4話
時間空いて申しわけないです、、、。
冒険者学校の授業は、月の日・火の日・水の日・木の日・風の日に行われる。
金の日と土の日は、基本的に休養日だ。
火の日の朝、マリさんに強制的にガランとパーティーを組まされた。
今日は、そこから3日後の風の日だ。
俺はこの3日間、リィカという人物について、情報収集を行った。
結果は、みんな殆どが、同じ事を言っていた。
リィカは平民で、中等部からこの冒険者学校に入学した。
成績はそこそこで、みんなからも慕われていたそうだ。
成績はそこそこだが、見た目が可愛かった為、貴族で組まれたパーティーに誘われ、そこに在籍していたらしい。
ここまで聞くと、何故、今パーティーを組んでいないのかが不思議に感じる。
問題はここからだ。
俺が転入してくる前の夏休み。
突然、パーティーを追放。
理由は確証は得られなかったが、パーティーメンバーに足手纏いと言われ、そのまま強制追放されたとか。
あとは、パーティーメンバーを殴ったとか色々あった。
その後は、色々なパーティーに、入れてくれないかと交渉していたらしいが、入れてくれる所はなかったらしい。
交渉方法も悪かった。
入れてくれないと分かると、お金を払うからと言い出したらしい。
まぁでも、全て噂だ。
何が本当かは、本人にしか分からないな。
後、兄を紹介するからパーティーに入れろって言っていたという噂も聞いた。
そう。リィカには2歳年上の兄がいた。
名前はリク。
この人がまぁ優秀なことで、しかもイケメンときた。
ファンクラブまであるらしい。
全然、羨ましくなんかない!
んで、パーティーを追放される何日か前に、そのイケメン兄貴とリイカが、口論していた所を見たという情報もあった。
それから、何日かしてパーティーを追放。
そして、寮の部屋に引きこもってしまい、今日まで出て来ていない。
調査結果を纏めるとこうだ。
兄と口論。
突然のパーティー追放。
パーティー追放理由は不明。色々な噂がある。
他のパーティーへ何が何でも入ろうとしていたが、断られる。
そして、引き籠る。
マリさんも無茶言うよ。
俺はカウンセラーじゃないんだけどなぁ。
でも、ガランと2人ってのは嫌だし、どうしたもんかな。
そんなこんなで、訓練場に集まった生徒に向けて、先生が説明を始めようとしていた。
「今日はパーティーでの連携訓練だ。今からパーティー毎に、そこから出て来る魔物ドールと戦ってもらう。今回はゴブリンドールだ」
いつもなら午後の授業で、腹が膨れていい感じに眠くてうとうとしながら授業を受けるのに今、俺は腹より顔が膨れている。
その理由は隣にいる男のせいだ。
「おい、足だけは引っ張るなよ」
「はいはい、仰せのままに。はぁ」
訂正しよう。
どちらかというと憂鬱だ。もう怒るを通り越して呆れが勝る。
「では、最初のパーティー"民の剣"! 前へ」
「「「「はい」」」」
最初の冒険者パーティーは見た事のない人達だった。
きっと違うクラスの奴らだろう。
ちなみにこの授業は1学年合同だ。
呼ばれたパーティーが、訓練場の戦闘エリアに降りて行く。
訓練場は、模擬戦場と同様に、コロシアムのような作りになっていた。
違う所は、観客席から直接、下の戦闘エリアに降りられる所と、戦闘エリアが、フィールド壁と言う透明な壁によって、2つに仕切られている所だ。
仕切られ方は円で仕切られていて、
外側から、観客席、戦闘エリアのフィールド外、その内側に戦闘エリアのフィールド内といった感じだ。
"民の剣"と呼ばれたパーティーが、フィールド内の所定位置に着くと、その先に転移の魔法陣と思われる物が光る。
するとそこから、木剣を持ったゴブリンの体を模した木の人形が2体出てくる。
あれが魔物ドールか。
魔物ドールというのは、その名の通り魔物の人形だ。
今回はゴブリンドールと言って、ゴブリンの体を模したタイプだ。
仕組みは俺にもよく分からないのだが、魔力のよく通る材質の木を使っているらしい。
ちなみに今回も模擬戦同様、訓練用の武器で行われる。
致命傷を負わない為、ゴブリンドール――改めゴブドールも武器は訓練用のものだ。
だが、フィールド内で木剣を使ってゴブドールを斬ると、本当に斬れるらしい。
本物の武器で、ゴブリンを斬る威力を出せればだが。
その辺の魔法技術は、俺には分からないが、凄すぎる現代魔法。
"民の剣"と呼ばれたパーティーはゴブドール2体を倒す。
倒したゴブドールは、魔法陣の光に包まれ消えていく。
そして、また所定の位置に着く。
すると今度は、転移の魔法陣が先程よりも大きく光る。
そこからゴブドールが4体出てきた。
この訓練では、最初は2体、次に4体、その次に8体と数が倍々に増えていくと最初説明された。
さらに、この訓練にはレベルがあり今行わているのはレベル1。
そうこうしているうちに"民の剣"と呼ばれたパーティーは全員フィールドから外に出ていた。
行動不能と思われるダメージを負ったのだろう。
フィールド内でダメージを与えられ、それが一定の値を超えるとフィールド外に強制転移させられるというシステムだ。
レベル1の最後のゴブドール64体との戦いで敗れたっぽい。
"民の剣"は前衛にタンク、中衛に槍、後方に魔法使いとヒーラー、遊撃のシーフというパーティーのお手本のような配置だった。
序盤は安定して立ち回っていたが、64体という数の暴力の前に屈した。
タンク1人で押さえつける事が出来ず、周りを囲まれてまず、ヒーラーがやられた。そこからは雪崩のように他のメンバーもやられていった。
理想のパーティーだ。
みんな平凡な能力だけで、お互いがお互いを理解しているかのような連携。
あれぞパーティーの鏡だ!
