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1話

最初は少し説明です。

 

 昔々、人間・獣人・エルフ・ドワーフ・魔人という5種族が存在していた。

 その5種族達は常に対立していて、戦争が絶えなかった。他種族間での戦争、時には同じ種族で争うこともあった。


 人間は圧倒的な数の多さを、獣人は優れた身体能力を、エルフは森の加護を、ドワーフは武器の性能を、魔人は優れた魔法の力を使い、戦争は拮抗状態が長く続いた。


 だが、それも長くは続かなかった。

 人間は数が多いものの、他に突出するものはない為、他種族よりも多くの犠牲を出していた。

 人間の数の多さに目をつけた魔人は人間との戦争で、極力、生け捕りをするようになった。

 生け捕りにされた人間は、魔人の王である魔王が開発した奴隷魔法により奴隷になってしまった。

 それだけなら良かったのだが、奴隷魔法が他の種族にも知れ渡ってしまった。

 捕まった人間は長い間、他の種族の奴隷として生かされ、使われるだけの存在となった。


 他種族同士の戦争なのに、殺し合っているのは人間の奴隷同士ということも増えていった。


 人間の憎悪は増した。


 そんな時、人間に1人の勇者が誕生した。


 今まで数の多さだけが取り柄だった人間。

 奴隷魔法により、取り柄の数が仇となり、人間同士で争う日々。

 だが、この勇者誕生を機に、形勢は逆転した。


 勇者1人の力は、凄まじかった。

 ある者が言うには、勇者は優しく、勇敢で、誰もが憧れるような存在だったとか。

 また、ある者が言うには、勇者は化物の皮をかぶった何かだったとか。


 勇者の正確な情報を知る者はいなかった。


 何百年も経つと戦争は激減していた。

 人間以外の各種族の代表達は悟ってしまったのだ。このまま戦争を続けていると負けると。

 そして、最後に生き残るのは人間だと。

 既に、人間以外の人族は数が激減していた。


 ここで、人間以外の種族で手を組む、という案も出たらしいが、それは叶わなかった。

 何故ならどの国も他国を信用する事が出来なかったからだ。


 だったらと、各種族は停戦協定を結ぼうと人間に言い出した。

 だが、人間の憎悪が、停戦で収まるわけがなかった。

 そこで、白羽の矢をたてられたのが奴隷魔法を生み出した魔王だった。魔王が奴隷魔法を教えた時には、喜んでいたはずの他の人族は口裏を合わせ、魔王を悪者にしたのだ。


 その結果、魔王は死刑。

 魔王の一族は大陸を追い出された。開拓されていない土地に身軽な装備で放り出さる。実質、死刑みたいなものだ。

 奴隷魔法は使用禁止に。

 もちろん奴隷は解放された。


 こんな形で、停戦協定は結ばれた。


 これで人間の憎悪が無くなった訳ではないが、それはまた別のお話。


 獣人は、北方に実力主義のアニマロス獣王国を。

 魔人は、南方に同じく実力主義のブラクルム魔帝国を。

 エルフは、東方に領土の3分の2が森のフォスタール森王国を。

 ドワーフは、西方に地下や山の多い、グラニオン酒王国を。

 そして人間は、それぞれの国と接した中央に1番領土の大きい、ヒューマ人王国を。


 これがファイス大陸誕生の瞬間である。


 そこから更に時は過ぎ、純粋な獣人や、エルフ、ドワーフ、魔人はもういない。

 純粋に絶滅を恐れた人間以外の種族達は、唯一他種族と子が成せる人間との間に子を作り、絶滅を防いだ。そうして何代にも重ねて血を薄めた結果、もう見た目は全員が普通の人間と変わりなくなってしまった。


