三十七話 黒幕
ぐったりと倒れた二人
ピクリと動こうとしない
「てめぇ、二人に何をした!!」
「まあそうかっかするな、気絶してるだけだよ」
「気絶させたのは………お前か?」
自然と声に力が入り、声が震えていた
構えていた天つ風・重を再び強く握る、男の返答次第では今すぐにでも斬りかかりそうであった
そういう俺に対して男は何も変わらずにただ黙っていた
「…………」
「答えろ!!」
「ああ、邪魔だったから気絶しといてもらったよ」
「っ!!!!」
男の言葉を聞いた瞬間にその場所から俺はすでに消えていて、瞬時に男の後ろに移動していた
そして男の背後から天破散牙撃を打ち込むが、天破散牙撃が当たったのは男のマントで、男は瞬時にマントを捨てていた。
「くそっ!!どこだどこにいる!!」
肘に被ったマントを払い除けると男の姿はなかった。
「こっちだよ」
声がした方向をすぐさま振り向くと、そこにはまた黒いマントを着ている男と、その男に首根っこを掴まれ、宙につられている秋山がいた
「秋山!!てめぇ何してやがる!!」
「おやおや、君の敵である人をどうして心配するんだい?」
「そういうこと言ってんじゃねぇよ!!とにかくその手を離せよ」
「ふむ、まあいいだろう離してやるよ……しっかりと料金をもらってからだけどな!!」
(料金!?)
男は掴んでいた手を離し、秋山を一旦おろすが、男は間髪入れず掴んでいた方の手を秋山の頭にかざした
すると秋山は掴まれていた以上に苦しみ出した
顔や手には血管が浮き出ていて、もはや尋常じゃないことだった。
「があぁぁぁぁ!!」
「あ、秋山?」
今何が起こっているのかが全くわからなかったが、ただあの男が秋山に何かをしたかはわかる
「一体何が起こるんだ?」
「秀!!今すぐ男を止めるんだ!!」
「真也!!気がついたのか!!」
「俺のことはいいから早く止めろ!!早くしないと秋山が死ぬぞ!!」
「っ!!!!韋駄天!!」
すぐさま韋駄天で男近づき、絶空剣・剣舞を繰り出したが、秀が斬ったのは男のマントで、男と秋山はまた場所を移動していた。
(しゅ、瞬間移動しやがった……)
「うぐあぁぁぁぁ!!」
「そろそろだな」
苦しみのピークに達した秋山の口から卵一個分のサイズをしたしわくちゃの種の様な物が出てきた
そしてそれを男が掴むと同時に秋山は力尽きたように地球の重力に逆らわずに倒れた
「くそっ!!間に合わなかったか」
「真也、何があったのかを手短に話してくれ」
「ああ、実はな………」
真也が話すことには、戦いが終わってから俺の所に向かおうとした真也の前に現れ、真也の相手を秋山と同じようなことをしていたのだ
そしてそれを止めようとした真也は逆に気絶させられたて気づいたらここにいたというわけだ
「なるほどな………真也動けるか?」
「ああ、行けるぜ!!」
「そうか、じゃあ連を連れて離れてくれ」
「待てよ、一人で戦うつもりかよ、一人で戦うよりかは二人で戦った方が……」
「足手まといだ」
「秀、それどういう意味だ!!」
胸ぐらをつかみ声を荒げる真也、足手まといと言われれば、当たり前の反応だ。
しかしそんな真也に対して俺の目はまっすぐにゆるぎなく真也を見つめる
「周りに気を配りながら戦って勝てる相手じゃないのはわかってるだろ」
最後に小さく頼むと呟いたが、最後の頼むはとても重みがあった。
「分かった、でも夜坂を運んだ後は好きにさせてもらうからな」
「ありがとう真也」
真也は倒れてる連を担ぎ学校から出ていき、俺は相手の男をまっすぐ見つめていた。
「行くぜ黒マント野郎」
「ふ、いい暇つぶしにはなるかな」
韋駄天だ動き出す俺に対して男はまったく動かない
「シルフィー、天つ風・重を解除するぞ」
<え、わ、分かった>
最大の攻撃力を誇る天つ風・重を解除するのに疑問に思い戸惑いながらも一旦天つ風・重を解除する
スピードは遅くなるものの、超スピードには変わりはない
「行くぜ旋風刃」
(これで出方を見る)
男は竜巻が迫っているが、男はそれでも動かなかった
そして男に竜巻が直撃したが、宙に舞ったのはまたもや男のマントだった。
「ちっ、どこだどこにいる?」
「後ろだよ」
「っ!!!!」
