同時に放った。
「ぬおっ、マジかよ!?」
(さあどうする)
「んなもんにいちいち付き合ってられるか!!」
アイスニードルとアイスドラゴンの猛攻をかわす秀、前に戦った時とはスピードアップしていた。
「もらったぁ!!」
一瞬の隙と隙間で一気に距離をつめるが、そこで終了の鐘が鳴った。
「よーし終わりだ、物質憑依を解くんだ」
ラウルに言われた通りに二人は物質憑依を解く。
「さて今日これぐらいにしといてささっと宿屋に帰れ、俺だってお前達にずっとはかまってられないからな、ガリアのスパイもみつかったことだしな」
「「…………」」
数秒間の間
「「えええぇぇぇ!!」」
「ん、言ってなかったっけ?」
「言ってない聞いてない記憶にない見てない」
「最後のは関係ないだろ…」
ガリアのスパイが見つかったのはつい3日ぐらいまえのことらしく、怪しい行動をしてた兵士を見つけた兵士が尾行すると、ガリア帝国に報告していたらしい。
その場で兵士を捕らえたはいいが、捕まる際に薬を飲んで自殺してしまったらしい。
つまり結局のところ詳しいことはわからずじまいになってしまったとのことらしい。
「何だか不気味だな、あれだけチェックが厳しいレーガルの兵士に成り済ますなんて」
「そうなんだよ、だからこれから今後のことについて話し合いなんだよ、ああめんどくせー」
「ホントにコイツが隊長でいいのかな?」
「ん?そんなに燃やされたいのか?」
「いえいえ、滅相もございません」
「さて、お前らと話してたらもう会議の時間になっちまったな」
「へいへい分かりやしたよ、んじゃ邪魔者達は帰りますよ」
ラウル嫌み口調で言われながらも連と秀は部屋から出ていった。
レーガル侵略作戦まで後30分
レーガル城を出て歩いている時、ふと空をみると雲行き怪しくなっていた。
(はぁー、降りゃなきゃいいんだけどな)
しかし秀願いも虚しく上空からは小雨が降りだしてきた。
「ありゃりゃ降ってきやがったぜ、早く帰ろうぜ秀」
「そうだな、こりゃいつ本降りになるかわかんねぇし、早く宿屋に帰るか」
雨が降りだしたためか、人々は各自の目的地へと向かい走り出している。
東西南北へ人が動く中で、二人も宿屋に向かい走り出していた時、秀はなぜかピタリと止まり来た方向の方角を見ていた。
「どうしたんだよ秀、早く帰ろうぜ」
「ん?ああ悪い今行く」
(何でだろう?確かあの人今……)
もう一度すれ違った方向を向き直したが、すでにさっき見た姿はなかった。
―宿屋―
「……………………」
「どうしたんだよ秀、さっきから黙ってばかりでよ」
「さっきのことなんだけどさ」
「さっきて、道端で急に立ち止まったことか?」
「ああ、さっき小雨が降ってたろ」
首を縦に降る連。
「小雨が降ってる中、一人歩いてる奴がいたんだ」
「はぁ、そんな奴いくらでもいるだろ」
「傘もささずにだぞ」
「しかも奴は、レーガル城の方角に向かっていたぞ」
「おいおい、そんなのただの考えすぎだろ」
「…………そうだといいんだけどね」
レーガル侵略作戦まで後…………10分
レーガル城を歩いていたラウルはどうやら会議が終わったらしく。
ただただ城を歩いていた。
「結局決まらずじまいになっちまったな〜」
「へー、そう変わらずじまいだったのね」
「っは、誰だ……お前は!!」
「どうもラウル、会うのはえーと……まあそんなことどうでもいいわね」
「何しにきたんだ?わざわざ燃やされに来たわけじゃないんだろ」
「ええ、あなたを殺しに来たの」
「やってみるか?結果は逆になってると思うぜ」
「試してみる?」
「ああ、行くぜルー、物質憑依だ」
臨戦体制に入ってる、物質憑依をして、いつものセリフを言う。
