二十八話 命懸けの逃亡
背中に走る激痛と燃えてしまいそうな熱さ、ゼファから逃げて来て10分が経っているが、秀の視界はすでに揺らいでいた
(くそっ、真っ直ぐ歩くこともままならねぇ)
「秀、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ」
口ではそう言うも、実際は痛みに負けそうだったが、そんな状況ではないのだから走るしかなかった、どんなに痛くても・・・
コロコロ
「マジかよ!!」
前方に転がってきた爆弾の爆発での直接ダメージはなかったが、狙いはそこじゃないとすぐに分かった。
爆発が起きた所の木がシルフィーに向かって倒れてきたからだ。
シルフィー本人は倒れてくる木と逆方向を向いていたために気付いていなかった。
(間に合え!!)
シルフィーに飛び込むように飛び、シルフィーをそのポジションからずらすことが出来た。
「はぁ、はぁ、大丈夫かシルフィー」
「ありがとう・・・私は大丈夫だけど秀が・・・」
今の秀は誰が見ても重症で、すでに体がいうことが聞かなかった。
さらに後ろを見ると、100メートルほどの所にゼファとタトゥナスの姿があった。
(くそっ!こんな所で死ぬわけには・・・・・)
相手に手も足も出ない自分の不甲斐なさに腹がたってしょうがなかった。
「秀・・・・・・」
(私が秀を呼ばなければ秀がこんな怪我をしなくてすんだに・・・)
もはや長く持ちそうにない秀にシルフィーは深刻な顔をしてゆっくりと口を開いた。
「秀・・・・・・一つだけ、この状況を乗り切る方法があるよ」
「・・・ほ、本当に!」
「でもよく聞いて、これが失敗すれば秀も私も死んでしまうの、その覚悟がある?」
「へへへ、どうせこのままいたら死んじまうんだ、だったらそっちにかけてみるよ」
「分かった、秀、肩貸すから少しでもアイツから離れよ」
最初よりは比べもにならないくらいゆっくりとだがゼファから離れて行った。
「ふん、悪あがきを」
またゼファから逃げること10分、すでに空は夕焼けがかっていた。
「すまないシルフィー、逆に迷惑をかけてしまって」
「秀、今はアイツからできるだけ離れることだけを考えて」
「でも、奴から離れてどうするんだ、どうせすぐに追いついてしまうぜ」
「よく聞いて秀、この状況を乗り切る方法は一つしかないの、それをするには時間がいる、だからアイツからできるだけ離れるの」
「それはさっき聞いたさ、んで具体的に何をすればいいんだ」
森の中進んできて、ちょうどいいサイズの木に秀をもたれ掛け、真剣な顔でその方法について話した。
「私と契約を結んで秀」