四十三話 過去との決着
読み返してみましたが、
やはりクオリティが低いなぁf(^_^;
「・・ア、起・て・・・ニア・・・起きてラニア」
「・・・お母さん?」
「また会えて嬉しいわラニア」
「私も嬉しいよ」
ラニアが見てる姿は十五年前に命を落とした母親だった。
「私に会いに来たってことは今日も過去のことで来たのかしら」
母親の言葉に頷くラニア
「私の小さい頃の過去を思い出したいんです」
「・・・・・・・・・」
実はラニアには昔の記憶が思い出せないでいた。
ラニアがここに来た理由は自分の中に欠けている過去を取り戻す為だった。
ラウルには余計な心配を掛けたくないラニアは自分には記憶があると言っていた。
「止めておきなさい、あんな過去はないほうがマシよ」
「でも、過去があってこその人間だと思うの」
「私はずっと見ていたわ、私が死んでからなかなかあなたは外に出ようとしなかった、さらには今日まで心の底から笑ったことがない」
「・・・・・・」
「そんな状態で過去を思い出すなんて無茶よ」
「たとえそれでも!!」
サラの言葉を遮るようにラニアが叫んだ、いつもの冷静なラニアとは違って
「たとえ私にとって、どんなに辛い過去でも背を向けちゃいけない・・・そう言われたんだ」
《過去に背を向けちゃいけない》
それは秀に言われたこと言葉だった。
時間は昨夜に遡る
―テラス―
体は疲れているが、なぜかなかなか寝つけない秀はベンチに腰掛け夜空を見ていた。
「あっ、秀さん」
「おっ、ラニア」
テラスに来たラニアは、秀に何も聞くことなく秀の横に腰掛けた。
「どうしたんですか、寝つけないんですか?」
「ラニアこそ寝つけないんじゃないのか」
「私は・・・ちょっと考え事を」
どことなく歯切れの悪い言い方のラニアだったが、秀はあまり深く聞くことなかった。
「悩むなら好きなだけ悩めばいいさ、悩んで悩んで決めたらいいと思う」
「だから考え事で、悩んでないですよ」
「そうかね、俺はとっては一緒に思えるけどね」
「あはは、そうなんですね・・・ところで秀さん質問していいですか?」
「藪から棒だな・・・」
「秀さん、もしも自分に辛い過去があったとして、それを背負わなくてもいいって言われたらどうしますか?」
「・・・・・・」
真剣な顔で聞いてきたラニアに秀も真剣に答えた。
「過去は背負うものじゃないと思う」
「・・・じゃあ何ですか」
慎重に尋ねるラニアにゆっくり答える秀
「過去は向き合うものなんだと思う」
「向き合うもの・・・・・・」
「過去には楽しかったことや辛かったことの二つで過去だと思うんだ」
「それはつまり」
「つまり、たとえどんなに辛い過去があったとしても、その先にはきっと楽しいことがあると思うんだ」
「楽しいこと・・・・・・」
「辛い過去を背負わないことはこれからの楽しいことがあったとしても、その人はこれから心の底から笑えないと思う」
「っ!!」
秀の言ったことにラニアは驚いていた。
今の自分に当てはまることがあるからだった。
「だから、たとえどんな辛い過去だろうとしても俺だったら立ち向かうぜ・・・その先にある何かを信じてな」
「ありがとうございます秀さん、何だか元気がでてきました」
「でもその元気は明日にとっておきなよ」
二人はそこで話を打ちきり、それぞれ戻る所に戻っていった。
(背負うものじゃないか・・・)
「でもラニア、あなたは何でここに来たら過去を取り戻せると思うの」
「それは私の過去を知っているのはお母さんだから」
「それなら私じゃなくて、お父さんもいっしょよ」
「でもお父さんは教えてくれないの」
「それほど今のあなたにとって過去を思い出すにはしんどいってことよ、それでも過去を思い出したい?」
その問いにラニアは力強くはいっと答えた。
「ラニア目を閉じて、じっとしててね」
サラの言葉に従い、目を閉じて心を落ち着かせる。
それを確認したサラは、精霊が憑依するように、ラニアと重なった。
「・・・・・・さてと行くわよ」
―連Side―
「ラニアが過去を思い出せるといいよな」
「・・・・・・・・」
「茜ちゃん?」
名前を呼んでも、反応しないため、連は西脇の肩を掴み再び名前を呼んだ。
「・・・ふぇ、ああ連さんどうかしましたか?」
「どうしたもこうしたもないよ茜ちゃん、さっきからずっとその調子じゃないか」
連の言う通り先ほどから西脇は話かけられても、反応がない状態が続いていた。
「すいません、ちょっと考え事してたんで」
「考え事・・・・・・秀がラニアを抱きしめたこととか」
「べ、べべべ別に、き、気にしてなんかないよ」
「そうか、ならいいんだけどさ」
「それより連さん、あれってもしかして洞窟ですかね」
西脇が指を指した方向を見ると、確かに洞窟らしきような入口があった。
「どうしますか連さん・・・ってあれ連さん?」
洞窟に入るかどうかを連に聞くが、連はすでに洞窟の入口にいた。
「おーい茜ちゃん早く行こうぜ」
「あ、はい今行きます」
―秀Side―
「おいラニア、大丈夫か!」
秀がラニアを必死に呼んでいる理由、それはラニアがいきなり倒れたからだ。
「ラニア!ラニア!」
「・・・・うぅ」
「よかったー心配したよ」
「・・・・・・」