「俺の炎の塵となれ」
―宿屋―
「やっぱ気になる……俺ちょっと行ってくるよ」
「はあ?正気かよ秀、外見ろよ雨降ってんだぜ」
「いやでも、嫌な予感がしてしかたないんだよ、それじゃ」
「おい秀、ちょっと待てよ」
片手で軽く手を振ると、秀が出ていき、そのあとを連が追っていった。
宿屋を出て、レーガル城に向かっていた途中、なんとレーガルの兵士が倒れていた。
「お、おい大丈夫か!?」
「う、うぅ、気を……付けろ」
「おい、しっかりしろ……一体何が………」
「お、何だここにいたのかよ俺の相手さんは」
「誰だてめぇ?」
相手を睨む連
「ガリア帝国一番隊隊長クリフだ」
「ガリア帝国……」
「ああ!!お前はあの時、歩いていた奴だな」
「コイツが秀の言ってた奴か」
「ほう、気づいてたんだな」
「一体何しにきたんだよ」
「お前らに教えるつもりはない、じゃあな」
レーガル城の方向に走って行くクリフだが、秀がすぐさま正面に回り込む。
「行かせると思うのかよ」
「残念だが君の相手は俺じゃない」
「???」
「秀、上だ!!」
見上げると、上空から自分目掛けて降りてくる少年をとっさに後ろにさがりかわした。
「お、かわした、かわした、まあこれぐらいかわしてもらわないと面白くないけどね」
(ここで新手かよ…)
「クリフさん、僕は目当ての敵を見つけましたから、ささっとレーガル城に行ってください」
秀と連には目もくれずにレーガル城に向かうクリフ
「連、クリフを追え!!」
「言われなくてもそうさせてもらう」
クリフを追うこと10分、レーガル城の噴水のある広場に着いた。
「どうしたんだよ、こんなとこで立ち止まってよ、レーガル城に行くんじゃなかったのかよ」
「ん?ありゃ嘘だよ、言ったろ俺の敵ってな」
「…………」
「まあそんな呆れた顔すんるな、せっかく二人っきりになれたのだから楽しもう」
「あんたって、こっち系の人…」
手を逆方向の頬にあてる
「違うわ!!」
全力で否定するクリフ
「まあいい、始めようかレーガルをかけた勝負を」
「レオ行くぜ!!」
「こちらもいこうかナーズ」
クリフが呼ぶと、現れたのは石像のような精霊だった。
そしてナーズはクリフに吸い込まれていった。
(ん、ただの憑依か?)
「モードスタンダード」
クリフがそう言うと、クリフが着ていた鎧が頭部までガードされた。
「それがあんたの物質憑依か……いくぜ!!」
―シグマの部屋―
任務から帰って来たばかりのため、任務中に届けられた書類と戦っていた。
「くっそー、ラニアさんと今日会おうとしたのに、書類とは誤算だ」
ラニアに会えないことをぼやいていた。
「すいませーん、新しい書類届けに来たんですが…」
「どうぞ入って」
「では……遠慮なく」
がちゃりとドアを開けて、入って来た人物を見てシグマは驚いていた。
「お、お前は……」
「久しぶりだなシグマ」
「どうしたんだ任務が終わったのか?」
「いや、任務は終わってないな」
「はあ!?お前何言ってるかさっぱりだぞ?」
「簡単なことさ、任務は終わってない……今から任務を開始するんだからな」
背中に付けていた鎖を取り出す。
「な!?」
「まあ、楽しませてくれよ」
ドォォォォン!!
秀Side
「ははは、やっぱりラウルに信頼されてるだけあるよ、なかなかやるじゃないか」
「誉めていいのか、俺は誉められると伸びるタイプだから、誉めてると痛い目見るぜ」
「何だそりゃ、つべこべ言うな…いくぜ」
持っていた巨大な鎌を振り回しながら、秀に向かって走って来る。
(見えない……あれだけのバカでかい鎌をぶん回しているのに今鎌がどちらの手にあるかがわかんねぇ)
(右か…いや左だ!!)