 だが、その中でも稀に、獣人やエルフなど、先祖の姿を模し、特別な力、真名(マナ)を持って産まれてくる子供がいた。


 それを、人はみな <<先祖返り>> もしくは、<<真名持ち>>と呼んだ。



 ――――――――――――――――――――――――





 俺の名前はハオト。15歳。冒険者だ。


 今朝は冒険者ギルドに顔を出し、今はギルド提携の冒険者学校の、理事長室に来ている。


 3ヶ月程前にこのカルラ街にやってきて昨日までに冒険者としてのランクをDランクにまで上げた。


 今日は新しいギルド職員が入ると風の噂で聞いていたから学校に来る前に寄ってみた。


 それにしてもソリエさん可愛かったな。

 ちょっとおっちょこちょいっぽいところが堪らないぜ。天然の姉ってのも悪くないな。

 しかも返事を保留にされたのなんて初めてだ。どうにかして姉になってもらえないかなー。

 なんて考えていると、理事長室の奥の扉から1人の女性が出てきた。


「おまたせ。あなたがハオトくんね」


「はじめまして。これからよろしくお願いします」


 この人が理事長をしているマリさんか。

 髪は、赤く、肩と腰の中間くらいまで伸びていて、所々クルクルとカールしていた。

 身体は、無駄のない筋肉をつけていて、ガシッとしていた。


 それもその筈だ。

 昔は、俺の師匠と冒険者パーティーを組んでいたらしい。

 師匠のパーティーはAランク以上しか居なかったんだから、この人も、相当手練れだろう。


 俺は10歳くらいの時から、森で師匠と一緒に2人で暮らしていた。

 産まれは違う村なんだが……今の話に関係ないな。

 話を戻そう。


 師匠との2人暮らしでは毎日、修行や師匠の身の回りの世話をしていた。あの修行は地獄だった。

 そんなこんなしてたら15歳になっていた。

 15歳になったら突然、師匠に冒険者学校に行けと言われてここに来た。師匠には色々と世話になったし、修行というトラウマも植え付けられていたので逆らえなかった。それに俺の目的もあったのでちょうど良かったというのもある。

 師匠が冒険者学校の理事長、今目の前にいるマリさんに手紙を出していた為、転入の手続きはスムーズに進んだ。


「そんな畏まらなくていいわよ。気軽にマリちゃんって呼んで」


「は、はぁ。じゃあマリさんで」


「んもう、ノリ悪いわね〜」


 マリちゃんはないだろ。マリちゃんは。

 師匠と同じパーティーだったってことは何歳だよ。

 俺の姉候補レーダーにも引っかからないことから40歳以上なのは確かだ。

 でも、なんだか理事長とは思えない軽さを感じさせる人だな。年上感もないし、この学校は大丈夫なんだろうか。

 なんて考えてるとマリさんが何かを思い出したかのようにパッと笑顔になった。


「あっ! しょうがないな〜、マリ姉って―――」


「ごめんなさい」


「即答!? しかも何か告白を断られたみたいな感じになってるし! ギルドの方で、姉になって欲しいって、職員に言い寄ってるんじゃないの? 噂になってるわよ。」


 なんでマリさんがその事を。ってそりゃそうか、ギルドと冒険者学校は嫌でも繋がってるよな。将来有望な冒険者とかはこの街に留めておきたいだろうし。

 それでもごめんなさい。姉候補レーダーに引っかからなかったんです。


「それはギルド職員の姉力が凄いからです。決して誰でもいいと言うわけではありません!」


 心外だな。俺はそんな節操なしじゃないぞ。


 この人はまず年齢が上すぎるからな〜。

 上ならいいってわけじゃないのですよ。


「今、失礼なこと考えたでしょ」


 ギクッ

 この人エスパーか。顔が笑ってないんですけど。


「ふーん、まぁいいわ。噂が本当か知りたかっただけだし。でもあいつの弟子かー。まさかあいつが弟子を取るとはねー」


「なんだか、師匠が無理を言ったみたいですいません」


「こんなの全然無理じゃないわよ。転入なんて珍しい事じゃないしね。高等部ってことを除けばだけど。それに転入資格のDランクにもなってるみたいだしね。ギルドの方でもちょっと噂になってたわよ。期待の新人だって」


 そう、冒険者学校というのは転入は珍しくない。みんな好きな時期に入って好きな時期で辞められるのだ。

 まぁ転入資格があればの話だが。


 転入資格というのは、高等部への転入なら、中等部の卒業資格であるDランク到達。

 中等部への転入なら、初等部の卒業資格であるEランク到達。

 といったようになっている。


 卒業資格があれば色々と便利だから途中で辞める人はだいたいがついていけなくなった人だ。

 だが、高等部に転入する生徒は少ないらしい。もうやりたいことをみんな決めている時期なので高等部から入ろうなんてやつはいない。


 この冒険者学校という制度は何百年も前に作られたらしく、入学料は20歳までの人なら、基本的に学校側が貸す事になっている。冒険者になろうとする人はお金に余裕があるほうが少ないので、資金面は冒険者になってから返せばいいという方針だ。

