二十話 落ち着き
ここギルド、飛脚の翼の客室に今二人の人が眠っている。
一人はマスターと呼ばれる人、そしてもう一人が
このネシアを治める王家の娘だ
何があったかは知らないが、昨日の晩ボサボサになっていた長く澄んだ白い髪の毛も一かき櫛を通せば、真っ直ぐツヤのある奇麗な髪の毛になっていた。
見覚えのあるツヤのある髪の毛
澄んだ奇麗な黒い目
整った顔のパーツ
全てが見覚えのある目の前の少女
その少女はすやすやと眠っている
そっと手を伸ばし、少女の頭を優しく撫でる
「凛……」
きっとこの子は凛ではないだろうし、俺が知っている凛の記憶を持ち合わせてもない
昨日はあんなにも取り乱してしまったが、ちゃんとわかってはいた。
この子が凛ではなく、ただ俺が凛の面影を押し付けただけなのだ
凛に似ているだけで、凛ではない
どこか切なく、どこか儚いこの想い、この気持ち
そんなどうすることもできない感情に得ればただただ少女の頭を撫で続けていた。
すると
「ん………」
反対側で寝ていたマスターが目を覚ました。
俺は撫で続けていたのを止め、すぐさまマスターの方に駆け寄り声をかける
「おい大丈夫か、気がついたのか?」
「あれ、私は確か………」
目を開けて状況判断をするが、あまり頭が追いついてない様子だったので、俺は変わりに、そして簡潔に言った
「俺にボウガンをつきつけた後、ぶっ倒れちまったんだよ」
「そうですか……私そんなことを…………っ!!そうです、あの子は、ぶ、無事ですか!!」
いきなり飛び起きたマスター
今マスターが言ったあの子とは間違いなく王家の娘だろう
そしてその娘は俺の後ろでぐっすりと眠っていた。
「無事だよ、少し擦り傷があるけど、アンタに比べたら問題なかろうし、あんな傷で死んだら、ネシアは墓場だらけだ」
俺が様態を言うと、マスターはホッとした様子になった
「ところで何があったのさ、こんなに傷だらけになってさ」
「……………」
「別に話せては言わねぇよ、ただ話さなきゃこっちも対応のしようがないのは覚えててくれ」
じゃあな、と一言いってから俺は部屋から出て、ドアに背を向けるようにしてドアを閉じる
そして下の床に向かって一度深く息を吐いてから
「………似すぎだろ」
と、届きも、分かりも、聞こえぬ声を床にはいた。