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3月は別れの季節でもあり、恋に終止符を打ってほしい季節でもあると思うのだ。

 「あ、あの…!わたし、えと、その……実は、只野くんのことがずっと前から好きだったんです!!付き合ってください!!」


 卒業式が終わった直後、告白をする場所の代名詞と言われる校舎裏に呼び出された俺、只野ただの陽斗ひとはやはりというべきか、告白を受けていた。相手はクラス内カースト最上位に位置していたと言っても過言ではない、俺のような凡人とはかけ離れた世界にいるとても可愛い女子だった。


 「えっと……どうして俺が?」


 そもそもこの女子と目立つ接点が今までにあった記憶がない。それこそ、一度だけ席が隣になり英語のペアワークで一緒にやっていたくらいだ。あの時はよく笑ってくれて楽しかったなあ……


 なので、一度理由を聞いてみた。


 「え、えと…あ、ずっとかっこいいって思ってて、あ、あと優しいし!」


 「はあ……」


 まあ、ダウトだろうな、この告白は。まずかっこいいなんてお世辞はおろか、母に至っては「まあ、顔はお父さんを恨みなさい…」とまで言われる始末である。それに優しいと言っているが、接点もなにもないのに何をもって「優しい」としたのだろう。一度だけ消しゴムを拾った記憶はあるが。


 残念だな、この子が嘘告白をするなんて。少なくとも「いい人」だと思っていたのに。そしてその対象にされる俺にも悲しくなる。


 きっと今頃俺の背中あたりでクスクスしながらこの光景を撮影しているのだろう。俺が無様にも「ぼ、ぼくなんかでよければ…!!」というセリフを言うのを期待して。だから、俺はせめてこの嘘告白を台無しにするために、手を打とうではないか。


 「いや、俺と君とでは吊り合わないよ」


 「えっと、それってどういう…」


 「だから、俺が“かっこよすぎ”るから君とは吊りあわないんだよ。君みたいな子と俺が付き合えると思ったら大間違いだ。せめて、自分磨きから始めるんだな。ってことで、後の盛り上がりには欠けるだろうけど、この“嘘告白”は失敗だったな。君がそんなことをするとは残念だったけどね」


 そしてこの場を颯爽と去ろうとする。…うん完璧だ。オーバーキルな気もしなくもないが、嘘告白なんて人を傷つけるような行為をした自分を憎んでほしい。この子は多分「いい人」だと思うから、反省をしてほしい。


 と思ったが…


 「う、嘘告白ってなんのこと……?」


 「……え?」


 「いやだから、私いま本気で只野くんに告白したんだけど…」


 恐ろしいことが起こってしまったようだ。変だとは思ったよ。俺がここを去ろうとしたのに、いると思っていたギャラリー集団が来なかったのだ。


 それに何よりもまずいのは、この子が急に大声で泣き出してしまったことだ。それにとても怒っているように見える。


 「只野くんの馬鹿!!私も只野くんがそんなことを言う人だとは思わなかったよ!いいよ、さっきの告白は取り消しで!!なんなら今この瞬間でだいっっっっ嫌いになったから!」


 そんなセリフを捨てて、この場を離れて行ってしまった。そして俺も逃げるようにここを去った。他人に見られたらまずいしね。


 それにしても、なんてことを俺はしてしまったのだろうか。このこと親とてかに話したらめちゃくちゃ怒られるだろうな。こんな容姿が整った子を逃がすなんて。末裔まで俺は祟られるのでは?


 なんにせよ、俺は「普通」の人間なのだ。「いい人」でもなければ「わるい人」ー「わるい」だと犯罪とかに関連しそうだから、これからは「クズ」と言い表そうーでもないのだ。あくまでも、その場の状況で常人なら普通の判断をしたのだから、俺に非はないはず。なんならあんな怪しい告白をする相手も悪いと思うのだ。少なくとも俺はそう結論づけたい。そして最後に…




 俺と彼女が吊り合わないのは本当だ。何度も言うが、彼女は「いい人」なのだ。




 高校生活を謳歌するとしよう。

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