四十三話 終わりは悲しみと共に
一瞬の出来事だった。
七光聖剣を放ち、浅村に直撃する寸前まではよかった
しかし、当たる直前で浅村は消えていた。
さらに消えたという認識をしたころには七光聖剣は砕け、俺はコントロールを失い、地面に落ち、浅村は俺の真後ろにいた。
そして遅れてきてやってきた激痛と目眩に俺は踏ん張ることすらできずに、倒れてしまった。
「な、何が……お、起こったたんだ?」
激痛と目眩のせいか、上手く喋れない俺
そして
「ケホっ、ケホっ、ゴホっ!!」
グラウンドにド派手に吐血する浅村がいた。
〈秀、大丈夫?〉
「大丈夫、まだまだ戦えるさ、もういっちょ行くぞ」
〈でも絶空剣・一閃のスピードに体がついていってないよ〉
「けど、ヒロがこの技についていけないのも事実だぜ」
シルフィーの言ったことも俺の言ったことも事実、しかし今が好機、自分の体を労っている暇などない
現にヒロは立ってはいるが、目眩のせいか、体はふらついていた。
〈………わかった、でも死なないでよ〉
「当たり前だ、救ってもらった命だ、絶対に死にゃしねぇよ」
再び体の力を抜き、体を揺さぶり始める
全身の力を抜けるまではまだ時間がかかる中、ヒロの状態も回復している
「俺はお前と一緒で負けるわけにはいかない」
ヒロが右手を掲げると、再び七光聖剣が現れた
そして七光聖剣はヒロの手に握られた。
〈重くないのかなぁ〉
「……………」
シルフィーからの問いに俺は答えない
全身に力を抜いている今の俺にはシルフィーの声は届いていなかった
「さあ最後の勝負を始めようか、お互い体力は限界だろうしな」
〈ふんだ、あなたは絶空剣・一閃の前ではなすすべないじゃないの〉
「どうかな………ともかぎらないぜ」
七光聖剣を振り上げ、地面に叩きつけ、大量の土煙を巻き上げる。
俺がやったように
「おそらく絶空剣・一閃は直線的な動きを化け物染みたスピードで蹴散さる技だろ、なら対象の位置がわからなきゃどうしようもない、さらに、今の状況を見ると、後一回が限界だろうな」
〈くっ………あいつそこまで〉
「………………」
土煙に隠れるヒロ、目標を見失った
気配を消したヒロがどこにいるかわからない
〈秀、どうしよう!?〉
「悪いシルフィー、話しかけるな」
〈ご、ごめん〉
まだ体の力を抜ききっていない俺はシルフィーに黙るように促す
最優先はヒロを見つけることより絶空剣・一閃を出すために全身の力を抜くことだ
〈…………〉
「…………」
次の攻撃で勝負が決まる
何があっても次の攻撃を決める!!
そしてそのときが来た
背後から瞬時に現れ、瞬時に距離を詰めた
〈秀、後ろ!!〉
「わかってるぜ!!」
「なっ!!」
ヒロが驚いたことは突き立てた七光聖剣が俺のわきで挟まれていること
そしてなにより……全身を脱力していたはずの俺が瞬時に脱力をやめたからだ
そして体を一気に捻り七光聖剣を奪い取る
「しまった!?」
〈いっけぇぇ秀、ぶっ飛ばしちゃえ♪〉
「ああ、でもぶっ飛ばすのは……そこだぁ!!」
土煙を風で一気に吹き飛ばすと、ま反対の方向にもう一人ヒロがいた。
そして俺は脱力も何にもせずに、絶空剣・一閃を繰り出し、ヒロの土手っ腹に拳を叩き込んだ。
叩き込むと同時に背後から出てきたヒロと七光聖剣は霧の様に消えていった
「勝負ありだな……」
「な、何故………」
激しい衝撃の音の後に訪れた静寂にドサリとヒロが倒れる音が響いた
終わりを告げるブザーのように何度も何度も俺の耳に響いた
「ど、どうして絶空剣・一閃を……」
「ん、脱力してないことか?」
ヒロは首を縦に降る
「ああ、ありゃフェイクだ」
「ふぇ、フェイク?」
「体を揺らすことも、脱力することも全部フェイクだ、お前なら次にああするだろうと読んでな、霜月を使うこともな」
「何故そんなことをする必要がある、普通に絶空剣・一閃を出せばよかったじゃないか」
「なあに慎重にいっただけさ、そして結果がこれさ」
俺の言葉に、ヒロは口をあんぐりとさせていた
それから笑いが聞こえてくる
「くっくっくっ、まったく脱帽するな戦場における知識は」
「ほかの知識はからっきしだけどな」
「ふっ、まあなんにせよ俺は負けたんだな、煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
そう言ったヒロを俺は胸ぐらを掴み上げ、喉元に天つ風を突きつける
〈秀!!〉
「黙ってろ……」
天つ風を持った腕をゆっくりと引いていく
そして
ドカ!!