上体を起こしたラニアだがその視線は秀をまっすぐ見ていた。
「ふーん、この子がね」
「・・・ラニア?」
秀がそう言い終わった時には秀は後ろの木に激突していた。
状況が全く理解できず、ただわかるのは腹部走る激痛だった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「あら、なかなか頑丈じゃない」
目の前にはあきらかに口調が違うラニア
「てめえ、ラニアじゃないな誰だ!」
「なかなか鋭い子ね、私の名前はサラよ」
「サラって確か・・・ラニアの母親じゃないか!」
「いろいろ知ってるのね」
「・・・一体何するつもりなんだよ」
「そんなの決まってるわ・・・・・・あなたには死んでもらうわ」
そう言うとサラは秀に向かって走って来て、全体重をのせた右ストレート
それを両腕でガードするがその時の衝撃はすさまじくその場で怯んでしまう。
「ぐっ…」
サラは怯んだ隙を見逃さず、一回転してハイキックを繰り出す。
「ぐあ!!」
パンチの倍以上の威力を持つキック、それをガードしていたがガードごと吹き飛ばされる。
「はぁ、はぁ、魔力で強化してるのに・・・なんて威力なんだ」
<秀、ラニアさんをよく見てみて>
ラニアに注意され、ラニアの注意深く見ると、若干だがラニアが黒い霧のようなものが出ているのに気がついた。
「シルフィー、もしかしてあれって・・・・・・」
<そうだよあれは多分、負だと思う>
「何はともあれ気をつけない・・・なっ!」
先ほどまであった距離を一気に詰め、またもや右ストレートを繰り出すサラ
(くっ、くそ)
必死に攻撃をかわす秀
<何してるの秀、反撃しなくちゃ>
「んなこと言ったって、反撃するってことはラニアに攻撃するってことだぞ」
「ふふふ、なかなか頭が切れる子ね」
<なら気絶させるしかないね>
「くそっ!」
次々と繰り出してくる攻撃を必死にかわしチャンスをうかがう
(早く出せ、右ストレート)
右ストレート一本だけを狙いを絞っていると、サラは右ストレートを撃ってくる。
(来た!)
左手で払い、その間に懐に入り込みボディーブローを撃ち込もうとしたが、
「秀さん・・・」
「くっ!」
直撃すれすれのところで秀の拳が止まる。
「あまちゃんね♪」
「しまっ・・・」
さっきの顔がすべて罠だとわかった時には遅かった。
サラの拳は秀の完璧に撃ち抜いていた。
「あ、ああ」
後ろによろめいて倒れ込むほどの衝撃だった。
「案外呆気ないわね」
秀の目の前まで来たサラは正義のヒーローのように言った。
「何か言い残すことはない」
「・・・一つ聞きたいことがある」
「何かしら?」
「俺を攻撃した理由を教えてくれ」
「ああ、理由はただひとつ・・・あなたがラニアに過去と向き合えなんか言うからよ」
「何だと・・・」
「あの子が昔のことを憶えてなくて思い出したいのはわかるけど、あの子の欠けている記憶のほとんどが辛い過去よ、それを今一気に思い出したら、あの子はきっと外にすら出られなくなるわ」
「・・・・・・」
「私はあの子にとっての過去を絶対思い出させやしない・・・・・・そろそろお別れの時間ね」
足をゆっくり上げて狙いを顔に定めた。
「つまらないことさえ言わなければね・・・さようなら」
サラはそう言って上げた足をおもいっきり踏みつけるように足をふりおろした。
「・・・なっ!」
サラが驚いている理由、それは秀がふりおろした足を軽く手を添える感じで止めていたからだった。
「つまらないことだと・・・・・・ふざけんな!!」
秀はそう言うと掴んでいた押し上げると、逆の手と魔力を使い体勢を立て直した。
「自分の子が辛い過去を取り戻したいと決意したんだぞ!」
「だから?」
「ラニアはずっと悩んでたんだぞ、悩んで悩んでやっと決意したんだ、なぜそれを拒むんだ」
「それはさっき言った通りよ、あの子には過去は重すぎる」
「そんなことやってみなきゃわかんないだろ」
「もしやって失敗したらどうするのあなたにその責任がとれるの?」
表情一つ変えずにサラはしゃべる、サラが優先することはラニアの安全ただ一つだった。
「・・・とるよ、もしラニアがそんなことになったとしたら、俺がすべて責任を取るよ」
「そんな戯言を信じるとでも?」
「信じるも信じないのもあんたの自由だよ、でもな俺はラニアが過去を取り戻すことに協力するって決めたんだ、それを邪魔するやつがいるならたとえ母親でも俺は許さない」
「・・・・・・」
「・・・・次は本気でいくわよ」
強く地を蹴ったサラは、秀との距離を一気に詰め、渾身の一撃を撃ってくるが、秀はそれを片手で受け止める。
サラはすぐに対角線の足で蹴ろうとするがそれも秀が逆の手で止められ、秀はそのまま押し倒した。
「くっ、退きなさいよ」
秀に下で暴れるサラを見ていた秀は一か八かにかけてサラを抱きしめながら叫んだのだった。
「ラニア戻ってこい!!」
「なっ、体が動かない・・・まさかリンクが解けて・・・・・・きゃああああ」
―???―
「くっ、まさか憑きが解けるなんて思いもしなかったわ・・・でも憑きが解けるってことはラニアに何らかのことが起こったということになる、けどここには私とラニアしかいないはず・・・」
