二十二話 大切な言葉
久しぶりに過去編です
「ねぇ秀、聞いていいかな?」
「いきなり何だよ凛、別に構わないけど」
「最近思ったんだけど、力って不思議だよね」
「はあ?いきなりどうしたんだ、ついにおかしくなったか」
「もう、ふざけないでよ真剣なんだから」
「悪い悪い、んで何を聞きたいんだったっけ」
呆れたと言わんばかりの深いため息をついていた
「力って不思議だねって話だよ」
「いやまじで意味不だって、ちゃんと説明してくれよ」
いきなり力を不思議だと言われても100人中2人が分かるかどうかの質問だ
こんな不思議な質問をする凛は間違いなく不思議ちゃんだろう
だがしかしこんな不思議ちゃんから俺は大切なことをたくさん教えてもらった
“力は使い方しだいで暴力に変わるけど、正反対の力にも変わる”
この言葉を聞いたのも、凛が不思議な質問をしてきたことから始まったことだ。
「例えば秀、水はどうするもの?」
「何だよクイズ感覚か、まあ飲むものだろ水は」
「そうだね、でも火事が起こった時に火を消すときに水を使うよね」
「まあ、そりゃ使うだろうよ」
「そして、人を殺すことも出来るよね」
声のトーンを落としたせいか、白に支配された部屋に暗い雰囲気が流れる
「でもね、今言った水の使い方は人がやれることなんだよ、言い換えれば使う人次第で凶器にも変わるし、人を助けるものにも変わる」
「なるほど、でもその水の話と力がどう関係するんだ」
「それは・・・」
会話を遮るようにドアが開き、一人の少年を連れ出そうとして腕を掴むと、少年が急に暴れだし始めてしまった、おそらく体が拒絶したのだろう。
「おい、暴れるんじゃねぇ!」
なかなか静かにならない少年を静かにするために兵士が拳を振り上げると
秀よりも早く少年と兵士の間に凛が割って入り、兵士の拳が凛が受け、凛はそのまま床に倒れ込んでしまった。
「凛!」
自分もすぐさま二人の元に駆け寄るが、抵抗は虚しく少年は兵士によって連れ出されてしまった。
「凛、大丈夫か!」
凛を両手で抱え、凛を気遣う秀だが、凛は自分の受けた暴力を気にすることなく、先ほど言いかけていたことの続きを話始めた。
「さっきも言ったように使い方一つで物の用途はいろいろなことに使えるようになるでしょ」
「ああ確かにそうだな」
「だから、力も一緒だと思うの、使い方次第で今みたいにただの暴力に変わるか、それとも暴力とは正反対のことに変わるか、でも使い方次第で正反対のどうしに変わるって凄くない、・・・だから私はこう思うんだ」
この時に凛からあの言葉を聞いた。
“力は使い方しだいで暴力に変わるけど、正反対の力にも変わる”と
その時の凛の顔は、先ほど暴力を誰かの代わりに受けた人とは思えないほどだった。
優しくて、暖かくて、見てる側が誰もがつい笑顔になってしまう笑顔
何故彼女がこんなにも強いかは知らないが、自分はこの笑顔に何度も救われたのだと、秀は再び自覚することができた。
忘れかけていた大切なことを思い出すことが・・・・
目を開けた秀は、少し笑み浮かべてから今一番輝いている星に向かって拳を握り締める。
こんなことで届くとは思っていないが、星に向かって言った、感謝と誓いの言葉を・・・
今一番、自分が想っている人に向けて―
「凛サンキューなお前のおかげで気付くことができたよ、そして凛!必ず・・・必ず約束は守るから」
どことなくスッキリした秀は自分の部屋に戻って眠りにつくことにした。