十五話 特訓開始その3
「かかってきな浅村」
「それなら遠慮なく!」
次々と攻撃を繰り出すが、赤子の手を捻るように簡単に受け流す
「どうした、どうしたこんなものか」
(くそ、打っても打っても簡単に流される)
「次はこっちの番だぜ」
シリルより早く秀との間を詰め、次はラウルが攻めてくる、ラウルの一振りは間違いなくシリルより一振り一振りが強く、防ぐことも苦であった。
「そこだぁ!」
ラウルの渾身の一振りで木刀が弾かれて、気付いた時にはラウルの木刀が首もとにあった。
「勝負ありだな・・・」
「くそ、また負けだ」
「あたりまえだ、隊長が素人に負けるわけねぇだろが」
「浅村よ、休み次第風呂の薪割りをしときなさい、その時も一振り一振り、力を込めてやるんじゃよ」
倒れてる秀を後ろにしてシリルとラウルはその場を後にした
「ラウル、打ち合ってる時に何か感じたじゃろ、アイツの違和感を」
「ああ、普通人間はあんだけ打ち込まれてりゃ反射的にどっかで目を瞑っちまうもんだ、なのにアイツは一度も目を瞑ることなく俺の攻撃を見ていた」
「確かに、あれだけ昨日打ち込んだのに、恐怖心がまったくないのか浅村には」
「考えられる理由は、昨日の内に恐怖心を乗り越えたか、それとも・・・打ち込まれることに慣れているかかってとこかな」
「ふん、まあそれはあやつ自身のことじゃからワシらには分からんな、それよりラウル、さっさと持ち場に戻らんか」
「いっけね、じゃあ俺戻るは」
シリルとラウルは別れ、それぞれの持ち場に戻る
「ふー、まじで疲れた」
薪割りも終わり宿に戻ったところにタオルを持った石月がいた。
「あれ、特訓終わったんだ」
「ああ今終わったんだ、お前には悪いけど今日も合格出来なかったよ」
「そうなんだ・・・まあ気を落とさないでよ、はいタオル」
浴槽にあるタオルを運んでいたタオルの一つを秀に手渡した。
「おお、石月サンキューなじゃあ俺は少し部屋で休むわ」
(俺に足りない物って一体何なんだろう?)
部屋に戻ると部屋には誰もおらず、連や蒼士が仕事をしてると思うと、寝ることに良心が若干いたんだが、夜も特訓があると思うとゾッとしてしまい、そのまま眠りについた。
起きるとすぐにシリルと特訓を開始する
「じゃあ、始めるぞ!」
昨日と同じ様に基本練習のような練習は一切せず、剣術バージョンの乱取りをする。
相変わらず鋭く、素早い攻撃を繰り出してくるシリルに防戦一方だった。
「くそっ」
一旦、後方に下がり距離をとるがすぐにシリルは距離を縮め、打ち込んだ為防御が間に合わずに、突きをもろに受けてしまった。
「くそっ、もう一回!」
「・・・ストップ、もうやめだ」
立ち上がる秀に静止をかけて、木刀を渡すように促す
「えっ、どういうこと」
「進歩がないからな、太刀筋はいいが今日の言った通りに足りないものがあるって言ったじゃろ、しかし安心しろ、それを見つけるまで特訓を中止するってわけじゃ、別に個人的に練習はしててもいいぞ」
秀にそれだけ言い残し、シリルはその場を後にした・・・
「・・・・くそっ!」
地面に拳を叩きつけて、秀も同じくその場を去っていった。