三十八話 同調
「シンクロナイズ……」
「憑依戦闘は精霊に100%体の操作を任せるんだが、シンクロナイズは自分の肉体に精霊を同調させ、極限まで感覚を研ぎ澄まさせるのさ、いわば第6感ってやつかな、さらには魔力消費量が今までの四分の一にまでカットされるのさ」
「何故そのような技を出さなかったんだ?」
「切り札はとっておくもんだろ」
ニヤリと笑みを浮かべた秀は男に向かって駆け出す
「戦闘手段は変わらないようだな、吹っ飛べ皐月!!」
鞭のようにしなって襲ってくる皐月に、秀は左腕で皐月を払うように腕を動かそうとする
「バカめ、左腕はもらったぁ!!」
誰もが秀の左腕が切れたと思った瞬間だが、男の皐月は弾かれていた。
「何だと!?」
弾かれたことに驚きを隠しきれない男にここぞとばかりに秀は風刃を飛ばしまくるが、ギリギリの所で如月でかわす
「ちっ、チャンスだったんだがな」
(どうなってるんだ?今のは弾かれたと言うより、腕に触れられなかったぞ)
気持ちが悪い男は、弾かれた秀の腕を凝視する
ところが腕どころか秀の体にすら変化はなかった
「まだ同調率は40%ってとこか」
(まだ40%か………)
皐月を軽く弾きとばした力が40%ってことはまだ60%残っているということ
それが男にとっては怖いのだ、だからこそ男は今の内に決めておく方がいいのだ。
「如月、葉月」
〈秀!!〉
「分かってる、決めに来てる、シルフィー同調率を高めるぞ」
〈うん、いくよ秀!!〉
「〈おおぉぉぉ!!〉」
「鳳凰紅蓮剣」
旋風刃を突き破った炎を剣に纏わせた突進だが、今回の突進は男自体に炎を纏っていた。
秀の腹めがけて突進してくる男に対して、秀は左腕を右の脇腹に沿えているだけだった
「なめるなぁ!!」
秀の防御の姿勢に腹を立てる男は渾身の力を込めた突きを繰り出した
がしかし、その突きは見事に秀の横を通り抜けた………左腕に沿っていくように
出来た隙を秀も見逃さずに、右手を男に向かって振ると、当たっていないはずの男の攻撃が男を切り裂いた
「ぐあぁ!!」
「よーし、シルフィーこのまま押しきるぞ!!」
〈うん!!〉
「くっ、睦月、如月、皐月、鳴雷月、葉月!!」
「効かねぇよ♪」
合わせれる限りの力を合わせた剣の攻撃は校庭の地面をえぐり、土煙を巻き上げ、学校にも少なからずの被害を与えていく中、秀だけが無傷であった。
「てめぇ、これ直すのにどれほどの時間がかかると思ってんだよ!!」
「お前を倒すことに校庭を心配する必要はない、必要なのは力だ!!」
そう言った男はまた種二つの内の一つを呑み込んだ
「また魔力が上がりやがった」
一個目を呑み込んだ時とは魔力の上がり方が少なかったが、上がり方を見たら十分異常な上がり方だ
「如月、疾風迅雷!!」
如月のスピード+疾風迅雷でさらにスピードは天つ風・重のスピードを越えており、目では追えないほどだった
「シルフィー60%から80%に上げるぞ……」
〈ちょっと秀、80%何かに上げたりなんかしたら、秀の体が!!〉
「上げなきゃ、殺られちまうだろ」
〈ダメ……やっぱりできないよ〉
「突っ立ってる隙あるのかぁ、雷電掌波!!」
「ぐあぁ!!」
「どうやら雷はダメージを受けるらしいな」
突破口を見つけた男は攻撃を雷主体の攻撃に変えた
如月と鳴雷月と奥山の能力を駆使することで、だんだんと秀を追い込んでいく。
「くっ、シルフィー同調率を上げるぞ!!」
〈ダメよ、80%も上げたりしたら秀の体がもたないよ!!〉
「早くしろ!!このままじゃやられちまう!!」
〈秀の体が先にやられちゃうよ〉
「大丈夫さ……」
さっきまで荒げていた声を出していた秀はとても静かな声を出していた
〈どうしてそんなこと言えるの……〉
「そんなもん、俺だからだよ」
なんの根拠もない秀の言葉だが、シルフィーには信じられる言葉だった
“俺だから”それだけで信じられる二人の仲、ほんとうにいいコンビなのだ
〈そうだね、秀はいつもそうだったね、いくよ秀!!〉
「〈おおぉぉぉ!!〉」
「ぬあぁぁ!!」
同調率を60%から80%に上げた秀とシルフィーの気のようなものに吹き飛ばされた
「何だ!?あのアイツから溢れ出る気のようなものは!!」
「〈うああぁぁぁ!!〉」
「睦月!!」
出方を見るしかない男は睦月で、球体を秀に落とすが、すべての球体は秀に当たらず、全て軌道が逸れて地面に落ちた。
(また軌道が逸らされたか…………まさか!?)