「何長い独り言つぶやいてんだよ」
「そ、そんな何故あなたがここにいるのよ!ここには私とラニアしか入れないところなのよ」
「いるんだから仕方ねぇだろ」
「う、ううん・・・あれ何で秀さんがここに?」
秀は目を覚ましたラニアに言った。
「言ったろ、君は俺が絶対に呼び戻すって」
「(照)////あ、そうだお母さん何であんなひどいことしたんですか」
「あれはラニア、あなたを思ってしたことなのよ」
「私はただ過去を取り戻したいだけなんだよ・・・」
ラニアがそこまで言ったところで秀はラニアの前まで手を上げ静止を呼び掛ける。
「俺、今回の全貌が見えたかもしれねぇ」
「えっ、全貌ですか?」
「ああ、言っていいかラニア」
何故そこで自分に許可を求めたのかが分からなかったが、ラニアは首を縦に降った。
そしてそれを確認した秀は腕を上げ人差し指でサラを指し、ゆっくりと口を開いた。
「あんたサラさんなんかじゃない・・・あんた正体は・・・・・ラニア自身だよな」
―連Side―
洞窟の中を歩くこと10分、二人は洞窟の行き止まり地点まで着いた。
「行き止まりみたいだな」
「みたいですね」
行き着いた場所が結局行き止まりだったため、連は帰ろうとした時、西脇は行き止まり地点のあるところに気がついた。
「連さん、向こう側から音がしませんか?」
西脇に言われ耳をすます連
「確かに、微かにだけど音がするな・・・・・機械音かな」
行き止まりの向こう側から微かに聞こえる機械音
「しっ、誰か来る!!」
西脇の手を取り、少しへこんでいる場所に身を潜めた。
行き止まりのところに現れたのはガリア帝国の兵士だった。
「なっ、何であいつらがここにいるんだ」
「さあ、何ででしょうか」
行き止まりに着いた兵士は岩の壁の一部をスライドさせ0〜9がある板が出てきて、兵士はそれを入力していった。
兵士が番号を入力し終わると、行き止まりだった岩壁が二つに割れて、道が出てきていた。
「・・・・・・すげぇ」
兵士が中に入り終わると岩の扉は閉まり、元の岩の壁になった。
「本当に凄かったですね・・・でもこの中には何があるんでしょうか」
「気になるなら調べてみようぜ!」
そう言うと連は番号の入力版を出した。
「・・・・・・」
「どうしました連さん?」
「番号が分からない」
兵士が番号を入力するところを見たのは見たが距離をと番号の数があったため、入力するのは困難に思えたのだったが・・・
「えーと175331539842っと」
そう番号を入力すると兵士の時と同じように、岩壁が二つに割れて道が出てきていた。
「凄えぇぇよ茜ちゃんあんなデタラメな番号よく憶えてるな」
「記憶は得意なほうなので」
「よっしゃ、じゃあ入りますか」
「ですね」
入ると中は外国の映画で見るような研究基地のような感じだった。
「ふあー広いなー」
「凄いですねー本当に広いですね」
二人が秘密基地のような場所の広大さに驚いていた時だった。
「おい、そこの二人何者だ!!」
「げっ、しまった!」
「何だお前達、ガリアの者じゃないな・・・・・拘束させてもらう」
兵士がそう言って、二人に近づいて来て身の危険を感じた連は瞬時にリストをはめて相手の懐に入り込んだ。
「悪い!」
その位置から全身の伸びを使った拳を相手の顎に撃ち込み相手を見事にノックアウトした。
「危ない危ない」
なんとかピンチを乗り越えたように思えたが、相手が倒れた際に響いた音がかなり大きく、まわり聞こえてしまった。
「おい!あそこに誰がいるぞ、捕らえろ」
「ヤバい、逃げるぞ茜ちゃん」
何処に行けば逃げればいいのか分からない状況だが二人に必死に走り逃げた。
―指令室―
「申し訳ありません隊長、ネズミが二匹ほど侵入してしまいました」
「・・・・お前ら侵入者は追うな」
「えっ、ならどうしたらいいのでしょうか」
「君は鬼ごっこは得意かな」
「えっ、走るのは得意ですけど」
兵士が呼んだ隊長の質問の意図が読めなかった兵士だがいちよ真剣に答えてみた。
「そうか、実は俺も走るのは得意だったんだが、この前鬼ごっこに負けてしまったんだ、だからリベンジとしてもう一度俺にやらせていただくがいいかな?」
「はっ、ではお願いしますゼファ隊長」
ゼファは椅子から立ち上がり指令室から出ていった。
―連Side―
逃げてから10分ほど経った頃にはゼファの指示が行き渡ったのか、追っ手はいなくなっていた。
「はぁ、はぁ、よかった追っ手は来なくなったな」
「そ、そうですね、にしてもここはどこなんでしょうか?」
「うーん、分からな・・・」
連が分からないと言い切ろうとしたが、それはできなかった、言い切る前にどこからか聞こえて轟音によって遮られたからだった。
「「っ!!」
「何なんだ今の音は」
「何だか不気味になってきました私」
「大丈夫だ、茜ちゃんは俺が守るから安心して」
「連さん…」
自分のなかではかなりカッコイイ感じに決めたところで、なぜか後ろから拍手が聞こえてきた。
「俺が守るからってなかなかいいんじゃないの」
「誰だお前?」
「ん?前追いかけ合いした秀って奴とは違うみたいだな・・・まあいい始めようか」
(無視かよ…)
「始めるって何をですか?」
「ん?死の鬼ごっこさ」
(そこは答えんのかよ!)