左側から襲いかかる鎌を天つ風で防ぐが、相手は巨大な鎌に遠心力がプラスされているため、勝負はみえていた。
「ぐあ…」
「勝機♪」
体制を崩している秀に、とどめをさそうとしていた。
「なめんなこのやろう!!」
完璧に体制が崩れていたが、無理矢理体を捻って風刃を放つ。
「くっ!!」
相手がひるんでいる間に体制を立て直す。
「やるじゃん、今のはちょっと危なかったかな………でも二度も同じ手はくわない」
確かに今のは体制を崩したということだけで突っ込んで来たっいう話であって、二度も同じ手はくわないだろう。
「ならこれでどうだ」
複数の風刃を相手に向かって飛ばす
「こんなもん当たるかっての」
飛んできた風刃をかわそうとするが、風刃は手前で曲がり秀の元に戻ってくる。
「あれ?」
「あたんねー技を出すかよ、この風刃は風を量を増やすためだ」
風刃を放った直前に風をすでに発生させておき、さらに戻ってきた風刃をプラスし風を大量に発生させた。
「旋風束縛陣!!」
「な、動きがとれねぇ」
「いくぜ」
天つ風を引っ提げ相手に向かって走る
「喰らえ空破激!!」
「なめるなぁ!!」
バチィ!!
「ちっ、まさか旋風束縛陣が解かれるなんてな」
相手の大鎌とつばぜり合いになるが、遠心力がないため弾かれることはない。
「聞いといてやる、目的は何なんだ」
「目的?そんなの殺人兵器を破壊するためだ」
「殺人兵器………断罪の雷のことか!」
「そうだ、知ってるだろレーガルのスパイ事件」
敵の言葉を聞いた秀の顔からは冷や汗が出ていた。
…まさか、スパイの狙いって……
「分かったようだな、今回の作戦が」
「断罪の雷を破壊するつもりか」
今回の作戦が分かった秀にたいしてニヤリと笑う
「覚悟はいいか…………そういや名前知らないな」
「俺の名前は浅村 秀だ」
秀の名前を聞いた相手はマジでみたいな顔をしていた。
「え、もしかして日本って知ってる?」
「知ってるも何も俺も俺の仲間も日本から来たんだ………ん?もしかしたらお前って……」
「そうだよ、俺も日本から来たんだよ、霧崎 真也って言うんだ」
しばしの思考停止…
「えええぇぇぇ!!」
ラウルSide
「どうだまだやるか?」
ニヤニヤと笑うラウル、戦況はいうまでなくラウルがディアとレイラを圧倒していた。
「くっ、まだやれるわよ」
「止めとけよ、いくら屍契約だからといっても、永遠に爆発的なパワーが使えるわけじゃないんだ、それにそれ以上その子を傷つけるつもりか?」
「な、レイラは戦いたいから戦っているだけよ」
「嘘つけ、あんたが屍契約だってことぐらい分かる、レイラだったっけ?その子は……」
「うるさい、黙りなさい!!」
ラウルが何を言おうとしているのかがわったのか、ディアは必死にラウルの言葉が聞こえないようにする。
しかしラウルはそんなディアにかまわず続けた、現実をディアにつきつけるために…
「その子はもう……死んでるんだよ…」
「ば、バカね、あなたには見えないの?ほらちゃんとここにレイラはいるじゃない」
「それはあんたの思いとあんたの負が生み出した偽者だ、本体はレイラだが本当レイラじゃない」
「嘘よ…ちゃんといるじゃない、レイラは生きてるのよ」
「いい加減にしろよ、レイラは死んでるんだよ、早くレイラを成仏させやれよ」
「いや…嘘よ…レイラは死んでなんか……いやぁぁぁ!!」
ラウルの言葉にディアは膝をつき、そのままディアは泣き出してしまった。
「さてと泣いてる女に手は出したくないが…敵だし、屍契約してるし…仕方ねぇ気絶してもらうか」
槍を構えてゆっくりと歩き出した。
「……わよ」
「ん?」
「死んでなんかないわよぉぉぉぉ!!」
「な!?ディアに負が…」
その場で叫び出したディアに負が集まり、ディアにどんどん吸収されていっていた。
「一体…何が」
「おおぉぉぉぉ!!」
地を強く蹴ったディアはラウルの視界から消えていた。
「な!?一体どこに?」
辺りをキョロキョロと見渡したラウルだが、ディアの姿は見当たらない。
(くそっ、見当たらねぇ、右?左?後?どこにいる?)
