第四章一話 離れ離れ
第四章スタート(^_^)/
「う、うーん」
眩い光に包まれて、目を閉じていた俺が目を開けたのは、家のリビングではなかった。
異世界へと来たのだから、当たり前といったら当たり前だが、これだけはたとえ何度やったってなれないだろう
「何処だここ?」
辺り一面が機材だらけで、部屋には表現できないインチのテレビが壁にはめ込まれている
言葉で表現するなら、漫画などによく出てくるラボみたいな所
しかし、ラボ内の辺りを見渡しても人一人見当たらない
つまりは、仲間の5人もいないのである
初めて異世界へと行ったときは6人全員が揃っていたから、自然と行動出来たものの、今度は俺一人ときたか……
ため息を一つ吐いてから、とりあえずは部屋を出て、広めの通路に出た。
通路の壁も床もラボと鉄のような素材で出来ていて、戦艦の中にいるような感じがする。
まずは仲間集めから始めることにした俺は、通路を歩き始める。
歩き続ける途中でいくつかの部屋を見つけるが、俺は目も暮れずに歩く。
できるだけデカイ部屋を目指し、他の人達を待ってみるとするか
歩くこと10分、さすがの俺でも違和感に気づいていた。
「なぁ、シルフィーおかしいと思わないか?」
〈うん、人がまったくいないよね〉
「これだけまっぴらに歩いてるのに誰もいないなんておかしすぎる」
〈ここが何かはわからないけど、休みとか?〉
「ラボ内の機材には電源が入ってたし、俺らが歩いてきた道は電気が点いてるだろ」
上を指差し、シルフィーに示そうと俺も上を向いた
「ん?……………」
〈へ……………〉
俺が示した先には生物とは言い難い形をしていた。
ただの肉片の塊、バイオ◯ザードに出てきそうな生き物?がいた。
それが天井にへばりついていて、それが奇声を上げて襲いかかる。
「おわっと!!」
バックステップで距離をとって肉片の襲撃をかわす
そして迎え撃つため腰から木刀を取ろうとしたのだが
(しまった、木刀がない!!)
またバックステップでかわした俺は、天つ風なしで戦うことになる。
しかし天つ風がないと言っても、死闘を何度も繰り広げて来ただけに、飛びかかってくるだけの相手の攻撃など簡単にかわせる。
「ウインドエッジ!!」
放ったウインドエッジは肉片の腹部とふくらはぎに直撃した。
しかし、したはしたものの、肉片の塊は止まることなく、進み続ける
「こいつ!!」
〈秀、この肉片の塊、生きてないよ〉
「何!?それなら話は早ぇな、風刃!!」
俺が放った風刃は、肉片の塊を真っ二つに切り裂いた
「ウォォォォォォ」
「うし、余裕だな♪」
上半身と下半身と肉片がボタボタと落ちる。
さすがに踏みたくはないと思い、肉片を飛び越えて再び歩き始めた時だった。
「ウォォ………ォォォ」
〈秀、こいつ…………〉
「さ、再生してやがる………」
真っ二つになった上半身と下半身、肉片自らが動き、そして元通りになった。
「悪いが、ゾンビにつき合ってる暇はねぇんだよ、韋駄天!!」
一気にトップスピードに乗ってあっという間にゾンビから離れて行ったが、行き着いた場所は行き止まりという最悪の場所だった。
「ウォォォォ………」
「仕方ねぇ、風刃で切り裂いてから逆方向に逃げるか」
風刃で構えて、ゾンビを待つ、曲がり角を曲がってきたら撃ち込んで逆方向に逃げる
何度も自分の頭の中で作戦を回す
そうしていると曲がり角から予想通りゾンビがやって来た………お仲間をたんまりと引き連れて
「おいおい、冗談だろ」
〈どうするの秀……〉
「まとめて吹き飛ばす!!」
幸いにもここは通路のため、通路の幅の風を起こせば避けることは不可能だ
「吹き飛べ!!」
俺が起こした風によりゾンビどもは後方に吹き飛んだ
だが、吹き飛んだだけであって、すぐに立ち上がってこちらに向かってくる。