「・・・ん?秀って言わなかったあんた」
「知り合いかね、あの子とも鬼ごっこをしたんだが逃げられてしまったからな、さあて始めるかタトゥナス!」
手にはめている手袋に物質憑依させてなにやら中世ヨーロッパの兵士の手に装着する防具に変身した。
「「精霊契約!」」
「逃げるぞ茜ちゃん!」
「カウントダウンだ、10、9、8・・・・・」
「はぁ、はぁ、はぁ、こんだけ逃げれば大丈夫だろ」
「そ、そうですね、人生で一番早く走った気がします」
「安心するにはまだ早いぜ」
手から緑色の球体を出して連達の方向に投げつけた。
地面で何回かバウンドしてから緑色の球体は爆発した。
「のわっ!」
「今のはほんの威嚇だ、さてもう一度カウントダウンを始めるから逃げてみな」
「くそっ!なめやがって」
手にリストをはめようとした連たが西脇に腕を捕まれる。
「ダメだよ、精霊契約してる相手に勝てるわけないよ」
「だけど、あれだけなめらられたら」
「止めておいたほうがいい、秀という子も戦おうとせず逃げた」
(くそっ!)
一言一言が連の感情を逆撫でするが、歯をくいしばり西脇とゼファから離れていった。
「今度は30秒にしてやるか」
必死に走り続ける二人だが先ほどからの疲れがたまっていたせいか二人速度はかなり落ちていた。
さらに運動神経はいい連はいいが、あまり運動が得意ではない西脇は体力が限界に近づいていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「茜ちゃん大丈夫か」
「は、はい大丈夫です」
「大丈夫じゃないだろ、アイツもまだ来そうにないから走らず歩こう」
「はい、ありがとうございま…」
〈グオォォォォ!!〉
「「っ!!」」
「おいおい、さっき聞いた時よりデカイ音になってんじゃねえか」
「な、何なんですかあの音は」
「どうやらあの部屋から聞こえるみたいだな」
「えーと、立ち入り禁止って書いてますよ」
(どうする、道は一本だ、どうすればいい・・・)
「よし入るぞ茜ちゃん!」
「はい、行きましょう」
緊張するなか扉に鍵が掛かっているため、ぶち破り入ると、そこは一本の通路だった。
その通路を歩く、一歩、一歩と進んでいく、一歩進めば体力が奪われるような感覚に襲われる。
そのような圧力が扉の向こうから伝わってくる。
「ん?ここは鍵が掛かってないのか」
「・・・行こう」
扉の横にある【開】【閉】のボタンがあり、連は【開】のボタンを押した。
何重にも重ねて閉じられた扉が開き、連と西脇は歩いた……轟音の下へ
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
その時俺達は声が出なかった。
目の前には見たことがない巨大な生物、大型トラックのサイズで、猛々しい四足、この世の物とは思えない牙、まるで王者の風格の白銀の毛
そのような生物が何重にも張り巡らせた鉄格子の中にいる。
〈誰だおまえたちは?〉
「なっ、喋った!?」
〈我を誰だと思ってる!!〉
「っ!!」
鼓膜が破れそうなほどの声
「俺達ここから脱出したいと思ってるんだけど、なんか出口的な所知らないか」
〈その口振りだとお前達はガリアの者じゃないみたいだな〉
「ご名答、俺達はそのガリアの爆弾野郎から逃げてるんだ、だから出口を知ってるなら教えてくれないか」
〈残念だが出口は一つしかない、お前達がガリアの者じゃないなら多分お前達入ってきた道だろうな〉
「・・・万事休すか」
「おいおい、何休んでんだ秀って奴はもう少し逃げていたぞ」
「ちっ、爆弾野郎・・・」
〈ゼファ・・・か〉
「おお、氷獣王久しぶりだな」
「氷獣王?」
「こいつの呼び名さ、呼び名の通り氷を操る獣の王だ」
「そんな奴が何で捕まってるんだよ」
「捕まえるの苦労したもんだぜ、こっちの兵士がどれだけ犠牲になったことか」
〈きさまらが我の土地に入らなかったら、兵士達も犠牲にはならなかったろうが〉
「何言ってんだ、あんたみたいな奴を捕まえるには犠牲は仕方ないさ」
〈きさま、なら兵士達はただの駒だと言うのか〉
「そうは言わない・・・たがガリアの繁栄にはあんたが必要なんだそして繁栄には犠牲が付き物だ」