 この方針が良くも悪くも反響を生み、今では孤児院の子供から貴族の三男、四男などと幅広い人達が入学している。


「俺は卒業出来れば良いので、めんどくさいいざこざはごめんですね」


 そう、めんどくさいことになんて構っている暇はない。ここには姉候補である先輩方がいっぱいいるのだから。


「そこは、貴族達があなたをどう思うかよね。一応、この学校は実力主義だから、身分を持ち出すのはダメとは言ってあるのだけどね〜。あの人達はプライドが高いから」


「そこは目をつけられないように気をつけます」


「なら良いんだけどね。まぁ何かあったら相談しに来てね。マリお(・)()ち(・)ゃ(・)んに」(・)


 ウインクされても困るんですけど……。


「理事長に相談しなきゃいけないような出来事は起こしたくないですねー。でも、そうなったらすぐに来ますよ」


 と、マリお姉さんというところはスルーしてたら理事長にノックがされた。


「どうぞ」


「失礼します。理事長、そろそろお時間です」


「あら、もうそんな時間? それじゃハオトくん、これをつけてちょうだい」


「これは?」


「これは冒険者学校の校章。ハオトくんがここの生徒って事を証明するものよ。ふふ、かっこいいでしょ」


 そう言って手渡されたのは、手のひらに収まる銀貨のようなバッジだった。


 表面には、剣の柄から翼が生えている絵がクロスされているものが彫られている。裏には何も書いてなかった。

 シンプルで普通にかっこいいと思えた。


「良いですね。気に入りました」


「ふふ。そう言って貰えて良かったわ。それじゃ、行きましょ」


 どうやら2学期最初の朝礼が始まるらしい。

 俺はマリさんの後に続いて理事長室を出た。


 ――――――――――――――――――――――――


「えぇ、今日は2学期という事でね。こうして無事に迎えられたことを、えぇ、嬉しく、えぇ感じます。えぇ――――――――――――」


 ここの校長はテンプレのような話ししかしないな。

 と思い、欠伸をしながら突っ立っているといつのまにか校長の話が終わっていた。


「校長先生、ありがとうございました。次は、理事長ですね。お願いいたします」


 マリさんは、マイクを司会の人に貰うと、コツッコツッと場内に歩く音を響かせながら、壇上へと歩いていく。

 理事長室では、この人が理事長の仕事をやっている姿なんて考えられなかったけど、みんなからそそがれる熱い視線の中、堂々としている姿を見ると、尊敬されているのが分かるし、本当にマリさんは理事長なんだな、と思えて少し感動した。


「理事長のマリ・クライドルです。早速ですが、今日は転入生を紹介します」


 そう、この理事長の話で俺は紹介される予定だ。

 まぁ名前を呼ばれたら、一歩前に出て会釈するという簡単なものだ。


「今日から冒険者学校高等部、1年Dクラスに入る、ハオトくんです。といった簡単な紹介では、皆もよく分からないわよね。ハオトくん、壇上へどうぞー。みんなは拍手で迎えてあげてね」


「へっ?」


 やりやがったあのババァ。さっきの感動を返せ! しかも、面倒ごとは避けたいって言ったばっかなのに。

 でも、呼ばれたからには嫌ですとは言えない。そんなことした方が、目立ってしまうからな。何度でも言おう、俺は目立ちたい訳じゃない。


 俺は内心、嫌々ながら笑顔を崩さずに、壇上に登る。マリさんの方を見ると、こちらをニヤニヤしながら見ていた。

 ちっ! クソババァが! おっと……マリさんの額に、青筋が浮かんでるぞ〜……。この人、心でも読めるのか?

 というか、歳気にしてたんだ。師匠と同じパーティーだったって事は40代後半か50代くらいだもんな。

 うおっ……。さらに青筋が増えた。

 え、本当に心読めるのか? なんか面白くなってきたな。

 50代だとしたら、相当な若作りをして――


「今から、ハオトくんが一発ギャ――」


「紹介にあずかりました! ハオトです! 見ての通り、片手剣を使う前衛で、使える魔法は風属性です。」


 危なかったー。本当に心でも読んでるのか?