「どこを見てるのかしら?」
「上かよ!!」
槍でガードしたものの、レイラの攻撃とは比べ物にならない。
「ぐっ…何て威力だ、本当に人間かよ」
「あはははは、あらラウル、この程度の攻撃で顔を歪めてたらダメよ」
「なめんなぁ!!」
走りながら槍に炎をまとわりつかせる。
そして一気ディアに向かって振り抜いた。
「火竜砕破!!」
槍から勢いよく出た炎は姿を竜に変えてディアに襲いかかる。
焦げた壁、焦げた床、熱によって溶けた窓、炎の竜が通った路にはそのような箇所が多く残っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「何だこの程度なのね大したことないじゃないのね」
「な、あの業火の中を通ったのか……」
「さようなら、ラウル隊長♪」
それは瞬間的なことだった、視界に入ったと思ったら視界から消え、その瞬間ラウル体はディアの腕が貫いていた。
「マジかよ……」
連Side
金属と金属がぶつかり合う音が広場にこだまする。
こちらの戦況は一言で言えばどっち付かずであり、まさに状況は均衡していた。
「アイスニードル!!」
「モードディフェンス」
放ったアイスニードルはクリフのいたる箇所に当たるものの、すべて弾かれ、ノーダメージという感じだ。
「どうせ無駄とは思ったけど、ここまでノーダメージだと、こっちの心が折れちまうぜ」
「仕方がないないだろ、こっちは防御重視のモードだぞ、範囲重視の攻撃でやられたら心が折れてしまう」
「ならこれでどうだ!!ツインアイスドラゴンズ!!」
「な、何!?」
両左右から襲いかかるアイスドラゴンを見てもクリフはその場から動かなかった。
「モードフルディフェンス」
クリフの鎧が銀色に光輝いた直前アイスドラゴンが直撃したが、クリフに直撃したとたんにアイスドラゴンが砕け散っていった。
「ふん、大したことないな、氷獣王と契約してるといっても口だけだな」
「んだとてめぇ!!」
「期待を裏切られたな……んじゃあなモードアクセル!!」
ハイスピードで動き始めるクリフ
「くそったれ、速すぎ…があ!!」
「おいおい、どこを見ている」
(くそっ、マジでヤバイ…)
「まあ俺のスピードについてくるなんて10年早いがな」
(あれこの言葉どこかで………思い出した!この言葉は確か秀………)
―レーガル城―
「アイスドラゴン!!」
「こんなもん当たるか」
風の力でスピードアップした秀はすでにアイスドラゴンの不規則な動きにたいしても対応ができていた。
さらに一気に距離を詰め、刃先を喉元にやった。
「くっそー、また負けた」
「当たり前だ、精霊契約したての奴に負けてたまるかってんだ」
「にしても秀のスピード反則だろ」
「まあ俺のスピードについてこようとしてるなら10年早いぜ、ついてこようとしてるならの話だけどな」
「え?」
「いいか、スピードなら明らかに俺の方が有利だ、だけど考えてみろ…………」
(ふぅー、脱力、脱力だけを考えろ…)
ハイスピードで移動している、クリフに目もくれずに両腕を下げた。
(ふ、とうとう覚悟を決めたか……なら)
「死ね!!」
完全に後を取ったが、クリフの攻撃は連にはとどかなかった。
「捕まえたぜ!!」
「な、何!?」
「喰らっとけ、アイスドラゴン!!」
(ヤバイ、モードチェンジが間に合わ……)
「ぐお!!」
アイスドラゴンが直撃したクリフは地面に叩きつけられた。
「口だけのやつにやられる気分はどうだ」
「なめるな……アクセル!!」
再びハイスピードで動クリフだがさっきの攻撃を防がれたことでなかなか攻撃ができないでいた。
(くそ、何で奴は攻撃を防ぐことができたんだ………迷っていても仕方がない一気に行かせてもらう)