〈ぐっ・・・おおぉぉぉ〉
雄叫びを上げた氷獣王は何重にも張り巡らせた鉄格子に体当たりをした。
激しい衝撃と震度3ほどの揺れが襲うが鉄格子はびくともしなかった。
「おいおい、よしたほうがいいぜ」
氷獣王の体当たりに反応したのか鉄格子内に電流が流れ、氷獣王にその電流が流れる。
〈ぐあぁぁぁ!!〉
「前も説明したろ、あんたがあんたが鉄格子に衝撃を与えるとその衝撃分の電流が流れる仕掛けになってるって」
かなり威力の電流にやられたのか、氷獣王はその場で力なく倒れた。
「・・・やりすぎだろ」
「やりすぎか・・・しかし俺達の兵士も氷獣王に大分やられたんだぜ」
「その死んだ兵士を繁栄のための犠牲で片付けたくせによく言うぜ」
「ふ、まあいい・・・そろそろ鬼ごっこも終わりにしようか」
手のひらに緑、青、赤色の爆弾を一つづつ出し、緑と赤を連に投げ、同時に青色の爆弾を上空投げた。
「せいぜい避けろよ!」
連に向かって飛んでくる緑爆弾は距離があったため連は横に移動して避けて西脇に向かって
「茜ちゃん、安全な所なんてないと思うけど、できるだけ安全な所にいてくれ」
「は、はい」
「人の心配してるつもりか、爆弾はあれだけじゃないんだぜ」
もうすでに新しい爆弾を用意していてどんどん連に対して投げてくる。
「くそー、多いんだっつーの」
飛んでくる爆弾を必死にかわす連
「ふーん、なかなかうまいことかわすじゃんか」
「余裕こいてると痛い目見るぜ」
連は避けながらも爆弾の位置を一つ一つ確かめていた。
そしてゼファが爆弾を投げるモーションの一瞬の隙をついてゼファとの距離を一気に詰めた。
「へへっ♪」
「しまっ・・・なーんてな♪」
ゼファの顔面めがけて繰り出したが、ゼファは片手で簡単に受け止めた。
「精霊契約してない奴相手に負けるとでも思ったか」
「くっ・・・」
捕まれた腕は簡単に離してはくれず、逆にゼファの拳を浴びてしまう。
「かはっ・・・」
予想外の威力に顔を歪めながら肩膝をついた。
(なんて威力だ・・・)
「おいおい、まだ爆弾は残ってるぜ」
そう言って上を指指すゼファ
上空投げていた青色の爆弾が連に向かって落ちてくる。
「何!?」
次の瞬間に響き渡るのは轟音だった。
「連さぁぁぁん!!」
「まずは一人か・・っ!!」
ゼファが言葉を詰まらせたのは、煙の中から連が飛び出してきたからだ。
「まだ俺はくたばってないぜ!」
そして出てきた勢いそのままゼファの顔面を殴り飛ばした。
「よし!体勢は崩した・・・もらった!」
「甘いぜ!」
指をパチンと鳴らすと連とゼファ直線上で爆発が起こり、連は鉄格子の方向に吹っ飛ばされてしまった。
「くぅ・・・何でいきなり地面が爆発したんだ?」
「冥土の土産に教えてやるよ、緑爆弾は普通に時限爆弾で、青色が滞空爆弾で俺の合図で空から降ってくる爆弾だ、そして赤色の爆弾が地雷型の爆弾で俺の合図と俺以外の誰かが半径一メートル内に近づくと爆発するん仕掛けになっている」
「くっ、」
立ち上がりたい連だが、体が言うことを聞かず立ち上がることができなかった。
〈だ、大丈夫か少年?〉
「大丈夫なわけないだろ・・・でもまだ戦える」
〈なぜお前は勝ち目がないような相手にわざわざ戦いを挑むんだ、攻撃しなかったら地雷型爆弾を踏まずにすんでもしかしたら逃げる隙ができたかもしれん〉
「それは逃げてるばっかじゃしょうに合わないし、爆弾野郎がムカつくこともせうなんだけど、一番の理由は約束したからな」
〈ふん、なかなか熱いんだな、おいまた爆弾がくるぞ!〉
正面には多くの緑爆弾が飛んできていた。
「ちっ」
またもや横に飛んでかわす連だが、その行動は完璧に詠まれていた。
「っ!!」
下には赤爆弾が地雷型に変わり地面に吸い込まれていて、上には青爆弾が連を囲むように浮いていた。
「チェックメイトだな」
「くそ…」
「連さん!!」
〈少年!!〉
「うるさいぞ、そこの女黙ってろ!」
緑爆弾を取り出したゼファは西脇の方を向いて、爆弾を投げこもうとした。
「っ!!」
投げる寸前でモーションを止めて爆弾を急ぐように誰もいない方向に投げた。
「まあいい、お前はそこでじっとしてろ」
(何で今投げるのを止めたんだ?)
