十二話 報告
携帯の不具合でなかなか繋がりませんでしたf(^ー^;
「――ロスト化したのを元に戻しました」
渇れた声が部屋で後ろ向きに座っている男に向けられる。
灯りがつかない暗闇の部屋で男は何も答えずに、黙ったままだ。
暗闇の部屋にぴったりの沈黙を被ったように黙りこんでいる
しかしそんな男を気にした様子もなく続ける
「その男の名は浅村 秀、コアランク不明、魔道具名不明、能力は刀+目に見えないほどの速度で動く(仮)飛脚の翼の新加入者ですね、報告は以上です……では」
「待てスネイク……」
椅子を後ろ向きに座っていた男が枯れた声で喋る
枯れた声は力が感じられないが、どことなくだが威圧感がある
スネイクと呼ばれた男は手にかけていたドアノブから手を離し、男の方を向く
男は依然後ろを向いたまま一言スネイクに命じた
「了解しました、このアルバール・スネイクにお任せください」
スネイクはそう言って、一礼すると部屋から出ていった。
ドアが完全に閉まる音がすると
「ふふふ、めずらしいわねキルジが他人に興味を持つなんて」
「ふ、お前も一緒だろ、とにかくこれから面白くなる、とくに浅村 秀を中心にな」
ロストの異常発生の日より3日後、俺はいつも通り飛脚の翼で過ごしていた。
ロスト化したのを元に戻したことにあまり触れずに3日が過ぎた。
あまり触れられないことにビックリしていたが、おそらくセシリアさんがいろいろとしてくれたのだろう、本当にありがたい。
ちなみに異常発生したロストの方だが、ネシアの全ギルドの総出の結果、なんとか殲滅することができた。
謎のロストの異常発生によるネシア襲撃事件
多くの人が犠牲になったこの事件で、一つ大きな謎が残っていた。
それはネシアの城から王家の娘とマスターの失踪
この事件をきっかけに、二人は忽然と姿を消したのだ。
今もまだ失踪は続いている、3日経つ現在は、城の兵士で捜索をおこなっているが成果はまったく上がっていない。
そのせいか、マスターのギルドはかなりの混乱に陥っている。
「はぁ〜〜〜」
深くため息を吐いたのは西脇
テラスで一人、ぼーっと街を見ていた。
(凛って誰だろ?)
浅村君が部屋で叫んだ時に確かに聞こえてきた凛という名前
石月さんでも新藤さんでもなく、そして私でもない名前
男の子か女の子も分からないがはずなのに、凛という名前が聞こえてきた時、胸がチクリとしたので私は確信しました。
ただの勘といったら堪になるんですが、女の勘をなめてもらったら困ります、あまり当たったことはないんですがね
とにもかくにも浅村君が言った凛という名前は女の子なんです
でも肝心な関係が分からないのです、もやもやが残る嫌な感じ
親戚なのか、昔の友達なのか、それとも……恋人なのでしょうか?
いや、恋人なんてありえない、あの朴念仁代表の浅村 秀が恋人なんて……
よそう、考えれば考えるほど悪い方向に考えてしまう。
とりあえず今考えたことは忘れよう、それにもうすぐ昼食だし、手伝いに戻ろう
「よお西脇、何黄昏てんだ」
「っ!!!!あ、浅村君!?」
「そんなに驚いてどうした?」
「あ、いえ、別に、あはははは」
いきなり現れた浅村君にしどろもどろになってしまう。
何でこうタイミングが良いような悪いような時に出てくるんですか!
と心の中で言うものの、内心は素直に嬉しい
「気にしないでください、少しぼーっと外を眺めてたんですよ」
嘘をついた、聞きたいという気持ちがあったけど、聞くに聞けなかった。
のだが……
「ふーん、てっきり何か思い悩むことがあったのかなと思ったよ」
「っ!!」
「ん?ははぁん、図星ってとこだな」
「そ、そんなことないよ」
「そんな震えた声じゃ、説得力ねぇな」
確かに彼の言う通りだ、確かに私の声は震えていた。
「まあ、悩むのは悪かないけど、しんどくなったら相談にのってあげるからさ」
その時、浅村君は軽い冗談のつもりで言ったつもりのはずだが、私はその言葉を真摯に受け取った。
「…………もらいます」
「ん?」
「だったら、相談にのってもらおうじゃないですか!」
「に、西脇、どうしたんだよ、何かやけになってないか?」
浅村君の言う通りやけだ、でもここまで言ったら私はいくしかないのだ
少しおどける浅村を気にすることもなく、私は言葉をぶつけた。
「凛って誰なんですか?」
「…………」