今出る最大のスピードで連をかき回そうとするが、連の目はクリフを追いかけようとせず、その瞳はただまっすぐを向いている。
(奴に惑わされるな、脱力するんだ俺)
脱力しながらも思い出すのは秀の言葉
(たとえスピードが上がったとしても、お前のスピードが落ちたわけじゃないから、お前の行動の体感スピードが落ちるはずがないんだ)
だから―
《自分のテイトリーだけを考えろ、今のお前なら相手がどこから来るなんて手にとるように分かるはずだ》
「喰らえぇ!!」
「へへへ、秀の言う通りだったな凍りつけ!!」
「しまった、足を!」
攻撃場所を読み、その攻撃を紙一重でかわし、足を凍らせていた。
「お前の目的を話してもらおうか」
「そうなことを俺が話すとでも」
「なら気絶しとけ!!」
「俺に時間を与えたことを後悔しなフルディフェンス!!」
「そうそれでいい」
「何だと!?」
「お前のその硬ぇ防御を打ち破ってやるぜ、レオいくぜ!!」
〈はい、絶対にやってやりましょう!!〉
身体中の魔力を両腕に集め、次の一撃に全てをかける
「〈獅子十字撃!!〉」
クリフ目の前まで軸足を踏み出し、バックブローを腹部に直撃させる。
(ぐっ!!何て威力だ)
「まだ縦軸が残ってるぜ!!」
相手に方向に全体重をかけるように倒れ込みながらバックブローをかました箇所に腕を叩きつけ、攻撃を入れた箇所は十字に凹んでいた。
「バカな…この俺のフルディフェンスを…破るとは……皇…帝申し訳ありません」
「皇帝?おい皇帝って誰何だよ、お前の目的は何なんだよ」
クリフを揺さぶるが反応は全くない
「一体どうなってんだよ…」
シグマSide
「待て、待つんだフォン」
シグマが静止をかけるもののフォンと呼ばれた人物は止めることなく無言で鎖ぶん回す
「仕方ないか…ネクス物質憑依だ」
ネクスと呼ばれた天使のような精霊は壁に立て掛けてあった盾に憑依した。
「イージスの盾、防御力ならクリフのフルディフェンスを越える盾か」
低いトーンでシグマの物質憑依を確認するように呟く。
「一体どうしたんだフォン、何でこんなことをするんだ」
「生物が生きている限り争いなど一生なくならないだろう」
「私が言ってることはそんなことじゃない」
「じゃあどういうことだ?」
「レーガルの隊長であるお前がなぜこんなことをするんだ」
「レーガル?そんなこと知るか、今の私はガリア帝国六番隊隊長だ」
「それは本気で言っているのか?」
「本気だから今お前と戦っているのだろ!!」
鎖をぶん回し、シグマに攻撃するが、イージスの盾により簡単に防がれてしまう。
「そうか、なら仕方がない………私自ら貴様にお灸を据えてやろう」
「やってみろよ、もう昔の私ではない」
秀Side
ラウル、シグマ、連が激闘を繰り広げている頃、秀は敵と座り込みながら雑談をしていた。
「ってなことがあってよ俺からしてみればたまったもんじゃねーよ」
「分かるよそれ、学校あるあるだよな………………って何してんの俺達!?」
「いいじゃないか、日本人会ったのが久し振りなんだ少しぐらい話をしてもいいじゃないか」
「ダメだ、ラウルもシグマも連も戦ってるんだ、俺だけ敵とおしゃべりなんかしてられない」
「さっきまでのってたくせに」
「うっ!!それを言うなよ………まあ仕切りなおしといきますか」
立ち上がり両者はそれぞれの武器を構える
「疾風」
クリフのアクセルモード以上のスピードで動く
「速いねぇ、クリフさんより全然速ぇ……でも対応出来ないスピードじゃない!!」
「な、何!?」
「影縫い」
鎌の柄の部分で天つ風を受け止め、なぎはらい秀と距離を空けるとすぐ鎌を上に放り投げた。
放り投げた鎌は秀の影に刺さった。
「どこに投げてんだよ」
「お前の影に対して投げたに決まってんだろ」
「はあ?お前何言ってん………あ、あれ、体が動かない!!」