 危うく、無茶振りされるところだったぜ。ふぅー。

 あと、なんか言った方がいいかな。

 好きなものとか、あ! どこか空いてるパーティーとか、募集してたら入れてもらいたいな。

 とか考えてたら、マリさんに急かされた。


「もっと自分の事について喋ってもらいたいのだけど。例えば、得意な一発ギャ―――」


「お、俺は姉が大好きです! なので俺の姉になってくれる人募集中です!!」


 まだ根に持ってるな! この人!

 まぁ、今回もギリギリ切り抜けられたかな。

 …………ん? なんか生徒達がザワザワしてる気がするぞ。


「なんだあいつ? なんて言ったんだ?」

「姉がなんちゃらとか言ってなかったか?」

「姉になってくれる人募集中?」

「彼女じゃなくてか?」

「彼女募集中もここで言わないだろ。パーティー募集中じゃないのか?」

「そっか、そうだよな。聞き間違えだよな」


 グガァーーー! やっちまったー!

 言おうとしてたことが色々と混ざったーー!

 欲しいけど、欲しいけども! ここで言うことじゃないだろ!

 いや待て、落ち着け俺、俺は落ち着ける子だぞ。

 よし、落ち着いた。

 まだ、聞き間違えだと思ってるから訂正できるはずだ。


「というのは、冗―――」


「そうだったのね! みんな! ハオトくんは()に(・)な(・)っ(・)て(・)く(・)れ(・)る(・)人を募集しているそうよ!」(・)


 うぉおおい! 何リピートしてくれとんじゃこのボケ理事長!

 やってやったぜ、みたいな顔してこっち見るなバ……ゴホンッゴホンッ。

 あっぶねー、またなんか言いかけてたぞ。うん、この人は敵に回しちゃいけない人だ。

 普通に訂正させてもらおう。


「ということで、みんな2学期も元気に頑張ってね〜。以上!」


 終わらせやがったぁーー!

 無理矢理にも程があるだろ! なんだよ、ということでって! どういうことだよ!

 いや、まだだ! まだチャンスはある! 壇上を降りる前に言えばいいだけだ。


「さっきのは――――」


「理事長、ありがとうございました。これにて、2学期最初の全校朝礼を終わりたいと思います。では、各自退場してください」


 おい司会ーーーー!

 先生なんだろうけど、今回は言わせてくれ。

 お前も終わらせんのかよ!



 ――――――――――――――――――――――――


 結局、訂正する事のないまま朝礼は終わった。もう訂正するのもめんどくさい。

 よくよく考えれば、どうせ、姉レーダーに引っかかる人がいたら、姉告する予定だったし、俺の姉募集中を知られるのが、少しはやまっただけだ。


 うん、そう思うことにしよう。

 じゃないとやってられない。




 俺は今自分のクラスの1年Dクラスにいる。

 誰も俺には話しかけてこない。まぁ当たり前か。

 でも、もしかしたら話しかけてくるやつがいるかもしれない。姉好きを欲しているパーティーがあるかもしれない。


 そんな、あるかも分からないような期待を胸に、放課後を迎えた。


 …………ですよね〜。


 誰も俺に話しかけてくるやつはいなかった。

 唯一、話しかけてきたのは先生達くらいだ。

「この問題を……じゃあ……ハオトくん、答えてみてくれ」って感じで話しかけてくれた。問答だって立派な会話だよな。きっとそうだ……。そうあってくれ……。

 今日は1学期の復習だったので、早めに学校が終わった。まだ日も暮れていない。これから、パーティーメンバーになってくれそうな人を、探そうと思う。


 空いてるパーティーとかに入るのは、もう無理だな。朝のあれがあるし。しかも盾を持ってない前衛なんて、ある程度の経験や実力がないと出来ないから、それが未知数な俺を入れたくないもんな。


