十一話 疾走の果てに
男性を庇いながら飛脚の翼に向かう中、ロストは俺と男性を見逃してはくれず、あらゆる方向から襲いかかってくる
(右足…左わき腹…頭部)
利き目で瞬時にコアの位置を見極め、天つ風で切り裂いたり貫いて破壊する。
最小限の動きでロスト倒し、続々と現れるロストを倒す行動に移していく。
一体いくつのロストを倒したのか分からないくらいロストを倒していき、やっとのことで俺と男性は飛脚の翼に着いた。
「ただいま!!みんな無事か!!」
叩きつけるようにドアを開けた。
「あ、浅村君!!無事だったね」
「石月、皆無事か?」
「うん、ソフィアとアスタはロスト討伐に行ってるけど、北合組は全員いるよ」
「そうか、セシリアさんいるかな?」
「あら、呼んだかしら」
ちょうど階段から降りてくるセシリアさん、本当にタイミングがいい
「良かった、この人の保護お願いします」
連れてきた、男性をセシリアの保護を頼む
「保護って誰を?」
「誰をってこの人………あれ?」
ついさっきまで一緒にいたはずの男性がそこにはいなくなっていた。
連れてきたはずの男性はそこにはいなかった
「あれ?さっきまで一緒だったのに」
玄関にいるのかなと思った俺は玄関のドアを開けた
「ウオォォォ…」
(ロストか!!)
腕のなぎ払い攻撃をしゃがんでかわす
そして利き目を使ってコアの位置を調べる
(さあて……どこだ…………あれ?)
ロストのコアの位置を調べたのだが、途中俺は気づいてしまった
<どうしたの秀?>
「コイツ………コアがない!」
<う、嘘でしょ!?>
「それにコイツ………このロスト……」
<ロストがどうかしたの?>
「………俺が保護した人だ!!」
体は完全にロストなのだが、体には俺が保護した人の服の切れ端が所々に付いていて、保護した男性と俺に判別させた
「もう意味わかんねぇよ………連頼んだ」
「任せろ、凍りつけぇ!!」
俺の声に素早く反応した連はロスト?の下半身を凍り付けにし床と接着し、身動きがとれない状態にした。
そんなロスト?を見て俺達はただ呆然としていた。
ロストならば良かったもののこの場合はそう上手くいかない
「セシリアさん、このロストって、もしかしてなんですが」
「あなたが保護した人を見てないから分からないけど、そう見ていいわね……」
俺が全部言い終前にセシリアさんは低いトーンで説明してくれた。
「人がロストになることがあるんですか?」
「あるわ、人がロストになることを言うわ、主にロストからの攻撃で怪我した場合にその傷口からあるウイルスが入るの」
あきらかに立ち込めていた空気が一気に冷えるのが分かる
「ルーズウイルス、通称Rウイルスよ」
「Rウイルス……」
「ロストからRウイルス貰うと、たとえ生き残ったとしても次期にロスト化してしまうことがあるの可能性で言うと、1〜2%ほどだけどね」
その1〜2%が今の状況に当てはまるということか
しかし、せっかく生き残ったのに、ロスト化してしまうなんて
「利き目を使ったのにコアが見つからないんです、この場合どうすればいいんですか、いやどうすれば助けられますか」
なんとしても救いたい、そう強く願う俺だが、セシリアはそんな俺に冷たい口調で言った
「殺すしかないわ、その人を救うにわ」
「そ、そんな、何か方法はないんですか?」
「ないわ、ロスト化の何が怖いのか、それは人間だからなのよ、通常のロストとは違いコアがないこと、別に関係はないけど、殺さないかぎりその人は成仏できないわ、それに」
セシリアさんは声のトーンを変えることなく続けながら、棚から紐でくくられた札とダーツの矢を取り出した
「ここで、殺さなきゃ、他の人が傷つくわ」
取り出したダーツの矢に札をくるくると巻き付け、ロストに向け振りかぶる
その時
《助けて………》
「っ!!!!」
セシリアさんが投げた矢はロストに当たることなく、後ろの壁に刺さった。
いや当たることなくではなく、好意的にそらされたのだ……風によって
「何のつもりかしら浅村君」
「10分、いや五分でいい、俺とセシリアさんの二人っきりにしてくれ、この部屋で頼む」
俺が頭を深々と下げると、セシリアさん以外の皆は部屋を後にした
「浅村君、何をするつもりなのかしら、それと何で矢をそらしたの?」
再び矢に札をくるくると巻き付け始めるセシリアさん
返答次第ではすぐに矢を放つつもりのようだ
「ロスト……いやあの人が助けてって言ったんだよ」
「へ?」
「確かに聞こえたんだよ、助けてくれって、だから俺はそれに応えたいんだ」
「百歩譲って聞こえたとしても、どうやって助けるっていうの」
「それは……」
「あなたには悪いけど、ロスト化したのを倒す方法なんて聞いたことないし、おそらく存在しないわ」
助けるすべがないとの絶望の一言
セシリアさんの言葉は俺を絶望の淵まで突き落とした。
脱力したように、椅子に座る俺を見たセシリアさん
「もういいわね……」
「……………」
俺は何も答えない、いや何も答えられない
俺は何もできることもなくただただ下を向いて目を閉じた
“あきらめないで………”
「っ!!!!」
いきなり声が聞こえてくる、いや頭の中に入ってくる感覚だ
“まだ助ける方法はあるよ”
「助ける……方法」
「浅村君、悪いけどもう終わりよ」
セシリアさんは矢をロストに投げた
「風よ!!」
セシリアさんはが投げた矢を俺はまたもや風で吹き飛ばした。
「あきらめなさい、助ける方法なんて……」
「あるさ」
セシリアさんが言い終わる前に俺は言った。
俺は椅子から立ち上がり、うつむいていた顔を上げる
さっきまで絶望の淵まで叩き落とされた顔ではなく、にこやかにはにかんだ顔で
「助ける方法はあるさ」
“どんなに”
「どんなに」
“危機的な状況でも”
「危機的な状況でも」
“「助けれる!!」”
俺は天つ風を構え床に固定されたロストにゆっくりとに近づく
そして魔力を集中させていく、浄化の風のように
「何をするつもり?」
《やめてくれ……殺さないでくれ》
「大丈夫、安心してください、必ず助けます、だからあなたも信じてください」
「あなた……まさかロストの声が聞こえるの!?」
俺は天つ風を両手持ちし、天つ風を振り上げた叫んだ
「行っくぞぉぉぉ凛!!」
俺が叫んだのはシルフィーではなく、一人の少女の名前を
天つ風を一気に降り下ろし、ロストの皮一枚を切るような繊細さで切った
「グオォォおおお……」
皮一枚を切られたロストは切り開かれたように開き
その中から、男性が倒れ込むように出てき、俺は床に落ちないように腕で受け止めた
そしてその光景をセシリアは信じられないような目で見ていた。