ゼファの意図が分からない行動に疑問に思う連はふと西脇のほうを見た。
怪我はなさそだが、先ほどのゼファが怖かったのか怯えていて、その西脇を氷獣王が慰めていた。
(・・・・・・っ!!まさか!!)
「さて、今度こそ終わりにするか」
(うまくいけば逆転できるけど、この爆弾包囲網がやっかいだ・・・・ああもうちまちま考えるのめんどくせぇ)
「終わりだぁぁ!!」
ゼファ青、赤の爆弾を爆発させた。
「うおぉぉぉ!!」
〈あの爆発の中を抜け出したのか!?〉
全身が傷だらけで至るところから血を流しながらも連はゼファに向かって走っていた。
「ふ、お前ならやると思ったぜ・・・だがあまかったな」
ゼファの手にはすでに緑爆弾を持っていた。
「今度こそ終わりだぁ!」
自分に向かって投げられた緑爆弾を確認した連は今より早いスピードを出して緑の爆弾を掴みとった。
「な、何!」
爆弾を掴みとった連はすぐさま後ろを向いて叫びながら緑爆弾を投げた。
「氷獣王!!茜ちゃん!!下がれぇぇぇぇ!!!!」
「はっ、しまったぁ!!」
連の投げた爆発は見事鉄格子破壊した。
「はぁ、はぁ、はぁ、後は任せたぜ」
巻き起こる煙の中から出てきたのは氷獣王だった。
〈任せておけ〉
「ちっ、ここで氷獣王かよ」
〈覚悟しろ、貴様の全てを凍らせてやる〉
「面白い、やってやる」
連の時より遥かに数多くの爆弾を取り出したゼファは地面、上空、正面へと投げた。
「これだけの量をかわせるかな?」
〈ふん、かわすだけが全てをじゃないんだ〉
息を深く吸い込んだ氷獣王は一気に息を吐き出して、ゼファが投げた爆発を全てを凍らせた。
〈もはや決着はついた、無駄な抵抗はせずに精霊契約を解除するんだ〉
「くくく、随分あまく見られたもんだな」
〈抵抗するつもりか?〉
「あたり前だ、行くぜ」
またもやゼファは指で音を鳴らした
〈どうした?なんも変化も起きないがな〉
何も変化しないことをいいことに氷獣王は一歩、一歩とゼファに近づいていた時に後ろから声が聞こえてきた。
「動くな氷獣王、前方には爆弾があるぞ」
「ちっ、目が覚めたか」
〈少年、悪いが爆弾なんかまったく見当たらないがな〉
自分の前には爆弾など一つも見当たらない氷獣王だったが、次の一歩を踏み出した時だった。
《ドカン!!》
自分の頭で爆発がして氷獣王はその場で倒れてしまった。
〈な、何が起こったんだ〉
「くくく、ははははははははは、どうだ氷獣王見えない爆弾は怖いだろ、実は俺にはもうひとつ爆弾があるんだ、それがこの白い爆弾だ、まあお前には見えていないと思うがな」
〈なぜだ、なぜ我には見えないんだ〉
「実はこの白い爆弾は対非人間ようでな、人間以外には見えないんだよ」
〈ぐっ・・・〉
先ほどのダメージがでかかったのか氷獣王は立ち上がることすらままならなかった。
「さてと鉄格子も壊れちまったことだし、殺るか」
「させるかぁ!!」
横から来た連がゼファを殴ろうとしたが、ゼファは簡単にかわして連を氷獣王のところに投げ飛ばした。
「氷獣王大丈夫じゃなさそうだな」
〈それは自分も一緒であろう〉
「はあぁ、結局あの爆弾野郎を倒すことも、約束を守ることもできそうにないな」
〈いやたった一つだけあるぞ奴を倒すことも約束守ることもできる方法が〉
「な、なんでそんな大事なことを言わないんだよ」
〈この方法は少年が死んでしまうからだ〉
「俺が・・・死ぬ?」
〈それにこの方法を使えば多くの人が犠牲になるだろう、だからやりたくはないんだ、しかしこんな状況だ、少年がやりたいと言うならやろう〉
「ちょ、ちょっと待てよちゃんと事情を話してくれなきゃ分かんないだろ」
〈時間がないんだ、今ゼファ特大の爆発を起こすために三色の爆弾で構成しようとしているが、もうじき終わり自分達に最大に爆発をおみまいするつもりだ」
「・・・わかった、俺やるよ」
〈了解した、少年最後に注意点をいうぞ、自分の意識のあるうちにあの子を逃がせ、しかし自分も逃げようとするなよ、もし逃げたならゼファを倒せず、あの子は死ぬことになるからな〉
「・・・ああ、わかった」
〈少年・・・すまない〉
ゼファの特大の爆発がそろそろ完成しそうだった時に氷獣王は自分の牙で連を後ろから刺した。
「ぐはぁぁぁ」
「な、何をしてるんだ?」
「おおぉぉぉぉぉ!!」
「何だこの凄まじい魔力は」
「はぁ、はぁ、はぁ」
氷獣王の牙から抜けた連はとてつもないスピードで西脇の所に行き、西脇の背後にある壁をパンチでぶち壊した。
「茜ちゃん、おそらくこの道をまっすぐ行けば外に出られるはずだ、だから早くここから出るんだ」
「えっ?でも連さんはどうするんですか」
