六話 真夜中に・・・
静寂の二文字が包み込む夜空の下で一人の少女はどこかに焦点を合わせるわけでもなく、ただ呆然と突っ立ていた。
「・・・・・」
「おい石月こんなとこで何してんだ?」
自分を呼ぶ声がした方を向くと体から湯気が出ている秀がいた
「浅村君!どうして湯気が出てるの?」
(そこに注目するか)
「ああ、ちよっと風呂に入ってたんでね」
「浅村君まだ入ってなかったの」
(そっちかい!こいつもしかして天然か?)
石月につっこみを入れるのもしんどいのでつっこまないようにした。
「石月、何してるのこんなとこで」
「ちよっと眠れなかったから外に出て考え事、浅村君も眠れないの?」
「まあね、そりゃいきなりこんなとこに来たら眠れないと思うけどな」
「そうだね、・・・ねぇ浅村君」
急に声のトーンを下げ、少し暗い顔になった石月は秀に一つ質問した
「私達のこと親は心配してるかな?」
「してるだろうね、いきなり子どもが消えたんだ、あっちでは大騒ぎしてるだろうね」
「浅村君よく平然としてられるね、親に心配掛けてるんだよ」
石月の言葉に力が入っているのがよく分かる、相当親に心配を掛けたくないんだろう。
「どれだけ心配掛けてるって思ったり、考えたとしても、解決する問題じゃないだろ」
「それは、そうだけど」
「心配掛けてるって思ってるなら、さっさとこの世界救って、さくって帰ろうぜ俺達が神隠し扱いになる前にな」
「・・・うん」
秀の掛けた言葉で暗い顔から元の明るい顔に戻った石月は“ありがとうと”小さな声で呟いた
「それにしてもさ、この世界の夜空は綺麗だよなーこんなに星が光ってる空見たことないな」
まるで新しいおもちゃを買ってもらったような子どものような顔しながら夜空を見上げている秀に石月はもう一つ質問をした
「何で浅村君って空ばっかり見てるんですか?授業中も休み時間も良く見てますよね、あれだけ見てると、好きとかいうレベルじゃあないですよね、何でなんですか?」
「単に空が好きなだけなんだけどな・・・まあもしかしたら俺は空に憧れを抱いているかもしれない」
「憧れ?」
「うん、まあこの綺麗な夜空も澄んだ青空もよく考えたら俺の夢に関わってるかもしれないな」
それを聞いた石月は少し間を置き
「・・・浅村君の夢って何なの?」
「逆に石月の夢は何なんだよ」
「それは・・秘密です」
「じゃあ、俺も秘密」
「えっ、じゃあ私が教えたら教えてくれるんですか?」
「さあ、どうだろうな」
顔に笑みを浮かばせながら石月をからかう秀に石月は一言言った。
「意地悪・・・・」
「じゃあ、俺はもう湯冷めしちまった体を休めるわ、お休み石月」
宿戻った秀はベッドに入って眠りにつき、激動の1日が終わった。