二十五話 トラブル&トラブル
ギルドに戻ったラベルはの部屋に戻ると眠ってしまったが、俺はまたもや寝ずに一人テラスに居た。
ことの説明をセシリアさんにするとセシリアさんは眠いと言って部屋に戻った。
一人テラスの椅子に座りネシアの街並みと景色を見渡す。
時間的にはすでに日にちをまたいでいて、もうじき太陽が登り始めるだろう。
そんな時間だからこそ俺は寝ずに起きたままでいた。
どうせならネシアでの初の日の出を見るのも悪くなかろう。
「たまにはこういうのも悪くねぇな」
「ですね~~~~」
「……………おわぁ!!」
いつの間に現れたのか、俺の横には石月がいた。
同じく椅子に腰かけるとニコッと微笑みながら
「おはよ~浅村君」
と優しくあいさつしてくれた。
「おはよ石月早いな」
「目が覚めちゃって、テラスに行くと浅村君が居たので」
「そっか、気づかなくて悪かったな」
「気にしないでください、あ、それより見てください!」
キラキラと目を輝かせ、石月は俺の後ろを指差す。
そしてそのまま石月が立ち上がり、俺の後ろを通り過ぎる
俺もつられて立ち、視線を石月を追うようにして振り向いた。
「おお………」
思わず俺は立ち上がっていた。
俺はその一瞬言葉を失った、もちろん良い意味で
目の前に広がるわ黄金に近い光を輝かせる太陽
その太陽がゆっくりと確実に昇っていく
太陽が全体の3分の1が姿が表した時、石月は走って行って太陽の方を向く。
太陽と石月は重なり、石月は影により少し暗くなる。
大きく両手を開き、満面な笑顔をして。
「わぁ~~すっごい!!ねぇ、すごいよ浅村君!!」
「あぁ凄いなぁ、何処の世界も日の出は素晴らしいもんだな」
歩いてテラスの柵に両腕を重ねて置く。
眩い光に目を閉じつつ、俺はその美しい光景を石月と二人で堪能する一時を味わっていると
「浅村君、散歩にいきませんか?」
「散歩?別にいいけど、急にだな、どうした?」
「い、いえ、ただ散歩とかしたら気持ちいいかな~と思いまして、いいなら行きましょう♪」
石月は俺の手を握って、俺を引っ張るようにしてギルドをでようとしたが、いちいちギルドに戻るのがめんどくさかった俺は逆に石月を引っ張った。
「ひゃっ」
石月を引き寄せると、ひょいっと石月の体をお姫さまだっこをするように抱え上げて、柵を飛び越えた。
まあつまりはテラスから飛び降りたのだ。
風を着地時に一気に足元に集め、クッション代わりにさせた。
「こっちの方が早くて楽だな」
「怖かったですけどね……」
胸に手を当てる石月、まあいきなりは確かに悪かった。
「でもまあ浅村君を信頼してますから」
「お褒めいただき光栄でございます」
石月を降ろした後、右腕を腹に持っていき、左足を引きながら礼をした。
朝一に歩くネシアの光景はいつも歩く光景とは変わっていた。
ネシアには露店商チックな店が多いため、せっせと店の準備をする姿が多く見られた。
「なんだか朝のネシアって新鮮に感じますね、いつもと違うって言うかなんというか」
「わかる、言葉でなんて表したらいいかわからないけど、新鮮だよな……あ、そうだ石月ちょっと来て」
方向を右に変え、くいくいっと手招きをした俺は石月を歩く方向に呼ぶ。
そのまま進むこと10分、ある青果店に着いた。
雰囲気などは他の露店と全く変わらないが、ここの店は少し違って、あるものを置いているのだ。
すでに準備が終わってる露天に二人で近づいて俺は店の主人に注文をした。
「おじちゃん、チルタリ二つ頂戴♪」
そう言うと店の主人の顔が一瞬いぶかしげな表情に変わるが、すぐにその表情は和らいだものになる
「ふ、通だね兄ちゃん、チルタリフルーツを置いてあるなんて、ハーツさんしか知らないはずなんだけどな……まあいい、ほら持っていきな……ってカットしなきゃな?」
へへっとわらった主人は、店の下から凄く丁寧に手入れされたナイフが出てきたが、俺はそれを片手で静止する
「大丈夫ですよ、素手でいけますから♪」
ニカッと笑ってチルタリを片手で持って風刃で上から3㎝程を切る。
「ほお、兄ちゃん驚いたな、チルタリフルーツを知ってるだけじゃなくて、口振りや、やり口までハーツさんにそっくりだな……懐かしいぜ………気に入ったぜ兄ちゃん、お代はいらねぇ、持ってきな!!」
「え、いいの!!」
「ああ、構わない、久しぶりにいいもん見れたしな」
「ありがとう、おじさん」
もらったチルタリフルーツの片方を風刃で切り、ついでにもらったストローを差し込んで石月に渡す。
「ありがとう♪」
ストローをくわえ、チューッと吸うとチルタリフルーツから果汁が吸い上がってくる。
石月はそれを飲むと同時に顔が笑みに変わる
「うわあ♪これすっごく美味しいです♪」
「おっ♪そりゃ良かった、どれどれ……っ!?」
吸い上げた果汁は冷たくて朝一の俺達にはちょうどよい
味はかなり甘いが、すっきりしていて、喉にひっかかることはない、味的にはライチに非常に似ている。
「朝からいいもん飲めたよ、ありがとう、おじちゃん」
「おう、気にすんな♪それより彼女を大事にしろよ」
ボン!!