「残念だったな、これが影縫いの能力でな、生物の影に鎌を刺すことで影の持ち主は動けなくなることプラス、魔力を強制的にオフの状態にする」
「マジかよ、そんな反則的な能力があるなんて…」
「さて、これで決まったもんだぜ」
ゆっくりと秀の方に歩み寄る真也
「くっ…う、動かねぇ」
「ここからは一方的な暴力だぜ」
右フック
「痛っっっっっ」
左ストレート
「うぅぅぅ」
鳩尾をえぐるボディブロー
「ぐっ!!」
そこからは一方的な暴力だった。
真也の言う通り魔力をオフ状態にされ、風を出すことも魔力で身体強化さえ出来ない
そんな状態で行われる一方的な暴力
「はぁ、はぁ、はぁ、」
「お前凄いな、あれだけの攻撃を受けてんのにまだ意識があるなんてな」
「うっせ、丈夫なのは取り柄なんだ」
口ではそういうものの秀の意識は朦朧としていた。
「なぁ秀………ガリアに来ないか」
「何だと…」
「お前だけとは言わないさ、お前の仲間だって来ればいい、俺の権限ならそれぐらいできるんだぜ」
だから来いと言う真也
「……それはできない」
「それは何故?」
「俺達がこの世界に来たとき、いきなりカースに教われたんだ、その時ラウルに助けてもらったんだ」
「それだけか?」
「んなわけねぇだろ、助けてもらったのはラウルだけじゃない、特訓をつけてくれたシリルにこの世界に来て右も左も分からない俺達に優しく教えてくれたラニアに違う世界から来た俺達に分け隔てなく接してくれたレーガルの人達」
口にすれば出てくる人達、その全ての人達が支えてくれた。
いろんな人達が支えてくれたから今の自分達がいる
だから
「その人達のためにも負けられないんだ!!」
「なるほどな、だから答えはNoということか」
「ああ、だから俺は戦う」
「ならしかたがない影縫い解除」
秀の影から大鎌を自分の手に戻し、大鎌を振り回し始める。
(はぁ、はぁ、はぁ、動けるようになったはいいがどうすりゃいいんだ)
〈アイツ強すぎでしょ〉
大鎌をぶん回してくる真也の攻撃を天つ風で防ぐが今の秀の状態ではもはやぶっ飛ぶという域までいっていた。
(くそっ、どうすれば奴に勝てるんだ……俺にはもう真也の鎌を防ぐ術がない)
「どうした?負けられないんじゃないのか」
「……………」
(俺にできるのは無いのか………俺にはアイツに勝てないのかよ)
〈大丈夫、秀なら絶対勝てるよ〉
「シルフィー………だなやってもないのに諦めんのはダメだな」
〈そうだ、そうだーその意気だよ秀〉
「何ボソボソしゃべってやがる」
「疾風!!」
「ちっ、逃げられたか」
「にしてもアイツに勝つにはどうすりゃいいんだろうな」
〈秀が一番得意な戦術でいけばいいじゃん〉
(俺の一番得意な戦い方か…………)
「よっしゃ、行くぜシルフィー!!」
〈あ、何か思いついた顔だね♪〉
「ああ、考えたら初めっから簡単なことだったんだ」
鎌を振り回しながら走っくる真也に対して秀も走っていく。
「わざわざ死にに来たのかよ!!」
「違ーよ、疾風!!」
紙一重で鎌をかわし、真也に一撃を当てる
「ぐっ、俺の鎌を避けたのか?」
(違う、こんなスピードじゃダメだ、もっとだ、もっと、もっと速くだ…)
「何だ、いきなり秀の魔力が膨れ上がっていってやがる」
(もっと速く、もっと速くだ、全身の力を抜くんだ……風と一体になるんだ)
「な、秀の向かって風が吹いてやがる!?」
(風を感じろ…五感全てで感じろ)
(何だ……足がすくむ、震える、間違いない、今殺らなきゃ、殺られる)
風を再びを構え、秀に向かって走る、秀の息の根を完全に止めるために
「うおおぉぉぉぉぉ!!」
「行くぜシルフィー…」
〈うん!!〉
足を踏み出した時、秀は新たなスピードを得た…
「韋駄天」
(あ、あれ?秀が消えた!?)
