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第二十七話 両親の死の真相

 城にやってきた私達は、そのまま謁見の間へと通されると、そこにはエドワード様と話をしていた、屋敷の執事がいらっしゃいました。彼はグロース国の内部事情の調査を担当していた方です。


 彼の話を要約すると……グロース国の内情は、酷い有様になっているようです。


 民達は、突然重い税金を課せられるようになってしまい、とても貧しい暮らしをしているそうです。徴兵もされているようで、街からは若者が次々といなくなっているとの事。


 それに加えて、食糧不足や、貧しさからくる犯罪行為が後を絶たなくなっているようです。


 暴行、窃盗、殺人といった犯罪の他に、自ら奴隷となって家族にお金を渡している人もいると聞いた時は、私は我慢の限界に達してしまい、その場で泣き崩れてしまいましたわ。


 話はこれだけでは終わりません。悪化した政治に対抗する為に、国民達は何度も抗議活動をしているようで、各地で小規模な戦闘も起きているそうです。


 ですが、それはほんの一部だけ……ほとんどの民は行動にまでは踏み切れず、日々苦しくなる生活に耐えるしかできないみたいです。それくらい、王家の力が強いという事でしょう。


 私がいた頃は、そんな争いなんか絶対に起こらない、平和で素晴らしい国だったのに、こんなに一気に変わってしまうだなんて、いまだに信じられません……どうしてこんな事に……。


「失礼致します。偵察に向かっていたコウモリ達が、数名ほどお戻りになられました」

「わかった。ここに通せ」

「はっ!」


 兵士の案内の元、また屋敷の方々が無事に戻ってきてくれたした。その中には、セバス様の姿もあったのが、本当に嬉しかったです。


 そして、彼らは手に入れた情報を共有してくださいました。


「……そんな事になってたなんて、信じられませんわ」


 彼らが手に入れた情報によると、国も民も、争う準備をしているそうです。でも、争う相手はそれぞれ別になっているみたいです。


 民は国と争う準備をしています。もちろん、国の圧政からの解放を目的としています。そして、グロース国の王家は、エルピス国と戦争をしている準備をしています。そんな状態で、国は民達に権力と武力で徴兵しているとの事です。


 わかっていた事とはいえ、実際に戦争の準備をしていると知ると、胸が張り裂けそうなくらいつらいですわ……民には何の罪も無いというのに。


「それにしても、随分と帰りが早かったな。俺はもっと遅くなると思ってたが」

「坊ちゃまの疑問はもっともですな。実は、我々の存在にいち早く気づき、接触してきた者がおりました。どうやら我々の存在を知っていたようでして……友好的だったので、信用して話をしたところ、手を貸してくれたのです」

「それは興味深い。セバス殿、その者とは?」

「はい。彼は自分をノアと名乗っておりました。現在の宰相で、現王女の婚約者だと」


 の、ノア様!? ノア様が、どうしてそのような事を!? 彼は私と婚約破棄をして、お義母様の方に着いたとばかり思っておりましたが……どうしてお義母様を裏切るような事を?


「そんな彼が、いくつか情報を提供してくださいました。その中に、興味深いものもあって……彼もこれを見つけたのは、最近のようです」

「これはなんですの?」

「現国王のイザベラ様の部屋から見つかった、とある記録の写しだそうです」


 セバス様が手渡してくれた書類には、毒の購入履歴や、いつどこで使ったかの記録が残されていました。


 その記録には……なんと、毒をお母様やお父様、そして私に使ったと記録が残っていました。


「ふむ、随分と几帳面に残していたものだな。毒の分量を間違えたら、狙ったタイミングで対象を殺せないからか?」

「恐らくそうかと。そういえば、以前マシェリーが、継母は昔から、マシェリーの両親と親しい間柄と言っておりました。もしかしたら、親しくしていたのは……王族を排除し、自分と子供の二人で国を支配する気だったのかもしれません」


 エドワード様とカイン様の声が聞こえてきますが、会話の内容は全然頭に入ってきません。


 だって……だって! 病気で亡くなったと思っていたお二人が、まさかお義母様の手で殺されていたなんて聞かされたら、他のお話なんて耳に入りませんわ!


「お父様とお母様……それに私にも毒を盛っていた……あの追放と婚約破棄も……次期国王になる予定だった私を、さっさと消して自分が王になりたかったから……? そんなの……絶対に許せない……!!」


 私は怒りのぶつける相手がいなかったせいで、手に持っていた書類を思い切り握りつぶしてしまいました。


 別に私に何かした事はどうでもいいんです。それよりも……大切な、世界にたった一人しかいないお父様とお母様を、あの方は……殺したんですわ……。


「お父様……お母様……」


 お二人の、優しい笑顔が頭に浮かびました。忙しくても、体調が悪くても、私に愛情を注いでくれたお二人が、私は大好きです。


 それを……自分の醜い欲望の為に、お二人の尊い命を奪った彼女を…。ああもう、怒りで頭がどうにかなってしまいそう!!


「それと……これは宰相殿から直接渡された手紙です。あなたの事を話したら、渡してほしいと」


 少々気まずそうにそう仰りながら、セバス様は私に便箋を手渡してくれました。中に入っていた手紙は、急いで書いたのか、少し雑な文字になっておりましたわ。


「なんて書いてあった?」

「今回の戦争の発端は、やはりお義母様みたいですわ。コルエ……私の義妹と遊んで暮らす為に、戦争をするって……ノア様の方でも、なんとか侵攻準備を遅らせて、私達にも異常を知らせるようにしていたけど、時間の問題と書いてあります。それと……お義母様に騙されてしまい、あなたを守れなかった事を、深くお詫びすると……」


 ノア様はお義母様に騙され、利用されていただけで被害者だというのに、どうして彼が謝らなければならないのでしょう? 全て悪いのはお義母様だというのに!


「なんにせよ、これで攻めてくるのはわかった。我々も迎撃できるように、準備をしなければ。愛する祖国を、そのような身勝手な暴挙の為に蹂躙されてたまるものか。カイン、すぐに騎士団全員を召集するぞ」

「御意。マシェリーは俺達に任せて、屋敷で大人しくしておいてくれ」


 カイン様達に任せるですって……? 私の故郷の事でもあるのに、安全な所でのうのうと過ごせというのですか? そんなの、絶対に納得できません!


 ですが、私に何が出来るのでしょう? 私には何の力も無いですし、戦闘能力もありません。私しか出来ない事……私は元王女……そうですわ!


「あの……不躾なお願いなのは重々承知ですが……私、グロース国に帰国させてください!」

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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