四十四話 風vs氷
暑すぎて体が動かない(´-ω-`)
その時秀は全力で走った、親友を止めるために・・・
「ここが西脇言ってた洞窟だけど・・・番号がわからねぇ」
番号とひたすらにらめっこしていた時に、研究所につながる岩壁が轟音とともに吹き飛ばされた。
「うおっ!!」
岩壁が吹っ飛ばされたことにより巻き上がる砂煙中からはっきりと秀は気配を感じた。
その砂煙から出てきたのは白銀の髪の毛をした連だった。
「連なのか?」
顔や身長は連なのだが、髪は銀髪で手にはメリケンサックがついたグローブのような物を装備していた。
「また獲物か、まあいいお前の全てを凍らしてやる」
(凄まじい魔力だな…)
〈秀、来るよ!!〉
連さんはすでにアイスニードルを放っていて、あまりの数に回避に徹底させられる。
「へぇーなかなかやるじゃん、でもこれをかわせるかな」
片手に徐々に魔力を溜めていき、溜め込んだ魔力を野球の球サイズにまで圧縮した。
そしてその球を秀に向かって投げると、その球は巨体な氷の竜となって秀に襲いかかってくる。
「頑張って避けてみな・・・アイスドラゴン!!」
「マジかよ……」
かなりのスピードで襲いかかって来る竜を風の力で秀の体をスピードアップさせ噛みつきはかわしたが、体をひねって繰り出してくる攻撃をかわすことができず吹っ飛ばされてしまった。
「くっ、あの長い体、やっかいすぎるな」
〈だね、あの竜さえ避けれたらいいんだけど……どうする、避ける?それとも切る?〉
「んじゃ、切るの方で!」
〈そうこなくっちゃ♪〉
再び向かって来る竜に向かって無数風刃を飛ばすと、風刃が当たった箇所は見事に切れていた。
「よしこれなら行ける!!」
竜に向かって走った秀は噛みつこうとすると竜の頭を切り裂き、続いては竜の体を切り裂いていく。
「何!!」
「うおりゃぁぁぁ!!」
自分自身に気合いを入れ、最後の尾を切った。
「お前…アイスドラゴンを切ったというのか」
「まあな、実は俺やればできる子だしな」
「ふっ、そうか…突然だがここで問題だ」
「問題?」
「お前が切り裂いたアイスドラゴンは、はたして切り裂いてよかったのでしょうか?」
意味が分からないタイミング、質問の内容に首を傾げる秀
〈秀、危ない後ろ!!〉
シルフィーの声のおかげで反応した秀は何とかギリギリ風を纏った。
その瞬間に後ろで何かが弾かれる感じがした秀が後ろを見ると、後ろにはアイスニードルのひとかけらが落ちていた。
「何で…ここにこれが…」
〈秀…何なのあれ…〉
シルフィーが驚愕していたのは先程までは一つも無かった無数のアイスニードル
「あ…あぁ…」
「驚いたか、でもそのアイスニードルはお前が作ったようなもんだぜ」
「どういうことだ?」
「あれー、お前が倒したアイスドラゴンはどこに行ったのかな?」
連の言葉に、はっとした秀は後ろを向くが、もうそこには切り裂いたアイスドラゴンの姿は無かった。
「まさかこのアイスニードルって…」
「お前が切り裂いたアイスドラゴンだ」
「・・・・・・」
もはや声すら出ないほどの圧倒的な数、今の秀には防ぎきれないと感じさせられるほど圧倒的な手数だった。
「もう一度言わせてもらおうか、この攻撃かわせるかな?」
手をぐっと握ると、宙に浮いていたアイスニードルが全て秀に向かって飛んで来た。
〈秀!!〉
(くっ、しかたねぇ!!)