真也がそう認識した瞬間、全身に激痛が走り、視界が揺らぎながら真也は倒れていった。
「何だ?一体何が起こったんだ…」
揺らぐ視界のなか秀を見つけ、秀を問いただす
「簡単なことだ、お前が反応できないスピードを出した、それだけだ」
「そ、そんなことが人間にできるわけが…」
「できたんだからしょうがないだろ」
その場にへたりこみながら真也に答える
「そうか、そうだな、できるんだからしょうがないよな…………あーあ負けちまったか」
地面に大の字になる真也を見つつ、秀は立ち上がり走り出す
「おいどこに行くつもりだ?」
「決まってんだろ、お前らの作戦を止めに行くんだよ」
「いいのか、止めをささなくて」
「えー、めんどくせーからいいや」
「んな!敵に情けをかけるてもりか」
「それで止めをささなくていいなら何でもかけてやらー、俺には時間がないからもう行くわ」
物質憑依を解いてレーガル城へ走り出す秀は一旦足を止め、真也に向けて言った。
「あ、この戦いが終わったらお前がレーガルに来いよ、何を思ってるかはしらないけど、ガリアが正しいか、レーガルが正しいかを話し合おうぜ俺達の仲間六人を合わせてな」
「はははは、秀って変な奴だな、まあそうだな、終わったらそうしてもいいかな」
「だろ、じゃあな」
「浅村 秀か……アイツならほんとに作戦を止めそうだな」
シグマSide
「どうしたフォン、昔とは違うんじゃないのか」
「うるさい!!」
鎖をぶん回すが、イージスの盾に簡単に弾かれる。
「まさか、この技を出すはめになるとはな」
「どんな技だろうがイージスの盾には通じない」
「エターナルチェーン!!」
外見上変化が見られない鎖をまたもや振り回してくる
「こんなもんイージスで防ぐ」
鎖が飛んでくる方向を考え、イージスの盾を構えるが、鎖は盾に当たらず当たる前に方向を変えシグマの背後から襲いかかった。
「な、何?ちっ、」
ギリギリで鎖を防ぐが鎖の威力も間違いなく上がっていた。
「一体何が起こったんだ?」
「このエターナルチェーンは伸縮自在で、鎖を自由に操作できるんだよ」
「くっ、厄介な能力つけたな」
「おいおい、エターナルチェーンの能力はそれだけじゃない」
鎖を垂らした鎖が床に着いた瞬間鎖は床をすり抜けていった。
「んな!?」
「これがエターナルチェーンの能力だ」
「物質をすり抜ける能力か!!」
「ご名答、さあせいぜいあがけよ」
鎖を横にぶん投げる、鎖は壁をすり抜け、鎖はシグマの足元から出てきた。
「くっ」
イージスの盾で何とか防ぐが、予想外のところから出てくる鎖はかなり厄介だった。
(ここは一旦退くか…)
部屋から脱出したものの、鎖は休む暇をあたえず襲いかかってくる。
「逃げられると思ってるのか!!」
シグマが走っている廊下の床に穴が空けられ、シグマはその穴に落ちてしっまった。
「ああ、ちなみにその下の廊下も穴を空けてるから気をつけてな」
「うおあああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜」
ラウルSide
ディアに刺されたラウルは急所はそれたものの、ダメージは大きかった。
「くぅ、はぁ、はぁ、」
「あら、まだ生きてるのね」
「悪いな…俺はまだ死ねないんだ」
「あなたの娘ラニアのことかしら」
「そうだ俺は誓ったんだ、もうあいつを泣かせないってな」
立ってるのがやっとなのにもかかわらずラウルは槍を構える。
それを見たディアも身構える。
「うおおおおおおおお」
ディアに向かって走って行くラウルにおもわぬ攻撃が降ってくる。
「うああああああああ」
「!?シグむあああああ」
上から降ってきた(落ちてきた)シグマはみごとにラウルに落ちた。
「く、やるようになったなフォン」
「おい、シグマ………退け…」
「ん、おおラウル私をキャッチしてくれたのか」
「んなわけあるか!!」
上から退くシグマに怒り心頭のラウル
「しょうがないだろ、フォンの攻撃から逃げた結果だ許せ」
「フォ、フォンだと……あいつが敵なのか…」
「!!ラウル危ない」
横の壁から出てきたエターナルチェーンをラウルを引っ張り、鎖の攻撃をかわした。
「ああ、おしい、もうすぐで当たりそうだったのにな」
上から鎖をつたい下りてくるフォン
「本当にフォンが…何で……」
「ラウル、今のアイツには何を言っても無駄だ」
「おおラウル、久しぶりだな、んん?随分な大けがだな、どこでで転んだか」
「うっせーよ、そんなことより勝負の邪魔なんだよお前ら」
「あら、そんな状態で戦っても無駄だと思うけど」
「うるせぇ、やってみなきゃ分かんねぇだろ」
「何をごちゃごちゃ喋ってるんだ」
鎖を背後から出し、ラウルを襲う。
「しまっ…」
「お前の相手は私だ」
しっかりとイージスの盾で防ぐ
「サンキュー、助かったぜシグマ」
「しかし、厄介な敵とあたったものだな」
「お前こそ、厄介な奴とあたったもんだな」
「「ははははははは」」
「何がおかしい」
「いや、こうしてシグマと戦うのも久しぶりだなと思ってな」
槍と盾を構えラウルが後ろにシグマが前にいく。
「さてとタッグマッチといこうかラウル」
「傷がけっこう深いからさっさと決めるぞ」