後ろから後頭部に蹴りをくらってしまい、すこしよろめきながらも、振り返りざまに天つ風で切るが、すかしてしまい、すかした瞬間にまた後頭部に打撃を受ける
「くそっ!!どうなってんだよ!!」
「ふむ、暇潰しにもならんか」
(くそ、何がどうなってるんだよ)
「じゃあそろそろ決めようか」
そう言って男はマントの中に入るとまた消えてしまった。
真也Side
せっせと連を担ぎ上げて真也は近くの場所で、電話をした石月を待っていた。
「おーい霧崎君って、ええ!!夜坂君いったいどうしたの!?」
「ごめん、今は急いでるから訳を話してる時間がないんだ、じゃあ」
「あ、ちょっと待って下さい」
石月の声はむなしくも、真也には届かなかった
「浅村君…………また戦ってるの」
秀Side
石月に会ってからすぐに学校戻った時、状況はあきらかにだった。
片膝をついていた秀に対して相手の男はぴんぴんしていた。
「秀!!大丈夫か?」
「ああ………ギリでな」
真也に肩を持ってもらい立ち上がったが、後頭部の集中攻撃のダメージでかなりぐらついていた
「お、二人に増えたな、じゃあ楽しませてもらおうか!!」
消えた相手を見て、あわてふためく真也
「ま、マジか消えやがった」
「気にするな、もう対処はできてるさ」
目を閉じた俺は何度も何度も深呼吸をする
(何するつもりだ?)
消えた男が現れたのは秀の真上からだったのだ
〈上!!〉
「ああ!!」
腰にさしていた木刀を上に鋭い突きを繰り出し、男の腹に見事にちょくげきした
物質憑依をしていたと思っていたはずが、秀は物質憑依をせず、シルフィーを上に出していたのだった
「ぐうぅ!!」
「よっしゃ、戻れシルフィー!!」
〈うん!!〉
すぐさま木刀に物質憑依して、怯んでいる男に絶空剣・嵐を繰り出す
「ぐあぁぁぁぁ!!」
「もらったぁぁ!!」
一気に決めようとした俺は空破撃をだそうとして、男との距離を韋駄天で詰める
それを見た男は、仕方がないと言ったかのように両肩をすくめてから、片手から秋山達からとった種を3つ出し、その内の1つの種をを呑み込んだ。
すると、男から爆発的な魔力が溢れだし、あまりにもの爆発的な量に秀は吹っ飛ばされてしまう
さらに、立ち上がった瞬間におそう悪寒と吐き気
悪寒と吐き気を引き起こすほどの魔力の差
何かに押さえつけられるような重み、足を一歩も動かすことができない
「何だなんだ……この魔力の量は……吐き気がしてきやがった………」
「き、気分が………悪くなってきやが………」
真也は最後まで言い終わることなくそのまま意識をなくして倒れてしまった。
とてつもない量の魔力に明らかに自分との差を見せつけられたのだ
「ほぉー、これだけの魔力を見せつけても立っていられるか………手先は震えてるようだな」
「くそ、止まれよ、止まれよ!!」
必死にもう一方の手で抑えるが、震えはそちらにまで伝染していく
始めは手先だったのが、腕全体から肩を震わせ、次に上半身が震え始め、ついには体全身が震え始める
「はぁはぁはぁはぁ」
〈ちょっと秀、とりあえず落ち着きなよ〉
シルフィーの言葉も今の秀には聞こえておらず、秀の呼吸はどんどん荒くなっていく
このままでは真也のように倒れてしまう
〈こうなったら………ごめん秀!!〉
「ぬおぉぉ!!」
「憑依か、やるなあの精霊」
〈シルフィー?〉
「秀、確かにあんな魔力を見せつけられて、落ち着けっていう方が難しいと思うよ……けど、今あの男と戦えるのは秀しかいないんだよ!!」
〈っ!!!!〉
「それに秀はいつだって、どんな敵だって戦って、そして勝ってきたでしょ」
〈ははは、そっか、そうだったよな〉
「うん、じゃあ頑張ってね秀」
〈ああ、選手交代だ〉
シルフィーのおかけで落ち着きを取り戻した秀は、再び自分の体に戻り、体の震えは止まっていた。
「あれほどの状況からもちなおすとはな」
「ああ、シルフィーのおかけさ、俺一人じゃ無理だったさ」
「いいコンビだ」
「そりゃどうも、行くぜシルフィー物質憑依だ」
天つ風・重を出し男に向かって韋駄天で走り出した。
「仕方ない……如月!!」
「な、何!?」
あまりにも驚いた秀はぴたっと止まり、秋山の能力だったはずの剣を見てしまう
「な、何でお前がその剣を持ってんだよ……」
「何でって、そりゃ俺が秋山から能力を回収したんだからな」