「か、彼女///」
どうやら爆発音の正体は石月だったようだ。
まあ、せっかくだし乗ってみるか。
「あはは、そう見えます~よく言われるんですよーあはは」
そう言ってその場をあとにした、俺だがそれが失敗だとは気づいていなかった。
それに気づいたのは後になり、さらに途中で事件に巻き込まれることなんて知らずに。
石月と歩いて帰ってる途中だった。
「…………」
「……あ、あの………」
「うん?どうかした?」
「あ、いえ何でもないです……」
青果店を離れた後、石月は何度も俺に声にかけるが、すぐにやめてしまう。
一回目ならまだしもいいが何回もくるなら正直うっとおしい、つい俺は強い口調で
「石月……言いたいことがあるなら言えよ、言わなきゃ伝わらないことだってたくさんあるんだぜ」
「う………」
少し言葉にに詰まった石月は、ピタッと立ち止まり、何か決めた。
「浅村君!!」
いきなりの大声に俺はたじろぎ、黙ってしまう。
「あの……その……あれはどういう意味だったんですか?」
「あれって?」
首を斜めに傾け、分からないと合図を送る。
「さっき果物屋で言ってたあれです」
自分の頭を少し回想させる。
うーん………あれか!?
まさかあれなのか!!
「あれはまあ、あれだ……」
「あれとは何ですか!!浅村君!!」
いつもの石月からは感じられないほどの圧力で、こちらにぐいっと押し寄せる
かなり迫られたせいか、石月との距離はもうないというか、顔以外は微かに触れている。
(石月、近ぇ……)
「……まあ………っ!」
石月を片腕で庇い、俺は天つ風で何かを弾いた。
カランと地面に落ちたのは数本のナイフ
完璧に二人を狙ったものだ。
「こそこそすんな!出てこいよ!!」
俺が叫んだ方向からの路地裏からは、同じ仮面被った数人が出てくる。
手にはかぎづめのような切れ味抜群そうな物が全員についていた。
「あ、浅村くん何なんですか?」
「さあ味方じゃあないだろうな、石月お前はおじさんを連れてここから離れろ、庇って戦うほど余裕は無さそうだ」
数人だったはずがいつのまにか路地裏からまた数人と出てきて、人数がかなり多くなっていた。
さすがに察した石月も俺に従い、おじさんとともに走って逃げていった。
それを確認した俺はほっと一息吐いて、天つ風を構え直した。
「さあいつでもいいぜ来な!!」
カシャリと構えたかぎづめを、前後を挟んでタイミングをずらして襲いかかる
さらに沸いたのは地上だけではなく、上から真っ先にナイフをとんでもない数を投げ、前後に合わせて上から攻撃を加える。
ナイフを避け、かぎづめの攻撃を天つ風でそらしながら攻撃に移りたいのだが、隙がない波状攻撃に防戦一方になる。
それを見てか、まだ攻撃に加わってない敵が、隙間に爆竹を投げてナイフを投げながら迫って来る。
「くっそ!!コイツらうっとおしい!!手練れだし!!」
かぎづめと飛び道具に気を使ってたせいか、路地から飛んできた敵にドロップキックを浴び、チルタリを売っていた露店商に突っ込む。
なだれ込むフルーツを振り払うが、払った時にはかぎづめが目の前にあり、とっさに防いだ天つ風で防ぐが、かぎづめに天つ風を噛み合わされ、上に高く弾き飛ばされた。
「しまった!!」
敵は好機を見逃すはずもなく、かぎづめを心臓めがけるが
その攻撃は空をきった。
それもそのはず露店商にいたはずの俺は5mほど、移動したところにいたからだ。
「大丈夫か?」
「あ、アスタ!!な、何で!!」
「外を歩いてたら石月さんに会ってな」
教えられたというわけか、石月には後でお礼をしとかなきゃな。
「なるほど、まあ助かったよありが……うお!!」
感謝の言葉を言い終わる前に投げられたナイフをかわす
「取り合えず礼を言うのはコイツらを倒した後だな」
「みたいだな」
俺は風で天つ風を戻してからアスタとともに敵に向かって走り出した。