「俺はまだやることがあるから一緒には行けそうにないんだ」
「そんなこと言わずに一緒に行きましょう」
「聞き分けのないこと言わないでくれ、そうだここを出たら秀の所に行ってこう伝えてくれ」
“俺を止めてくれ”
そう言って連は西脇を壁より外に軽く投げ出して出入口とその道を氷で塞いだ。
そしてその瞬間に連の意識は遠退いていった。
「その魔力一体何をやったって言うんだ?」
「・・・・・・」
「ふ、だんまりかよ、じゃあ死にな!!」
氷獣王の時と同様の数の爆弾を出したゼファはすぐさまその爆弾を投げるが、その全ての爆弾を凍りついてしまった。
「な、何だと!?」
そしてゼファに一瞬で近づいた連はゼファを壁まで殴り飛ばした。
「くそっ、なかなか早ぇじゃないか」
「アイスニードル」
連から放たれる無数の氷の針がゼファを襲う。
「しゃらくせー」
氷の針にゼファの手が触れると、氷の針が爆発を起こし、他の氷の針も吹っ飛ばした。
「っ!!」
「驚いたか?実は秀に負けてから肉体強化を特訓したんだ、そこで編み出したのがこの爆弾近距離戦だ、触れたものを爆発させる戦いかただ」
「アイスニードル」
「その技は無駄な筈だ」
先ほどまったく同じように氷の針を吹っ飛ばしたゼファは吹っ飛ばしたことでできた隙間から連に詰めたゼファは連の顔面に拳をぶちこんだ。
「手応え有り・・・っ!!」
「残念だったな、貴様が殴るより俺のガードの方が早かったな」
連はゼファの拳をしっかり手のひらでガードしていた。
「爆発したはずだぞ、何で無事なんだ!!」
「さあなそれはあの世で考えな」
連がそう言うとゼファの拳が凍り始めていた。
「な、何だと!?」
「言ったはずたぜ、貴様の全てを凍らせてやると」
「うあぁぁぁぁ!!」
先ほどまであれほどうるさかった部屋は静寂に包まれていた、凍りづけにされたゼファとともに
「もっとだ、もっと全てを凍らせてやる」
―秀Side―
「どういうことなんですか秀さん」
「結論を話す前に、俺が疑問に思ったことを話すよ」
「疑問に思ったこと?」
「まず一つ目だけど、俺が聞いたサラさんと、今会ったサラさんが同一人物だとは考えにくい」
「そりゃ確かに母親にしてはやりすぎのところもありましたけど」
「そして二つ目だけど、ラニアが意識を完全に乗っ取られた時、ラニアの体の周りは負につかれてたぜ」
「えっ、私がですか」
「ああ完全に負につかれてたんだ、そのところを考えてみたら一つの答えが見つかったんだ」
「一つの答え・・・」
生唾をごくりと飲み込むラニア
「ラニアが会ったサラさんはラニアが思い出したかった過去が変化したものじゃないかなって思ったんだ」
「・・・・・」
秀の言葉に黙りこむサラ
「あのーすいません、もっと平たく説明してくれませんか?」
「結論を言えばラニアが思い出したかった過去をラニアは心の中で辛いとか忘れたいとか思っていたんだと思うんだ、それでそんなネガティブな考え方のせいで過去という記憶に負がついた」
「でも過去に負がついたなんて話し聞いたことありませんよ」
「確かに聞いたことのない話だけど、それじゃなきゃラニアと戦った時についていた負が説明がつかないんだよ」
「それはそうですけど」
「まあ本人に聞いてみりゃあいいじゃないか、なぁサラの偽物・・・いやラニアの過去の記憶よ」
「ふふふ、ははははははははは、よくわかったわね」
サラの偽物がそう言い終わると戦いの際に見た負がサラを包み、サラの姿から負につかれたラニアの姿に変わっていた。
「どうやらビンゴみたいだぜラニア」
「私が・・・二人?」
「さあてラニアの過去を返してもらおうか」
「ふふふふ、それは無理よ」
「・・・それはもしかしてラニアが過去を思い出すには重すぎるとか言うんじゃないとか」
「その通りだけど」
「はぁー頭かってーな、俺と戦った時に言っただろ、やってみなきゃ分からないだろうし、たとえ失敗したとしても俺が責任を取るってな」
「どうやってもお前は過去をラニアに戻す気はないんだな」
「ええまあね」
「だったら力づくでも戻してやる」
「あらそんなしたら一生過去を思い出すことすら出来なくなるわよ」
「どういう意味だ?」
「私はラニアの過去に強い負がプラスされることによって具現化されたようなもの、そんな私を倒しラニアに戻して負に呑まれちゃうよ」
「くっ!」
過去のサラの言葉のせいで一つの策が潰されてしまった。
過去のラニアが言ってることは本当のことで、ラニアと戦った時に感じた負の濃さはかなりの濃さであった。
(さてとどうしたもんかね、何かシルフィー手はないか?)