「ぐっ………」
思いっきりヒロの顔面をぶん殴った。
「死んで全てを終わらせようと思うなよ」
「…………」
下にうつむくヒロ、おそらく俺に殺されようとしたのだろうがそうはいかない
「お前のやったことは絶対に許されることじゃない、人の命をうばってんだからな」
「だったらなおさら死んで償わせてくれ」
再び胸ぐらをつかみあげ、俺は声を張り上げる
「ふざけんなよ!!楽な道を選んでんじゃねぇぞ、お前は生きてるんだ、生きてんだったら生きて償えよ!!」
「それは無理な話さ」
「何?」
ヒロは手から秋山達から取り出した種を4つ出した。
「何するつもりだ?」
「アビリティシードを取られた人は死んじまうさ、しかし取り出した種を割ればその人は命を取りもどす仕組みになってるんだ」
そう言ったヒロは4つの種を粉々に砕いた
砕かれた種は光の粒子のようになり、散り散りに飛んでいった
「これで秋山達もじきに目をさますだろ、能力を使ってた時の記憶はないだろうがな」
「生き返るんならこれ以上のことはないな」
「ああ、これでもう逝ける……」
「何ふざけたこと言ってんだ!!忘れたとは言わせねぇぞ!!お前の大切な家族の死をな!!」
「言ったろ………無理な話だと」
「だから、どういう意味なんだ」
「お前は償えと言ったが、悪いが俺は出来そうにない」
「家族の死から目ぇそらしてんじゃねぇぞ!!」
「無理だ……これからの償いの人生を沙耶香無しに過ごすなんて無理さ」
「お前………もしかして」
昔の話を聞いた時から思っていた。
攻撃した時や、躊躇なく種を取り出した時は、どこかしら思うところはあったが、今のヒロの言葉でようやく確信した
「妹さんのことが好きだったのか?妹してじゃなくて、一人の異性として」
「ふっ、今となってはなんの意味も持つまい」
軽く笑みを浮かべたヒロ、その顔に暖かな日の光が射し込む
「もう朝か……けっこう戦っていたんだな」
「ふ、それにしても、大分無茶苦茶にしてしまったな学校やグラウンドを」
「ま、まあな…………」
見るも無惨にボッロボロのグラウンド、とくに七光聖剣が刺さったところはひどい、全生徒が夜通しで掘った穴になっている
学校はほとんどの階の窓が割れ、壁のコンクリートは所々にヒビが走っている
この状況はおそらくどんな科学者でも説明は不可能だろう
「なあ浅村、一つ約束してくれないか?」
「内容によるかな」
「沙耶香をある場所に連れていって欲しい、その代わり、グラウンドと学校を修復してやる」
「おいおい、この惨劇会場を修復できるのか?」
「まあ任せとけよ、さあ約束をするか?」
深く考え込む俺、さっきまで、命のやりとりをしていた相手
さてどうしたものか……真也もまだ倒れてるしなぁ
「…………よし決めた」
すたすたと歩く俺は倒れている真也の体を思いっきり揺さぶった
「真也ぁー目を覚ましやがれ」
「う、うぅぅ酔う……」
「お!?目が覚めたか、よかったよかった」
「ん?秀………全部終わったのか」
「ああ、でも泉さんが………」
「秀、それ以上は言わなくていい……」
自分の口に人差し指を当てる
「ありがとな真也、起きたついでで悪いが石月と連の所に行ってくれないか?」
「お前は、今からどうするんだ?」
「約束を果たしてくる」
「あいもかわらずお前の言葉は分からねぇな………まあいい、行ってこいよ約束とやらを果たしてきな」
立ち上がった真也は、ゆっくりだが学校を出ていった。
「さあて、俺も行きますか」
「ああ、その前に修復をさせてもらうか」
ヒロは自分の額に手を当てた
すると、額から種が出てきた。
そしてその種をまた粉々に砕く
砕かれた種は、また光の粒子になり、学校全体に広がり、戦闘があったであろう爪痕が消えていった。
「す、すげぇ!!」
「さて連れていってもらおうか」
「一体、何処につれてけばいいんだ?」
「場所は……………だ」
「了解したが、お前はどうするつもりだ?」
「俺は………少し休ませてもらうよ」
「えっ!?ヒロもしかしてお前!」
俺の頭に死という文字がよぎる
「大丈夫だ、本当に休ませてもらうだけさ」
ぽんと肩に手をおいたヒロは俺に笑って見せた
「分かった、じゃあ行ってくるわ」
「ああ泉を頼んだぞ」
泉さんを背中に背負い、俺は指示された場所に向かって行った。
幸い魔力はまだ残っている、人の出入りが多くなる前には着きそうだ。
校庭の壁を飛び越え出来るだけ人気のない道に入った俺を見たヒロは壁にもたれ込んだ
「浅村の奴、帰ってきたら怒るだろうな…………」
正面から射し込む暖かな日差しが眩しい
そんな眩しい朝日を目を細目ながらも見つめる
「ああ、朝日ってこんなに暖かかったんだな」
細目ながら見ていた目をゆっくりと目を閉じる
そして深く深呼吸をしてから呟いた
「すまない浅村、やっぱり俺は償うことは出来ない…………」