堕落戦隊タイダニャン
タイトルを思い付いてしまったら書かないと落ち着かないのが僕の悪い癖……。
中身はヒーローの皮を被ったコメディーですので、どうぞお楽しみください。
休日の朝。
シマウマの縞を太くしたような模様の怪人が、パジャマ姿の男を無理矢理引き起こしていた。
「やめてぇ! お父さんはつかれているの!」
「うぅ……」
幼い娘が足に縋り付くも、怪人は微動だにしない。
『駄目だな。休みの朝とは言え、いつも通りに起きて活動的に過ごすべきだ』
無慈悲な言葉に、妻が悲鳴を上げる。
「そんな……! 主人はいつも休日に昼まで寝ていて、それで英気を養っているのに……!」
『休みの前の日だからと、昨晩痛飲したからだろう。斟酌するには及ばない』
「うぅ……」
怪人の赤い目がぎらりと光った。
『さぁアクティブ・レストだ。朝食を食べてウォーキングをするのだ』
「しょ、食欲が……」
『食えば何とかなる。さぁ、充実した休日を始めるのだ』
「待てにゃー!」
『何っ!?』
怪人が声に振り返ると、窓の外に五つの影。
塀の上に立つそれは、鮮やかな色の衣装をまとった五匹の猫だった。
「タイダレッド!」
「ダイダブラック!」
「ダイダブルー!」
「ダイダイエロー!」
「ダイダピンク!」
「「「「「自堕落! 堕落戦隊タイダニャン!」」」」」
背後に爆発が見えそうな見事なポーズ。
『くっ……! 』
息を呑み、身構える怪人。
張り詰める空気。
『……?』
動かないタイダニャンを不審に思う怪人。
するとタイダレッドが口を開いた。
「あ、この窓開けて欲しいにゃん」
「あ、はい」
娘が窓を開けると、一匹ずつ部屋の中に入ってくるタイダニャン。
「さて! 休みの日に早起きを強要するとは何事にゃ!」
『休みの日に寝溜めをすると、身体のリズムが崩れる。休み明けのだるさを防ぐには、普段通り起きてアクティブ・レストを行うのが最適なのだ』
「休みの日に早起きするのは、二度寝する時と相場は決まってるにゃん!」
「え、お出かけの日はおきてほしい……」
「お休みは夕方くらいまで寝ていても許されるにゃん!」
「流石にお昼ご飯は食べてほしいんだけど……」
「延々布団の中にいる事が許されるのが休日にゃん!」
「いや、午後からは起きるよ!? 競馬中継観たいし!」
「えぇい黙るにゃん! 全員怠惰の虜にしてやるにゃん!」
『な、なにをする、きさまらー!』
一斉に飛びかかるタイダニャン。
タイダレッドは男の膝に。
タイダブラックは娘の膝に。
タイダブルーは妻の膝に。
そしてタイダイエローとタイダピンクは怪人の膝に収まった。
「ふはぁ〜。癒される……」
「ネコさんがひざにいたらうごけなーい。うふふっ」
「これは、お昼ご飯、冷凍食品にしちゃおうかしら……」
『お休みっていいよね!』
こうして休みの日から早起きさせようとする怪人から、男の休日は守られた。
しかし休みの怠惰はいつ破壊されるかわからない。
人々から怠惰な休日を守るために!
頑張れタイダニャン!
だらけろタイダニャン!
怠惰な休みを求める人が、世界のどこかにいる限り!
読了ありがとうございます。
小説は布団に寝転んでいても書けるから怠惰ですね!
ちなみに昔の戦隊ヒーローと語感が似てますが、気のせいって事にしてください(震え声)。
怠惰な気分の時にまた書かせていただきますので、よろしくお願いいたします。