〈何を悩んでの秀、負の濃さが問題なら負を薄めればいいのさ〉
「負を薄めるなんて出来るのか?」
〈大丈夫私がちゃんと手伝うからさ〉
「了解した行くぞ、天つ風!!」
「へー、ラニアが負に呑まれていいの」
「違うさ、俺はラニアを助けるんだ」
「出来ると思ってるの?」
「風をなめんなよ」
天つ風を鞘から取り出した。
「行くぜ」
秀が過去のラニアに向かって走り出すと、過去のラニアも秀に向かって走り出す。
お互いの間合いに入ると過去のラニアがすぐに攻撃してくるが、今の秀にはかすりもしていなかった。
逆に秀が過去のラニアに腹を天つ風で殴った。
「ぐっ・・・」
〈今だよ秀、動きを止めるよ〉
「旋風束縛陣!!」
過去のラニアに風が集まり、ラニアは身動きがとれなくなった。
「くっ!」
〈秀ありったけの魔力を天つ風に注いで〉
「了解」
シルフィーに言われた通りに天つ風に魔力を注ぐと、天つ風の中から溢れるように風が出てくる。
(この風は何なんだ、どれだけ出てきても全く髪や服がなびかないぞ?)
〈魔力っていうのは、精霊契約してから初めて使えるもの、そして精霊契約は負に負けない強い正の器があることで契約ができる〉
「・・・もっと平たく説明してくれ」
〈つまり、負は魔力で打ち消すことが出来るの〉
「はぁ?それだったらカースの負も打ち消せるってことじゃいか」
〈その質問についてはまた今度答えてあげる、今はラニアの負を取り除くよ、行くよ秀〉
旋風束縛にまだ苦しむ過去のラニアに近づいた秀は天つ風から吹く風の風向きを全て過去のラニアに変えて、自分は現在のラニアの方を向いた。
「ラニアこっちに来るんだ!!」
秀の元に走ってくるラニアに天つ風を持つように促し、二人で天つ風を持つような形になった。
「ラニア、俺はラニアが今からどれだけ辛い思いをするのかなんて分からない・・・・けど、俺は俺が出来る限りの手伝いはするから、絶対に過去に負けんなよ!」
「はい!!」
覚悟を決めたラニアの返事を聞いた秀とシルフィーは自分自信も気合いを入れて過去のラニアに叫んだ。
「〈負なんて吹き飛びやがれ!!〉」
「〈浄化の風!〉」
「きゃあぁぁぁぁー」
風がやむ頃には過去のラニアの姿はきれいさっぱりいなくなっていて、そこに残っていたのは宙に浮いている淡い光を放つ塊だった。
「あれが私の・・・過去」
「後はラニア君次第だ」
「っ!!秀さんどうしたんですか?」
ラニアが驚いたよいに自分を見てきたものだから、ふと自分の体に目を向けると、自分の体が少しずつだが薄くなっているのに気がついた。
それを見て考えて思い浮かぶ答えのは一つ
「元の世界で待ってるぜラニア」
そう言い終わった秀が意識が一瞬途切れ、次に意識が戻った時には山の山頂で自分がラニアを押し倒してのっかていた。
「勘違い起こされちゃたまんねぇな」
それから3人の帰りを待つこと10分、最初に帰って来たのは目の前にいた少女だった。
「うぅ・・・はっ!!」
「ラニア!!大丈夫だったか」
「秀さん・・・」
もうすでに泣きそうな顔しているラニアを見た秀はラニアを優しく抱き締めた。
触れれば簡単に壊れてしまいそうだったから今の自分に出来る限りの強さで
「秀さん・・・私、頑張りましたよね」
「ああ、本当によく頑張ったなラニア、よく辛い過去に負けなかったな」
「確かに秀さんがいなくなってから自分の過去を思い出し始めた時は辛かったです・・・けど辛い過去以上の大切な思い出を思い出すことができたんです」
「なるほど、その大切な思い出の存在のおかげで乗り越えれたんだな、んでその大切な思い出は何だったんだ?」
「お母さんと遊んだ思い出です」
「そうか・・・」
「この場所で、たくさん・・・たくさん・・・遊んだんです」
ラニアはそこで何かが切れたかのように、秀の胸で泣き始めた。
「うぅぅ・・・うわぁぁぁん」
「頑張ったな、本当に頑張ったな」
ラニアの背中をポンポンと叩いた秀はそれからラニアが、落ち着くまで秀は続けていた。
「どうだ落ち着いたかラニア」
「はい、何とか落ち着きましたよ」
「そうかそりゃ良かった」
ニコッと微笑む秀を見たラニアは顔を赤らめていた。
「今日はありがとうございました秀さん、よければ今日の・・・・」
今日のの次の部分が気になるところだが、見事にその部分を必死に走ってきた少女の悲痛な助けによってかきけされた。
「はぁ、はぁ、秀さん助けてください!!」
「西脇どうした、そんなに息を切らして」
「連さんが、連さんが」
「落ち着け西脇、落ち着いて説明するんだ」
やっと落ち着いた西脇が説明した。
「そうか、ありがとな西脇」
「この方向をまっすぐ行った所に洞窟がありますから、あ、秀さん連さんから言われていたことがあります」
「俺を止めてくれ・・・だろ、大丈夫連は俺が止めてやる」
天つ風を出した秀は西脇が言った方向に向かって走った。