二十八話 マスターの願い
「城に入る?」
首を傾げた俺にマスターは続ける。
「はい、私と二人でです」
「理由は?理由も話さないではいとは言えない」
俺が理由を尋ねると、マスターは顔をうつむけ、答えることがない。
「だんまりか……じゃあ話を変えよう、俺の質問にいくつか答えてくれ、答えれないなら答えれないと言ってくれ、それならあなたと一緒に城に入る、それでどうだ?」
マスターは顔を上げて、強くうなずいた。
「あのラベルは、産まれたころから王家の娘なのか?」
「は?意味はよくわからないけど、あの子は王家の血を継いだ純潔の王族よ」
「そうか……」
凛の面影があるからこそ聞いてしまう。
ラベルは凛ではない、そう思っているのにも関わらず、心のどこかではと思っていた。
やはり凛への思いがまだ残っているようだ。
あの子は凛ではない……
「ラベルは……命を狙われているのか?」
「ええ、でも誰にまでは答えれない、私もまだ不確かなの」
「そうか、じゃあ最後の質問だ」
「あなたは、ラベルの味方か?」
俺の質問にマスターは今までに見たことがないくらい強くまっすぐな眼差しで強く頷いた。
「そうか、わかりました。行きましょうか、城へ」
「ありがとうございます、そして、よろしくお願いします」
「出発は何時ですか?」
「え?今からですけど?」
即答のマスター、相も変わらず無茶な人だ。
「俺、めっちゃ疲れてるし、魔力もそろそろ限界なんすけど……」
「仕方ないですね、では明日の朝早く部屋に迎えに行きます」
「わかったよ、じゃあ体力を早く回復するように寝るよ」
「では私もあなたにならって寝ます」
「そうしてくれと助かるよ、おやすみなさい」
明日は早い、さっさと休もうと俺は部屋に戻るやいなやベッドに倒れこむように寝た。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そして、そんなに深い眠りにつけるはずもない俺はマスターが来るまで起きていたが、それなりに体力を回復することが出来た。
「さあ行きましょう」
「ああ、行こう」
木刀を腰に差した俺はとマスターは二階のテラスから飛び降り、マスターが先導して城へと向かった。