俺もあーゆーパーティーにしたい!
まぁこいつじゃ無理だな。はぁ。
その後のパーティーも見ていたが、だいたいがレベル1の32体、64体の所で終わっていた。
そりゃそうだ。
あの数を1パーティーでというのはなかなか骨が折れる。
ゴブドールの攻撃はパターン化されているが、たまに嫌らしくパターンが変わる。
集中力が切れかかっている所にあれをされると対応出来ていないパーティーがほとんどだった。
ちなみに64体を倒せばレベル1クリアだ。
そんな中レベル1をクリアしたパーティーが3パーティーいた。
全員見た事のあるようなないような人だったので、クラスメイトではないようだ。
それぞれ紹介していこう。
まず初めに"巨山の夢"。
前衛に剣士、格闘家、中衛に槍使い、後衛に魔法使いという男4人構成。
戦闘内容はガンガンいこうぜ! これに尽きます。
戦闘が始まる前はみんなでかたまってニヤニヤしながらボソボソと話しているような陰気なパーティーという印象だったが、戦闘が始まるとそれは間違いだと嫌でも気付く。
ゴブドールが出て来るや否や格闘家が先陣をきって敵に突っ込んで行ったのだ。
あれは驚いた。
決まった事をするときに性格が変わる人は絵語で良く見たことはあったが、現実では初めて見た。
さらに驚いたのは、ゴブドールが8体になってからだ。
4体の時までは格闘家が突っ込んで終わっていたが、8体になると他のメンバーも動き出した。
流石に、性格と真逆の動きするやつは、他にいないだろ〜と心の中でフラグを立てたのがいけなかったのかもしれない。
動き出したと思ったら、格闘家と同様に凄い勢いでゴブドールに突っ込んで行ったのだ。しかも魔法使いまで。
そこからは大混戦で、体力が尽きるまで暴れていた。
フィールド外に出されると全員性格は戻っていた。
フラグ回収お疲れ! と声をかけたかったが我慢した。
俺偉い!
次に"無限平野"。
前衛にタンク2人、中衛に槍使い、後衛に魔法使い兼ヒーラーという男4人構成。
戦闘内容はと言うと、もう何と言うかね……色々ツッコミたい内容でしたね、はい。
先程のパーティー"巨山の夢"とは全てが真逆で、役割編成から分かるように堅実な守りというのが特徴。
驚くべき事はここだ。
なんと、パーティーメンバー全員がチェン格した。
あ、チェン格って性格変わることね。
最近の子は、何でも省略したがるものなんです。
容姿は完璧にチャラ男。
結構なボリュームで、昨日はピーで、ピーして、ピーだった、という猥談を笑いながら話していた。
正直、あまりお近づきになりたくないタイプだ。
どうせ、この訓練でもすぐに負けるだろうと思い興味を無くしかけていた。
が、戦闘が始まるとチャラ男達の空気は一変した。
話し方もチャラい話し方から急に真面目な話し方に変わり的確にパーティー内でコミュニケーションを取っていた。
しかも、ガンガン攻めそうに見えて全然攻めない。
ゴブドールの攻撃をタンク2人でガードしたり、いなしたりして確実に攻撃が当たるという時にしか攻撃しなかった。
ザ、堅実!
チャラ男どこ行ったんだよって感じだった。
そこで限界を迎えましたね。
驚きすぎて、ツッコミを我慢出来なくなってましたよ。
咄嗟に言っちゃいましたね。
「ふっ。まるでチェン格のバーゲンセールだな」
……って。
もうね、ただでさえ転入日に周りからちょっと変な目で見られてたのに、完全に見る目が変わったよ。
勿論、更に悪い方向にな!
そりゃさ、1人でニヤッとしながら独り言言ってたら気持ち悪いよ?
でもボソッと言ったつもりだったんですよ、こっちは。
「龍の玉」って絵語が大好きなんだよ! しょうがないだろ! 一度は言ってみたかったんだよ!
え? もしかしてこの中にあいつでもいたの?