「回……収?」
「そういやお前に言ってなかったな、俺の能力はアビリティシードってんだ」
手の平から秋山達からとった種を出して男はさらに説明をする
「アビリティシードは人に植え付けることで植え付けられた能力がいつか開花する、さらにその開花した能力を俺は自在に奪い取り自分の物にすることができるのさ、奪い取られた能力者は命をおとす危険があるがな」
「お前、それを知っていながら何人にその能力を使ったんだ!!」
レーガルの時のジーダにキレたときと同じようなキレていた
ジーダと同様、この男のやり方が許せないのだ
「人を人でなしみたいな言い方をするなよ、俺だって能力を植え付ける前に、ちゃんと能力が欲しいかって聞いたんだからな」
「聞いたからって、命を落としていいわけないだろ!!」
「一時の間能力を味わったんだ、それ相応の料金は回収させてもらうのは当たり前さ」
「神にでもなったつもりかこの下衆野郎が!!」
「ああ、俺は神になる男だ」
完全に頭に血が上ってしまった秀は、何も考えずに突っ走る
「皐月!!」
「ぐっ……」
振り抜いた皐月は秋山の物とは比べ物にならない速さの皐月に、秀はとっさに天つ風でガードするが、かるく吹っ飛ばされてしまう
「戦闘中に冷静になれないのは致命的だな」
「人の命を奪っといて冷静でいられる奴がいるんだな、呆れるぜ」
「めんどくさい奴だな、そろそろ決めるか………」
皐月を中段に構え、深く深呼吸をしてから小さく呟いた
「限月……」
(次はどんな剣になるんだ)
皐月が光り次の剣は、剣とはかけ離れたボール型の形状になった
(何なんだ限月は?)
「行くぜ、如月、葉月!!」
形状が如月に替わり葉月の様に炎を帯びる
そして秀には向かって突進してくる
「紅蓮撃!!」
「旋風刃!!」
炎を纏う突進vs竜巻、完全に自分の方が有利だと思っていたが、現実はそうではなかった。
秀が放った旋風刃を男はど真ん中を突き破り、そのまま秀の脇腹をかすめた。
〈そんな………旋風刃が破れるなんて〉
「それだけじゃない、アイツの如月のスピードは天つ風・重と同じくらいだ」
「おーい次行くぞ」
「なめやがって!!シルフィー!!」
「如月、皐月、鳴雷月!!」
「天つ風・重!!」
上回っていたスピードも今は同じスピード、しかも相手には雷を落とすことができ、伸縮自在の鞭のような剣
圧倒的な手数で秀を圧倒する
避けるには限界があり、ガードをすれば、天つ風を伝って電気が流れる
徐々に追い詰められていく秀
「しっかりしなきゃ死ぬぞ」
〈秀!!このままじゃ〉
「分かってる、シルフィーあれやるぞ!!」
〈ちょっと秀、本気!?あの状態じゃ、重のスピードは出せないし、まだ不完全じゃない〉
「でもあれならガードすることができる」
〈けど………〉
「つべこべ言うな、どうせこのままじゃやられるんだ」
〈もう!どうなっても知らないからね!!〉
男の猛攻を何とか掻い潜り、男との距離をとり、天つ風・重を解除し、二本の木刀を地面に捨てる
そして男が限月が出したときのように深く深呼吸をして、心落ち着かせるが落ち着かせている間も男の猛攻が襲う
「決まったな……」
振り抜かれた皐月が秀の脇腹を切り裂くはずだったのだが、秀はそれを紙一重でかわした
「おお、やるねぇ……でもこれならどうだい?」
鳴雷月で雷を落とさせ、伸縮自在の剣で、変幻自在の剣術を繰り出す
「かわせるかな?」
「かわせるさ!!」
落ちる雷、変幻自在の剣術のすべてを紙一重でかわす
今までの動きが嘘であったかのように、すべてをかわしていく
スピード自体は速くないが、男の攻撃を読んでるが如くかわしている
「くっ、無駄な動きがなくなりやがった、いきなり何したんだよお前は」
「ふん、知りたいなら教えてやるさ、精霊契約の真の力をな」
「真の力……だと」
「精霊契約には3つの力があるんだ分かるだろ?」
「魔力使用、憑依戦闘、物質憑依だろ」
「正解、だけど本当は4つあるんだ」
「4つだと!?」
「ああ、魔力使用に憑依戦闘に物質憑依」
一つずつ数えるたびに片手の指を一本づつ折っていく
そして三本折り曲げた所で一旦止めてから、一旦間を置いてから口を開いた
「同調………言うなればシンクロナイズさ」