二十五話 マナマ草原
――宿屋臨時休業――
「・・・・まじかよ」
「言ったじゃろ、明日出掛けるぞって、つべこべ言わず付いてこい」
一人歩き出したシリルに付いていくこと20分、レーガルを出て森を抜けて着いた場所は壮大に広がる草原であった。
「凄いじゃろ、ここはマナマ草原って言ってな、娯楽にはうってつけの場所になっておる」
ここマナマ草原は普段こ多くの人達が集まる場所だが今日来ている人達は6人+シリルとラニアの8人だけだった。
あまりの広さに皆が感銘を受ける中、秀の耳にか細い声が聞こえてきた。
〈助けて・・・〉
「っ!!」
すぐさま周り見渡すが見えるのは青々しく茂る草花と、抜けて来た森だけだった。
(気のせいかな?)
皆を見ても何のへんてつもない顔をしていたので、その時は気のせいだと思っていた。
〈助けて・・・早くしないと全てが壊れてしまう・・・〉
「へーこれは凄いな、でもここで何するんだ、娯楽って言ったって、ボールもなんも持ってきてないし」
「はて、娯楽場所とは言ったが、遊ぶと言ったかの」
(・・・・・・まさか)
――10分後――
「ほれほれどうした、昨日のはまぐれかな」
「くそっ、何で昨日の今日なのにそんなに元気なんだよ」
昨日とは違い必死にシリルの攻撃を受け流す秀
「せやぁ!」
「っ!しまった木刀が」
シリルが渾身に振り抜いた攻撃を防ぐが、その威力は恐るべきもので、少し握りが甘かったためか、秀の木刀は吹き飛ばされてしまった。
「ワシの勝ちじゃな」
「たぁー、負けた」
秀はその場で大の字になり寝そべり、澄んだ空を笑顔で見上げていた。
「さあ次は夜坂じゃぞ」
「しゃー、行くぜシリル」
気合いを入れて意気込む連だったが、連は木刀を持たずに向かい合っていた。
「何だ連の奴とうとう頭がいかれたか」
「おい秀、聞こえてるぞ俺は木刀が合わないんで、これにしたんだ」
そう言うと、ポケットからグローブのようなものを取り出して手にはめた
「へぇーリストか、でもアイツどうやって木刀防ぐつもりだ」
「そうだね、攻撃を腕で防ぐつもりかな?」
シリルと連の特訓が始まってから10分程・・・・・
「おい連、腕大丈夫か?」
「いてて、籠手を忘れてたとは不覚だぜ」
「大丈夫ですか連さん?」
「ああ俺の女神よ、俺を手当てしてくれー」
怪我をしてるのに、西脇が来るといつもの連にもどるが、今回も同じく西脇はひいていた。
「こんだけ元気なら大丈夫だな、さあて俺はもう一度シリルに挑んでくるか」
「その意気込むはいいがそろそろ休憩にするぞ、ラニアが弁当を作ってきたんだ、なあラニア」
「ええまあ一様ですけどね」
「そうなんだ、じゃあ休憩にしますか」
ラニアが持っていたカバンからシートを広げて重箱を取り出して、弁当を広げると本当に一人で作ったのかいうぐらい、手の込んだ料理がたくさんあった。
「スゲーなラニア、これ程の物を一人で作るなんて」
「凄い美味しい!」
「これは旨いな!」
ラニアが作った弁当は運動した食べ盛りの男子もいるためか、あっという間に完食となった。
その後胃袋を休めるためにシリルと共にで休んでいた。
「ふぅーにしても、ここの草原は何か不思議な感じがするんだよな」
「ほぉー不思議な感じというと?」
「まあ何と言うか、風が気持ち悪いんですよ、人生で感じたことがないぐらい」
「そうかのー、ワシは別にいつもの感じしかせんがのー」
「それに、気のせいかもしれないけど、変な声が聞こえてくるし」
「多分疲れてるんじゃろ今日は早く休むべきじゃな」
体を気遣ってくれるシリルに感謝しつつ、一眠りしようかと目を閉じたときだった。
〈お願い助けて!!〉
「っ!!やっぱり気のせい何かじゃない」
「おい浅村どこに行くんじゃ!!」
「声のする方です!」
自分を呼んでいるという確信はないが、秀は声のする方に走っていき、森の中へと消えて行った。