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「決戦」

 ズドン! ズドン!


 固定砲台や滑空砲が音を立てて地平線の方に見えるドラゴンに弾を撃っていく。幸いまだドラゴンのブレスが届く範囲ではなく、一方的な攻撃が可能だった。


 ガガガ!


 対物ライフルも敵を検出したのか射撃を開始した。ゴブリン程度なら挽き肉に出来るこれでさえドラゴンを相手にするには心許ないほどだった。


 銃火器が無限の弾薬をドラゴンに打ち込んでいく。僅かにドラゴンの進行速度が遅くなった。監視塔から俺たちは火器を管制していた。


 自動で相手を狙ってくれるまではしてくれるのだが、なにしろ相手はドラゴンだ。俺は銃火器の狙い目をドラゴンの目や、呼吸のために開いた口にぶち込んでいった。


「お兄ちゃん! ブレスが来ます!」


「クソ! 早いっての!」


 どうする? ブレス対策は出来ていない。家が焼けるのを黙ってみるしかないのか?


 ドラゴンのファイアーブレスは町の手前で止まって散って消えた。


「え?」


「お兄ちゃん! 結界です! まだドラゴンのブレスが結界発生装置で防げる程度の威力でしかないんです!」


 自警団がサボるために作ったアレか……何が役に立つか分からないな。


 僥倖だったのはそれだけではない。ブレスを吐くためドラゴンが開けた口に火器から大量の弾をぶち込んだ。さすがのドラゴンも炎を吐こうとしていたところに高速で弾を撃ち込まれてダメージを受けているようだ。


「いけますよお兄ちゃん! 押し切ります!」


「弾は無限だ! ありったけを打ち込むぞ!」


 ドラゴンは数回ブレスを吐いて忌ま忌ましい火器をなぎ払おうとしたが、そのたびに開けた瞬間を狙って弾を撃ち込んだ。ドラゴンが押されている!


 しかしそこでドラゴンも知恵をつけたのだろう。ブレスを吐くことなく町への歩みを進めだした。


「クソ! 学習能力があるのかよ!」


 考えてみれば当たり前の話だ。ドラゴンが人間の上位種たるのは力が強いからと言うだけではない。長い長い期間を生きた事による経験の蓄積、それがドラゴンを知恵者にしていた。あのドラゴンは経験が浅かったからおそらく単純な攻撃に引っかかったのだろう。それでも死ぬ前に対策を思いつく程度の知恵はあるようだ。


「目です! 目はまだノーガードです」


「チッ! 狙いにくいんだよ!」


 火器をドラゴンの頭部から眼球にターゲットを変更した。顔における眼球の占めるサイズは小さいため外れる弾も多くなる。それでも眼球にヒットしたときには僅かだがドラゴンを押し戻していた。


「お兄ちゃん! そろそろヤバいところまで近寄ってきましたよ!」


「クソが! 腹をくくるしかないな!」


「お兄ちゃんにしては思い切りがいいですね! 私も覚悟を決めましたよ!」


 ブレスが結界を抜くかもしれない。そんな距離までドラゴンに接近されてしまった。


『危機管理システムにより静止衛星のレーザーシステム使用が許可されました』


「何だよこんな時に!」


「どうしたんですかお兄ちゃん?」


「スキルが何か使えるようになったらしい、よりにもよってこんな時に!」


「使ってください!」


「は?」


「ここで待っていても死ぬだけです! そのスキルをドラゴンに打ち込んでやってください!」


 俺はなにが使えるようになったのか分からなかったが、シャーリーの言うとおりこのままではジリ貧なので『衛星レーザー』を使用した。


『レーザーシステム起動……ターゲット認識……発射」


 その時光の帯が空から降ってきた。静止衛星を作成したようなのんびりした光の帯ではなく、星が落ちてきたのかと思うくらいの明るさで光線がドラゴンに直撃した。砲撃でもほとんどダメージを与えられなかったドラゴンの皮膚が膨れ上がり、焼け始めて、最終的に悶えるドラゴンが転げ回りながら燃え尽きていった。


『ターゲットの死亡を確認、レーザーシステムをロックします』


「お兄ちゃん? 一体何が……」


「こういうのを見ると神を信じたくなるなまったく!」


「何をやったんですか?」


「新しく使えるようになったレーザーシステムを使ったらこの有様だ。まったく化け物みたいなスキルだよ!」


「ドラゴンは……死んだんですか?」


「ああ、そのはずだ」


 そう答えた瞬間シャーリーが俺に抱きついてきた。


「お兄ちゃん! 怖かったですよぅ! 死んじゃうかと思いましたよぅ!」


「もう大丈夫だ。安心しろ、悪い夢もこれで終わりだ」


 ドラゴンが来ていたのとは反対の方、西側で大きな歓声が上がっていた。光の塊が落ちてきたところまではみていたがドラゴンの足音が消えたのに気がついたのだろう、歓声と共にドラゴンの死体を見ようという見物人が大挙して押し寄せた。


 自警団の連中がドラゴンの死体を確かめている中、俺たちは英雄として祭り上げられてしまった。『たった二人でドラゴンを打ち倒した勇者』そう呼ばれたのだが、俺は勇者じゃないと頑なに宣言したのだがしばらくの間勇者の称号はつきまとった。


 シャーリーの方は『賢者様』と呼ばれ、本人も悪い気がしなかったのかそれを否定しなかったので当面の間賢者でいることになったのだが、シャーリーの言動は賢者からかけ離れていたため俺よりすこししあとで賢者呼びをする人は居なくなってしまった。いつかシャーリーには本当に賢者と呼ばれるような人格者になって欲しいと思う。


 そして最後に、ドラゴンを倒して数日後……

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