続きが全然掲載されなくて、色々な噂が出回ってる事で有名な作者の書いた超面白い絵語、「ゼンター×ゼンター」に出てくるヒャクリツがいたんですか?
じゃないと納得出来ねー!
いたら言ってくれ!
凹んでる俺に言ってくれ!
「私はハオトを推すわ」
って言ってくれよぉ!!
あれ、もしかしてあれなんですか?
「ボソッとした呟きよ。こんなに近くにいるのにエスティントだから」
とか言って俺の呟きひろっちゃった?
しかもひろっただけでは飽き足らず、周りに広めちゃった?
そのせいで俺の心音がエスティントだったから!
でもそんな事じゃ怒らない。だって俺の器はジャイアント。
やかましいわ!
ぜんっぜんっ上手くないわ! 何で変に綺麗にまとめようとした! その程度なら言わなくていいから!
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
心の中で暴れすぎた。
周りでこっちをチラチラ見ながら、ザワザワしてる人がいる。
もういや! もう聞きたくない! ザワザワの音も貴方たちの音も!
唯一の救いは、隣の奴が寝てて聞いて無かった事だな。
たぶん聞こえてたら、確実に俺の心音はエンディング迎えてたな。
オホンッ。だいぶ話が脱線したな。
話を戻そう。
残るは"金色の薔薇"というパーティーだ。
先2つのインパクトが強すぎたが安心して欲しい。
このパーティーは先2つよりは普通だ。
もしかしたら普通では無いのかもしれないが、先2つのパーティーのせいで普通に感じる。
“金色の薔薇"のメンバーが呼ばれると一部からキャーーーッと。
俺は驚いて黄色い声の向かう先を見ると如何にも貴族といった格好の面々がフィールドに入る所だった。
えー、構成は美男3、美女2…………以上。
もうそれどころじゃなかったんですよねこっちは。
別に先2つの紹介で疲れたとかじゃないから。
い、いやいやいやいやいや、ほんとに違うしー。
ちなみに、リィカが以前まで所属していのが、このパーティーだ。
この美男美女の中にいたって事は可愛いんだろうな。
まぁ俺、姉力ない人には興味ないんだけどね。
と、紹介しているうちに呼ばれていないパーティーがだいぶ減った。
だんだんと出番が近づいてきていた。
どうやら今のパーティーが終わったら、残るは俺達だけらしい。
そろそろ出番かと思うと少し緊張してきたなと考えているとふと気になった事があったのでガランに尋ねる。
「なぁ、ガラン。俺達のパーティー名って知ってるか」
「知らん」
「だよな。まさかマリさんが勝手に変な名前つけてたりしないよな」
「そんな勝手な事、許されるわけがないだろ」
「だ、だよなー。そんな事絶対ないよな。絶対」
今回はあえてフラグを自ら立てよう。
「でも、もし、もしな! 名前を勝手に付けられてたら何々の剣! とか、何々の翼! とか厨二っぽい感じの名前はやめて欲しいよな」
ふっふっふっ。
こうして自らフラグを立てる事でフラグの回収どころを調節するという高等技術。
これはこれから出来る姉との生活には欠かせない技術だ。
その代わり会得するまでは色々犠牲にしてしまったがな……。あれもいい思い出だ。
「ふん、名前なんて何でもいい」
「えー、そうか? 俺は嫌だな。自分で決めた厨二っぽい名前は良いけど、人様の決めた厨二っぽい名前は何というかむず痒くなりそうだ」
どうせ、マリさんの事だ。
名前を付けないでパーティー申請の処理を行う訳がない。
しかも、頭の可笑しな子が考えたような名前を付ける筈だ。ならば俺はフラグの力で運命さえも変えて見せる!
今回は何々の剣とかは嫌だなーという発言をする事によってフラグ力を高め、名前は結局、何々の剣とかになるという作戦だ。
出会ってまだ数日だが、パターンは読めてるぜ。
この勝負、俺が貰った!
「さっきからお前、なんで自分からフラグ立てにいってるんだ? 馬鹿なのか?」
「ふっ。今頃、気付いたか。まぁ安心しろ。お前はもうじき俺をフラグソーサラーと崇める事になるだろう」
俺はなる。新世界の神に! はーっはっはっはっは!はーっはっはっ――
「あのな、流石にあのババァだってそこまではしない。付けていたとしても、頭の可笑しな奴が考えたようなパーティー名を付けたりする訳ないだろ」
「あ、おい! バカ!」
慌ててこの馬鹿の口を閉じさせようとするが時すでに遅し。
先生が最後のパーティーを呼ぼうとする。
「では、最後のパーティーだ! 最後は、ん?」
一瞬、はてなマークを顔に浮かべて言い淀む先生。
俺は嫌な汗が全身をダクダクと流れるのを感じる。
「え、えーと、最後のパーティー、ゴ、ゴホンッ。"マリお姉ちゃん親衛隊"! フィールドへ!」
フラグの威力はすげぇや!!
作者はパロディー大好きです!