男が何かに気付くと同時に、秀は地を強く蹴ると、男の視界から消えていた。
「何!?あの精霊、スピードは上がらねぇって言ってたくせに………」
消えた秀に警戒した男は卯月を発動し、攻撃がいつきてもいいように、身構えている。
(さあ、どこから来る………後、横、上か?)
消えたことによる不安により辺りを見渡す男の視界に秀が入ったのは真正面だった。
「っ!?」
真正面から来ると思わなかったのか、反応が一瞬遅れてしまい、見えない斬撃を受けた男は後ろにたじろく
「厄介だな、その同調状態は、内側から吹き出てる風のせいでこちらの攻撃が効かない」
「へぇー気付いたんだな、風に」
「見えない斬撃を受けた時にもしやと思ったんだが、睦月の球体の軌道が逸れた瞬間に気付いたよ、お前の体には内側から外側に風が吹いているってな、攻撃が逸れたところを見ると、風の方向を変えられるし、切られたのは風の刃を腕に纏ってるのだろう」
「……………」
たった数回のアクションでこれほどを見抜くとは、侮れない男だ
「黙りということは当たりと見て間違いないな」
「さすがっていったところかな、でも忘れるなよ、今の状況は圧倒的に不利だぜ」
「やれやれ、それはちゃんと結果を見てから言うんだな」
男は最後の種を取り出した。
「また魔力UPか……」
どこか呆れた口調でいう秀だが、男は種を違う目的使用するようだ
「お前の精霊契約に同調のような隠し能力があるように、俺にも力があるんだよ」
(同調は別に隠し能力なんかじゃないんだけどな)
などと頭で考えつつも、男は続ける
「アビリティシードには隠しコマンドみたいなもんがあるんだよ」
「種一つがソロ、二つがデュオ、三つがトリオ、今から呑む種で四つがカルテット」
(音楽かいな!!)
軽くツッコミを入れるものも、男には届くはずがない
カルテットで少しとまってから、最後の言葉を口にした
「五つがゴッドだ!!」
「……………」
少し間を置いてから、秀は大きく息を吸い込んだ
「音楽関係ねぇじゃねぇか!!それにカルテットときたら普通次はクインテットだろ」
とうとう我慢がならなく突っ込んでしまった。
かなりの大声で
「そうでもないさ、音楽にはいろいろ種類がある感情や思想を表現したりすることができるし、神に捧げたりな」
「神に………捧げる」
「しかしまあ神に捧げる何てなかなかできないんだ」
「なんで!?」
「アビリティシードは五つまでしか使えないんだ、そして開花するにはそれなりに適性ってのがあるんだ」
秀は口を挟まず黙って男の話を聞くことにした
「アビリティシードを開花する人としない人がいるんだ、その人間を探すのにどれほどかかったことか…………五年だぞ、五年」
(種の適性の人間が五人とも北合に………偶然か?)
「っつーことで今度は同調率80%対カルテットだ!!」
「いいぜ……来な!!」