三十九話 ヒートアップ
男は持っていた片手のを高く高く放り投げた
「さあ、奏でようかカルテット!!」
落ちて来る種は男頭の中西吸収されていった
吸収されると同時に男の魔力が一個目同様爆発的に上がり、魔力だけではなく、男体自体にも変化が起きていた。
〈秀……あれ〉
「ああ、羽が生えてやがる」
男には左右四本づつの羽が生え、すぐに空中に飛ぶ
「ちっ、飛べるようになったか」
「今の状況は圧倒的に不利だ」
さっきの言葉をそっくりそのまま返された
根に持ってやがったなあのやろう
「睦月、鳴雷月、皐月」
上空から降る無数の球体と雷、そして二つに気をとられていると皐月が襲う
80%の秀のスピードにも対応していて、カルテット状態の睦月の球体は風でも逸らせなかった
しだいに睦月が降らせる球体の数もスピードも上がっていて、鳴雷月の雷も数増えていた。
それを避けていたら、最悪のタイミングで皐月がくるからたまったもんじゃない
「ほらほら、どうした避けるだけじゃ勝てないぞ!!」
(くっそ、攻撃が適格すぎるし手数が多い、こうなったら……)
地面をおもっきり蹴り、バックステップでコンマ一秒の時間で風を足に集中させ、一気に上空に飛んだ
「飛べるのがお前だけだと思うなよ」
「やるな、次は空中戦ときたか」
校庭に浮かぶ二人、もはや人を越えた戦い
空中でぶつかり合う二人、しかし戦局は徐々に秀がおされていた。
理由は簡単で攻撃を弾けなくなった今は、体に傷が増えていく。
睦月をベースとした大剣に如月のスピードの戦法に圧倒される秀
睦月のような大剣の重量感がある攻撃は破壊力抜群で外傷だけではなく内側にもダメージが蓄積されていく
「勝負あったな」
「まだまだぁ!!」
手刀を振るが、剣でガードされ、下からの蹴りに顎を蹴られ、体を捻った帯電後ろ回し蹴りを脇腹にもらう
「があぁぁ!!」
完全に攻撃を受けた秀は、ふらふらとそのまま地面に落ちてしまい、地面に体を強く叩きつける
(マズイ……そろそろ魔力が尽きる、同調率も低下してきてる)
魔力の残量が残り少ないうえに、長期戦に向いていない同調、今の同調率は80%から60%に低下していた
完全な劣勢状態に次にどう動くかを考えるが、考えすぎるがゆえに、男の睦月が放った球体に気付いていなかった。
〈秀!!〉
(しまっ………)
思ったことを口にすることもなく、無情にも秀のいた場所に無数の球体が降り注ぐ
人の原型をとどめさせないかのような無慈悲な攻撃だった
「………あれ?生きてる」
完全にやられたと思った秀だったが、目を閉じていた間に場所を移動していた
(たしか目を閉じた瞬間、強い衝撃が………ていうかなんだろう胸が重い)
仰向け状態の秀が、顔を上げると、そこには秀の家で寝てるはずの泉さんがいた
「い、泉さん、何でここに!?」
「そんなの浅村君を助けに決まってるじゃないですか」
〈ちょっと秀、上!!〉
「ちっ、シンキングタイムぐらいくれよな!!」
泉さんを抱えた状態で、風を発生させ、その場所から移動する
「泉さん、危ないから下がってて」
「浅村君の治療が終わってからです」
初めて秋山と戦った時のように、体全身の治療のため、抱きつく泉さん
相も変わらずいろいろと恥ずかしい
抱きつくとすぐに全身の痛みが緩和され、傷もみるみるうちに塞がっていった。
「ありがと泉さん、じゃあ行ってくるよ」
「戦う前に、ちょっといいですか」
ずいっと前に出る泉さん、男に何かしら言いたいことがあるようだ
「もうこんなことはヤメテ下さい」
「ちょ、泉さん、そんなことでヤメルならせわないよ」
秀の言葉に耳をかさずに泉さんは続ける………衝撃的な言葉を含めて
「もうこんなことはヤメテ下さい……兄さん」