アイスニードルが秀のいた場所に全て突き刺さり、土煙がまっていた。
土煙が完全に消えた頃には傷だらけになった秀は立っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「ほぉ、致命傷になるところは防いでそれ以外の箇所は捨てたか」
さきほどの攻撃を喰らったせいか、秀は立っているのがやっとの状態だった為、自動的に物質憑依が解かれた。
〈しっかりして秀!!〉
「・・・・・・・・」
(くそっ、視界が霞んできたし、体も思うように動かない・・・・すまない連、どうやら約束をはたせそうにない)
立った状態からぐったりするように倒れた秀は自分の意識が遠のいて行くのが分かったが、完全に意識が遠のくのは一人の少女が防いだ。
「浅村君、浅村君!!」
「ん、に、西脇!?」
「大丈夫ですか、立てますか?」
秀の腕を自身の肩に回して支えようとしていた。
しかし秀はそれを振り払った。
「浅村君?」
「何で来たんだ!!」
「す、すいません二人が心配になってつい」
「お、獲物がまた増えたようだな」
「あれが・・・連さんなんですか!?」
変わり果てた連の姿に西脇はただただ驚いていた。
「お前もそこの男と同じようになれ、アイスドラゴン!!」
「ひっ!!」
「くっ、退け西脇!!」
体に残っている力を振り絞り、風で西脇を吹っ飛ばした。
「あまい、アイスドラゴンの追尾性をなめるな!!」
秀に目もくれずにターゲットの西脇を同じ追うアイスドラゴン
「きゃあぁぁぁ!!」
「止めろ連、西脇を傷つけるつもりかぁ!!」
「・・・・あれっ?」
恐怖のあまり目を閉じていた西脇だが、恐る恐る目を開けると、アイスドラゴンの姿は、何故かもうそこには無かった。
「何故だ、何故勝手にアイスドラゴンが砕けたんだ!?」
「簡単なことだよ、いくら今のお前が連じゃなくても、体は連だ、頭も連だ、思い出も連なんだよ!!」
「そんなバカな、俺は完全にコイツの意識を乗っ取ったんだぞ」
「けど実際、アイスドラゴンは砕け散ったぜ、つまりまだ連の意識は生きてるってことだ」
「たとえそうだとしてもお前にはもはやどうすることもできんだろ」
状況―血だらけの秀、無傷の西脇のみ
「状況だけ見ればそら悲惨なもんだけど、俺はまだギブアップしちゃいないぜ」
息を整えた秀は、再び物質憑依して天つ風を構えなおす。
「あ、浅村君、立ち上がっちゃ駄目ですよ」
「大丈夫さ、西脇のおかげでだいぶ休めたからさ」
「休めたって言ってもそんな体で言われても説得力の欠片もないですよ!!」
「大丈夫、大丈夫、俺はやればできる子だからな」
そう言って秀は、西脇の制止を振りほどいた。
「悪いな随分待たせたようで」
「ふん、どうせ死に行く運命なのだからな、時間なんぞくれてやる」
「どうかな?こうなった時の俺はしぶといぜ」
「さっきまで倒れかけだった奴がよく言うぜ、行くぞ!!」
連はアイスニードルもアイスドラゴンも使わず接近戦に持ち込む
攻撃速読、スピードも申し分なく今の秀では防ぐことで精一杯だった。
(くそっ、一瞬でも動きを止められれば)
〈それなら旋風束縛陣を使えばいいじゃない〉
使えばいいとは簡単に言うものの、旋風束縛陣はそう簡単にほいほいと出せるものではない。
四方八方から風により相手の動きを封じる技であるため、使うにはそれ相応の魔力が必要だった。
しかし今の秀はラニアの時の浄化の風や連と戦ったことで消費した魔力はかなりの量であり、旋風束縛陣をうつどころか、物質憑依を保てるかどうかも分からないぐらいだった。
「どうした、さっきから防いでばかりじゃないか、魔力の使いすぎか?」
嘲笑うように言う連、正直怒る体力すら残っていない。
防ぎきれない攻撃
どんどん傷が増える体
増える度に走る痛覚
痛覚と引き換えに失っていく意識
(あ〜あ、少しは骨があると思ったんだがな…そろそろ終わらせてやるか)
殺傷能力充分であるかぎ爪を立て、秀の心臓めがけて突き出したかぎ爪は秀の腕や天つ風に防がれることはなかった。
防がれることなく心臓に刺さらず脇腹に刺さっていた。
「なっ!!」
「やっと捕まえたぜ!!」
秀が攻撃を防ぎきれなくなってきたのは必然だったとしても、秀が一方的にもやられていたのは、連に速くトドメの一撃を出させるためだった。
接近戦なら連がトドメをさすなら刺してくるにちがいないと踏んだ秀の一か八かの賭けだった。
そしてその賭けに秀はまさしく今勝った。
「くっ、手が抜けない!?」
「へへ、だてに毎日鍛えてないからな」
「だが甘いぞまだ片手があるんだぞ」
振り上げる左手だが、連はすでに二つの誤算があることに気づかなかった。
「バカか、俺は両手あるんだぞ」
右手でしっかりと連の左手を掴んだ。
「この距離は俺の距離だ!!」
(腕がピクリとも動かねぇ!?)
秀を貫いてる右手は鍛え上げた腹筋(ラウルのスパルタ式によって)で締め上げるようにして動きを止め、左手はがっちりと離さないように右手で握りしめていた。
「俺はお前の氷を受けたんだから、お前もしっかり俺の風を受けてもらうぜ!!」
「何でお前みたいな奴にこの俺が…」
「空破撃!!」
今ある全ての魔力を風に変え、その風を天つ風を振る力にプラスさせた。
そして全てのプラスの力を天つ風の柄に伝わるようにして連の鳩尾にクリーンヒットさせた。
「ぐあっ…」
ずり落ちるように倒れた連の腕を抜いた秀は、気絶させたことで元の姿に戻った連を見た。
「約束は果たしたぜ連」
全てが終わった安堵感、全ての魔力を使いきったことによる疲労感、そして今までのダメージによる脱力感、これら全てが自分を襲った。
それにより全身の力が抜けるように崩れ落ち、視界が狭まり、ついには意識が遠くなっていった……
ストックがどんどんたまってきたので明日辺りから、1日ごとに投稿していきたいと思います。