十六話 曇り顔
その日の夜、晩ごはんを食べている時に、シリルに言われたことが頭の隅に引っ掛かっており、上の空になっていた。
「おい、秀大丈夫か?さっきからボーッとして」
「ああ、大丈夫だよ・・・・ごちそうさま」
みんなより早く席を後にした
「どうしたんですかね、今日の浅村君」
「確かにいつもの秀とは違うかもな」
「浅村君・・・・」
みんなと別れた秀は部屋には戻らず、宿屋のテラスの柵にもたれ掛かりながら空を見上げていた。
「何なんだろう・・・俺に足りないものって」
一人で静かな場所にいても、大好きな夜空を見ていても、その答えを見つけることは出来なかった。
「浅村君・・・」
「西脇・・・・どうしたんだこんな所に来て」
あまり心配を掛けたくない為、平常心を装っていたが食堂のこともあっため、意味をなしていなかったようだ。
「それはこっちの台詞だよ、今日の浅村君、様子がおかしいよ」
「そんなことないよ、いつも通りだよ」
「嘘つき、石月さんから聞いたんだからね」
(あのバカ、誰にも言わないでくれって言ったに・・・)
「あ、石月さんを怒らないでください、私が石月さんにしつこく聞いたんですから」
「よく分かったな、石月が知ってるって」
「石月さんの様子も少しだけおかしかったんで、何か知ってるかなって思って」
「西脇・・・・今知ってるのってお前と石月だけだよな」
「うん、まあそうだよ」
「じゃあ、石月同様俺の事を残りの奴らには話さないでくれないかな」
少し考える仕草を見せた西脇は石月と同じく、一つ条件をだしてきた
「何で今日、様子がおかしいか教えてくださいよ、シリルさんとの特訓が原因なんですよね」
(ったく、西脇も鋭いんだなぁ)
一つため息をついた秀はシリルに言われた言葉を西脇に話した
「浅村君に足りないものですか・・・」
「おいおい、お前が考えても仕方ないだろ、こればっかりは自分で何とかしないとな」
「でも、少しは楽になりましたよね」
「まあそりゃね、楽になったよ、ありがとうな西脇」
「どういたしましたて、それじゃあ私は戻りますね」
夜空を見上げていた秀は西脇のおかげで、少しはましになった雰囲気を確かに感じ取っていた。