〈何かしらで致死ダメージを与えなきゃ駄目みたいだね〉
「あまりエグいのは見たくなかったんだが、背にはらは変えられねぇか」
パンと両手を頭の上で重ね合わせる
魔力を両腕に集中させ、合わせた両腕を斜めに振り抜いた。
「断空刃!!」
振り抜いた両手から巨大な風刃を出し、通路にたむろっていたゾンビ達を全て真っ二つに切り裂いた。
「よし、じゃあ再生する前に行くか……韋駄天!!」
トップスピードでゾンビの山を越えた時
「っ!!!!」
ゾンビ死体の山の中の最後尾から手が伸び、俺の足を掴んだのだ
そしてあまりにも急なことに死体の山に引きづりこまれる
そして体全身に気持ち悪い感触に包みこまれる
「くっそー、風よ!!!」
風を発生させ、回りの気持ち悪い感触を吹き飛ばさせる。
ゾンビを吹き飛ばすのだが、吹き飛ばしきれなかったゾンビにまとわりつかれ、足を噛みつかれる
「ぐっ、この野郎ウインド……」
もはや、やり方など関係ない、ウインドエッジでゾンビの脳天をぶち抜こうとした。
しかし、振りかぶった腕を他のゾンビに取られ、ウインドエッジを放つことができない
風で吹き飛ばそうとしても、がっちり掴んだまま離そうとしない
まさになす術なしの状態、そしてすでに両肩をがっちりと掴み、ゾンビが大きな口を開けている
全力で抵抗するものの、全く動かない
(くそ、ここまでか……)
覚悟を決めて目を閉じた瞬間、一陣の風が過ぎ去った。
そして過ぎ去ったと同時に、俺の両肩を掴んでいた感触がなくなる。
さらには俺を掴んでいた体の至る所の感触もゾンビの悲鳴と共になくなっていった
「……………」
おそるおそる目を開けると、俺を掴んでいたゾンビはどこに行ったのか、分からないくらい消えてしまっていて
かわりに目の前にいるのは青色の髪の長い後ろ髪を後頭部らへんで櫛で折り畳んでいる少女だった。
そしてその少女の手には扇子が握られていた。
「き、君は………」
「ちっ、まだ生きていたか、風よ敵を貫け!!」
「マジかよ!?風よ!!」
目には目を、歯には歯を復讐法通り、風を風で打ち消す。
「そんな!?私の風が打ち消された、あんた何者よ!!」
「人間さ、少なくともゾンビではないさ」
「ゾンビ?ああロストのことね」
警戒レベルを下げたのか、構えていた扇子を閉じると、扇子がテレビの電源を切るように消える
「私の名前はソフィア・ハーツ、ソフィアって呼んで、あなたは?」
「俺は浅村 秀、呼び名なんざ何でも構わないよ、んでこっちが俺の相棒のシルフィー」
〈よろしく♪〉
「え、え!?ゆ、幽霊?」
ふわふわと浮いているのを見たら誰もがそう思うのだろう
理解はしずらいと思うが説明をいれるか
「あぁー、そのだな………シルフィーは精霊でな色々とサポートしてもらってんだ」
「精霊?」
ソフィアの顔が険しくなる
「まあ細かい所はいいじゃねぇか、とりあえず助けてくれてありがとう」
「どういたしまして、私は今から私の街に戻るけど、ついてくるわよね」
「お言葉に甘えさせていただくよ、拒否権はないみたいだし」
俺とソフィアは通路を進む
「そういやさ、ロストだっけ?あれは何なの?」
「あれねー正直まだ分かってないのよ」
「分かってない?」
「ロストが出現する場所も、目的も分からないことだらけなのよ」
両手を広げて言うソフィア
本当にロストのことを知らないのだろうか?
疑問点は多く残っているが深くはつっこまないようにする
しかし、ロストの疑問点はつっこまないが、別の点にはつっこむ
「ここは一体何処何だ?」
「あんた?ここが何処だがしらないで来たの?」
ソフィアがやったように両手を広げ、肩をすくめてみせる
これでやり過ごせるとは思ってはいないが、知らないものは知らない
「あんたってほんと不思議よね、まあ私の街に着くまである程度説明してあげるわ」
「おおサンキューな」