四話 帰り路
「・・・ということらしい」
「「えーーーー」」
予想通りの反応だった。
前向きに考えるなら、西脇が卒倒しないで済んだことぐらいだ。
まあ、すでにテンパってはいるが……
「えっ、えっ、何でですか?こんな重要な物を隠そうとしてたんですか」
「いや隠そうしてた訳じゃないよ、取り乱すと思ったから、現に取り乱してるから良かったかな」
「それは今だけです!それに私達に教えないつもりだったんですか?」
「まあ、ちょっとしたときにさらっと教えようかなーって感じかな」
西脇に迫られ、目を逸らす。
「それなら結局先に教えてもらったほうが、対策とかをたてやすいです」
「わかった、わかった悪かったよごめん、じゃあ今日の活動はその対策についてでいい?」
西脇は俺がとった行動に頬を膨らませ怒っているのを見て、少しドキッとしてしまったことは連には内緒にしておこう
「よし秀、茜ちゃん、今日はその対策についてだな」
俺達3人はその対策について話し合いを始めたのだったが・・・
~一時間後~
「「「ふーーーー」」」
何も出なかった・・・
「あ~どうしよう、どうしよう、あと一週間しかないのに」
頭を両手にやり、ぶんぶんと頭を振り回す。
「落ち着けって西脇さん、焦ってはダメだよ」
「そうそう、焦ってもいい案は浮かばないって、まあ俺は焦ってる茜ちゃんを見てるだけで幸せを感じれるからいいんだけどね」
一瞬ぶっ飛ばそうと思ったのは俺だけではないはずだ、西脇も拳を握り、プルプルと震わせているからだ。
結局一時間、みっちりと3人で話し合いをして、浮かんだ案が、帰宅部の連中を誘うという案だったが、この高校は部活か勉強という感じで、部活に入ってない者は、ほぼ勉強一筋で、誘うことは少し難しかった
「とりあえず帰ろうか、各自家で考えていい案が浮かんだら明日の部活で発表ってことで」
「はい、それでは今日は解散ということで」
俺達3人は部活動を終了して学校を出ることにした。
~~昇降口~~
「では皆さん私は図書室に行きますのでこれで」
「えー、それなら俺も茜ちゃんについていく」
相変わらず西脇が絡むと、すぐにこうなる連には本当呆れたものだ。
「おいおい、連が静かに出来るわけないだろ、今日は大人しく帰れ」
「そ、そうだよ図書室では静かにが鉄則だよ」
二人に言われたのがこたえたのか、それとも西脇に言われたのがこたえたのか、連も帰ることになったのだが
「おい夜坂、お前今日の小テストお前だけ引っ掛かってるのに、なぜ再テストに来なかった?」
「げっ、バーバリアン山本」
「そうか、夜坂そんなに先生と二人っきりになりたいんだな」
(あ~あ、やっちゃった)
数学の教師山本、学年主任でもある山本は体格からか生徒からはバーバリアンと呼ばれていた。
本人の前では怖くて呼ぶこともできないが、連はまさにその禁忌の名を呼んでしまった。
「あ、いや先生あの、そのあーれー」
首根っこを捕まれバーバリアンにテイクアウトされて行った。
「連さん大丈夫ですかね・・・」
「・・・無理かもな」
学校を出るとグランドが夕日に染まり、いつものグラウンドではないかのように思わせる。
人が踏みしめるアスファルトさえも一種の芸術品に変えてしまう夕日、その道を帰る自分に少しだけ幸福を感じていた。
駅に着いて、電車に揺すられること10分、自宅がある駅に着いてホームの階段を上がりきった時。
急に目眩に襲われ、その場でぐらついてしまったが、なんとか階段まで後半歩というところで踏み止まることができた。
(あぶない、あぶない)
冷や汗をかきつつ歩き出そうとした時、秀の目にはあり得ない光景が映っていた。
「ひ、人が・・・いない?」
秀の目に映った光景は人気が多い駅なのに、今は人っ子一人いない状態だった。
自分の置かれた状況が掴めない秀はただただ周囲を見渡すしかなかったその時
「どうかしましたか?」
「だ、誰だ!」
秀が後ろを振り向くと、そこには全身黒色で統一された服にフードを深く被った人が立っていて、いきなり秀に一言呟いた。
「どうやっても叶えたい夢はありますか?」