十四話 特訓開始その2
朝はいつも通り早起きでその時には昨日受けたキズの痛みも和らいでいたが顔についた木刀ですって出来たキズは隠せず、朝から問いただされてしまった。しかし悪いことばかりではなく、朗報なことに蒼士が動けるようになっていた。
「んで、その顔のキズはどうしたのかな?」
「やだなー連、風呂場で転けて角で擦ったんだよ」
「あんなに角ばった角で擦ったら切り傷ができるわ!」
「まあまあ、こんな傷じゃあ人は死なないから大丈夫だって」
「そういう、心配してんじゃねぇけどな」
心配してくれるみんなの気持ちは嬉しいが、なかなか話すことは出来なかった、
話せば余計な心配を掛けることになると思った、だからみんなには話せなかった。
食堂から自分達の部屋に行く途中にシリルに呼び止められた。
「ええ、準備ができしだい特訓をするだって、無理ですよこれから新藤と俺買い出しに行かなくちゃ行けないんですけど」
「その一分一秒がおしいのじゃ、誰かに変わってもらえ」
シリルに言われた通り、買い出し当番を代わってもらおうとしたが、今日の非番が西脇と石月しかいなかったが運のつきだった。
(う~ん、石月に交代してもらうか)
パン!石月の前で手を合わせてお願いした。
「石月、この通りだ今日の買い出しに俺の代わりに新藤と行ってくれ頼む」
「別にいいよ・・・ただし、さっきシリルさんと話してた特訓について教えて」
「くっ、聞いてたのかよ」
少し迷ったが特訓という言葉を聞かれちゃしょうがないと思い、石月に誰にも話さないという条件で全てを話した。
「・・・そうだったんだうん分かった、代わってあげる、そのかわりに早く合格してよ、あんまり長いとみんなにばれちゃうからね」
「ああ分かったよ、ありがとな石月、じゃあ行ってくるわ」
みんながそれぞれの仕事をしている中、秀はシリルと昨日の特訓の続きをしていた。
「おりゃ!」
縦や横から振る木刀だが、シリルに簡単に防がれてしまう
「ふん、昨日とは少し変わったな、木刀に力がある、だが・・・甘い」
シリルの一振りが秀の頭部に直撃した。
「ってー、くそもう一回」
「いくらでもかかってくるんじゃ、相手してやる」
「ふー行くぞ、でりぁ」
シリルとの距離を一気に詰めて、素早く振り下ろすが木刀で防がれ、逆に切り返してくるのを紙一重でかわして一旦、シリルとの距離をとった。
(ダメだ、どんな攻撃でも防がれちまう、一体どうすれば・・・)
「考えている暇など与えてくれんぞ敵は」
「くっ」
昨日始めて受けた時の突きを繰り出してきてそれをかわすが手を休めることなく次々と打ってくるのを防ぐのが精一杯だった。
「防ぎ方があまい!」
「ぐっ」
結局昨日と同じ突きで腹を刺されて後ろに倒れた。
「はあ、このままじゃあいつまでに経っても合格出来んぞ」
「太刀筋は昨日とは違いかなり良くなっている、太刀筋はこのまま行けば十分レガールの兵士にも通じる位になるじゃろ・・・じゃが今のお前には明らかに足りてない物がある」
「何なんですか、俺に足りない物って?」
「それが見つからない限り、ワシには届かんだろうなその木刀はな」
「はあはあ、まだまだもう一回お願いします」
立ち上がりながら、そう言うと後ろから聞き慣れた声がした。
「じゃあ次の相手はこのラウル=リーが特別に相手をしてやろう」
「なっ、ラウル仕事はどうしたのじゃ」
「今パトロール中だから大丈夫だって、さくっと終わらせてやるからよ」
「カッチーン、頭きた、パトロール再開出来ないぐらい粘ってやる」
「しょうがない・・・・では始め!」