四十一話 天つ風
熊型のカースの前に瞬時に移動した秀は天つ風で片方のカースの腹部の横を切り裂いた。
「確かに図体だけだな、スピードに関しちゃ狼型より遅いな」
今の秀のスピードにカースは全くついていけてなかった。
「ぐおおおぉぉ!!」
二匹が同時に秀に襲いかかるが、やはり今の秀は簡単にかわし、カースの後ろを取っていた。
「終いだ、風刃!!」
飛ばした風刃が見事にカースを真っ二つに切った。
真っ二つに切られたカースは下半身と上半身が地面に落ちたてから霧になるように消えていった。
「ふー、ラウルそっちは―」
苦戦しているとは塵一つとして思ってないが、どうなったかをラウルに聞きながらラウルの方向を見ると、ラウルはカースを串刺しにして燃やしていた。
「ん、何だ?」
「いや、なにも・・・無いです」
そこから何匹かのカースが現れたが、ラウルと秀が全て退治した。
退治してからレーガルに戻る頃にはすでに日が暮れていて、ラウルは城に戻り秀は宿屋に戻ろうとしていた。
「そこのお兄ちゃん、良い商品入ってるけど見ていかない?」
話しかけられたのは出店の店員で、いろいろな道具を売っていた。
その売っている商品の中で秀の目を引いたのはレーガル城でラウルにもらった薬だったが、問題はその値段
「ん、兄ちゃんその薬が気になるのかい」
「ん、まあこれってこんなに安いの?」
出店で売っていた薬の値段はもとの世界での自動販売機の500mmlペットボ○ルの値段だった。
「・・・あんのクソ隊長が!!」
結局とぼとぼ宿屋に帰るしかなかった。
「ただいまぁ」
「お帰りなさい、何だか機嫌が悪そうですね秀さん」
「そうかな、まあ機嫌が悪いのは当たりだよ」
普通にただいまと言ったはずなのに、その一言で人の機嫌が分かるなんて何気に凄いなと思ってしまう。
「ところで秀さん、明日は特訓はありますか?」
「ん、あぁそういや明日から3日間休みだったような、でも何でなんだい?」
別れ際にラウルは今日のカースの討伐が上手くいったため、明日から3日間を休みにすると言ってきたことを思い出したのだった。
「よければ、明日の1日を私に付いてきてくれませんか?」
「ラニアと俺二人だけってこと」
「あ、いや別に二人だけってことじゃないんですよ、べつに他の方々を呼んでいただいても構いませんが」
何故か二人だけという言葉に過剰に反応するラニア
「別に俺は構わないよ、明日は当番にも当たってないから、朝の準備さえ終わったら、明日1日はラニアにとことん付き合わせてもらうよ」
それを聞いたラニアはいつもの明るい笑顔で、はいっと答えた。