三十六話 消えない過去
その日の夜、一人テラスでラニアの行動について考えていた。
「ラニアは何であんな行動をしたんだろう?」
「ラニアがどうかしたのか?」
「ぬおっ、ラウル」
久しぶりに会ったラウルに少しびっくりしてしまった。
それと同時に今日のラニアの不思議な行動のことを話すか迷ったが、ラニアの親が知っておくべきかと思った秀は今日のラニアのことを話した。
「そうか・・・またか」
「えっ、またってことは前にもあったんですか?」
「ああ希にあるんだよ、昔のことがフラッシュバックしちまってな」
「昔のことですか?」
「もうかれこれ15年ほど前のことだな」
柵を背にして物思いにふけるようにラウルは15年前のことを話し始めた。
◇◆◇15年前◇◆◇
「じゃあ俺は行ってくるからママと一緒いい子にしとくんだぞラニア」
「うん、行ってらっしゃいパパ♪」
「じゃあ行ってくるから後はよろしくなサラ」
サラは俺の妻で赤髪のロングヘヤーで、ラニアの髪もサラ譲りだろう。
「ええ、行ってらっしゃいあなた」
いつものような朝、いつものような見送り、幸せで平和な日々が壊れてしまうとは俺はまだ知るよしもなかった。
俺の仕事はレーガルの兵隊で、主にカースを倒す仕事をしているが、精霊契約をしていない俺達兵隊がカースと戦う場合は複数で戦わなければいけない。
《緊急指令、緊急指令!レーガル近くの森にカースが複数出現しました、直ちに出撃してください》
「出撃命令だ3分後に城門に集合だ!」
一人の声でそこいらにいる兵隊は準備をする者、すでに準備を終えて城門に行くもので城内は忙しかった。
3分後に城門にきっちり整列した中にラウルも入っていた。
「これよりカースの討伐に向かう、カースと戦う時は俺以外の者は絶対一人で戦うな」
整列している兵隊に説明しているのは隊長のグレンは精霊契約をしている。
多くの部下からも慕われている、何を隠そう俺自身もグレン隊長を尊敬している。
「隊員進め!悪の根源であるカースを殲滅するぞ!」
グレンの掛け声で士気を高めた隊員達はカースが出現した森へと移動して行った。
森に着くとそれぞれ複数に分かれて散っていく
報告通り複数カースが出現していて、兵隊達、無論ラウルもそれぞれ戦闘体制にはいる。
ラウア達の散った先にもカースが出現した。
数的には3対1で有利な状態で勝負をすることができる。
槍を構えたラニアと長めの長剣を構える二人、ジリジリと距離をちじめて3人で一斉にカースに襲い掛かった。
レーガルの兵隊が森のカース退治に出払っている頃、レーガルに不穏な影が迫っていた。
レーガル城の中の一際大きな部屋、中心に大きなテーブルが置かれていて、その上にはレーダーのような物があり、レーダー上には複数の黒い点がある。
「カース退治は着々すすんでいますね」
「そうだな、このままいけば後10分程で終わるだろ」
無精髭をはやした大柄の男ジーダ・シュバルツ、このカース退治の指揮官である。
黒い点が消えていくなかで青色のレーダーが赤く点滅し始め、部屋の空気が一気に凍りついた。
「これは・・・まずい、カース退治に向かわしているグレンと何人かの兵隊を呼び戻せ!」
部屋にいるもう一人が部屋を急いで飛びだして行った。
森にカースの数は確実に数を減らしていて、もう少しで終わるという時に、空に赤い信号弾が上がった。
「っ!!」
「信号弾?こんな時にかよ」
「残りのカースは君達に任せる、ラウルとそこにいる四人は俺に付いてこい」
「「了解!」」
グレンとラウルを含む五人は森から出てレーガルに向かって行った。
「くそっ、何故いきなり人型のカースが出現したんだしかも二体も」
レーダーに表示された赤い点は人型のカースの印でやたらめったには現れないが、その赤い点二点出現していて、出現した場所はレーガルの市場付近だった。
レーガルの状態は混乱状態に陥っていた。
人型のカースが最初にターゲットにするのは負の根源を消そうとするが、最終的には無差別で襲うことになるため、人々は我先にとカースから離れて行く
その頃のレーガルはまだシェルターが完成されてなく、人々はカースから離れるしか出来なかった。
「ひっく・・・お母さんどこにいるの、うわーん」
逃げ惑う人々の中で親と離ればなれになってしまった子供が一人市場で泣きじゃくっていた。
ゆっくりとその子供に近づくカース、負の根源を消したのどうかは知らないが、そのカースはその子供をターゲットにしている。
手には滴り落ちるほどついている血、道しるべのように血の雫を落としながらゆっくり子供に近づいて、その手を振り下ろしたがその攻撃は当たらず空振りに終わった
「大丈夫?もう大丈夫よ私がいるからね」
子供をカースからの攻撃を避けさしたのはサラだった。