 とりあえず、今日1日でこのクラスの友好関係の相関図はだいたい掴めた。

 というか、パーティー同士で集まってるので見たら分かる。

 すでに1人誘うやつも決めた。

 誘えるやつがまずパーティーを組んでいないってのが条件だから、まぁ言っちゃえばボッチのやつだな。

 そいつは先生とも会話出来てなかったから名前すら分からない。

 可哀想に……。先生とも話せないなんて……。ぐすんっ。

 でも大丈夫だ。

 俺が来たからには、そんな寂しい思いはさせないぜ。キランッ。


 放課後になっても、帰らずに何かを書いているようなので、さっそく誘いに行こう。

 きっと予習、復習をする、ガリ勉タイプなんだろうな。

 それで、勉強ばっかりしてたら、友達が出来なかったみたいな感じだろうか。

 いや、偏見は良くないな。何か理由があるに違いない。


「なぁ、ちょっといいか? 俺はハオト。君は?」


「失せろ」


 ん? 聞き間違えだろうか。初対面の相手に失せろなんて汚い言葉使うわけないよな。


「ごめん、なんだって?」


「失せろ」


 あれれ〜? 聞き間違えじゃなかったっぽいぞ。

 これはあれか? ウセロって名前なのか? ……ないか。

 でも、一応聞いとこう。


「間違ってたら申し訳ないんだけど……ウセロ君? でいいのかな?」


「はぁ。頭沸いてんのか? これだから――」


 ん? 最後の方が聞こえなかったな。

 名前はやっぱり違ったか。というか、あたりが強いのは気のせいだろうか。

 でも、ここは数少ないパーティーメンバー候補だから、穏やかな気持ちで接しよう。


「は、はは。面白い事言うな。ところでさっきから何書いてん――!?」


 おおっと、こいつはまずいぞ。

 少ししか見てないがノートに「全妹補完計画」とか書いてあった。

 ちょっと行き過ぎたシスコン? それとも妹ものの絵語が好きなのかな?(えがたり)


 ちなみに、絵語というのは、絵と文字で物語を表現した本の事だ。


「ふ、お前みたいなものが理解できる代物じゃないさ」


 ここは適当に妹を褒めて、はやく立ち去ろう。


「ま、まぁ妹って可愛いもんな。は、ははは」


「お前が……お前が、知ったような口をきくな!!」


 え、どうしたの。

 ほんとにどうしちゃったのこの子。

 なんか凄い形相で見てくるんだけど。目がギンギンで普通に怖いよ。

 でもよく見ると普通にイケメンだな。

 どっかの王子様と言われても、信じるレベルだ。

 目が鋭いだけで顔は整ってるし。おっとこんな男の顔なんて凝視してもつまらないな。


「お前が妹のことを口にするな! 汚れるだろうが!」


 えぇー! 理不尽! 理不尽極まりないなこいつ。

 しかも短気すぎる!

 別に妹をバカにしたわけでもないのに。


「お前みたいな姉コン(あねこん)やろうは、大嫌いなんだよ!!」


「あ、姉コン(あねこん)? シスコンじゃなくて?」


「一緒にするな! シスコンシスコンとみんな一緒にして呼びやがるけどな、俺は認めない! 俺は妹コン(いもこん)だ!」


「お、おう……」


 まぁ、確かに言われてみれば、何で同じ括りにされてるんだろうという疑問はある。

 というか、顔が近い。心の距離は全く近づいてないのに物理的に顔の距離が凄い近づいてる。

 うーん、やっぱりこいつイケメンだな。残念なイケメンってやつだなー。


 そんな事考えてる間にも、残念イケメン君は俺に向かってまくし立ててくる。


「姉なんて悪魔みたいなものだ! そして、妹は天使なんだよ!」


 ピクッ


「いつもいつも平然と弟をこき使い、何か問題を起こせば全てを弟になすりつける! これを悪魔と呼ばずして何と呼ぶ!」


「は、ははは」


 張り付いた笑顔が、引きつっている。

 自分でもわかる程に。


「妹ののお願いは可愛いもんさ。『お兄ちゃん遊んで』『お兄ちゃん怖い夢見たから今日だけ一緒に寝て』とか、グフゥ! 想像しただけで……。それに比べて悪魔の命令というは『あれ買ってこい』『あれやりなさい』だの、グアァ! 鳥肌がぁ! ……はぁ、はぁ」


「お、大袈裟だなー」


 やめろ、頼むからそれ以上言うな。

 抑えられなくなる。


「大袈裟? 笑わせるな。妹はいるだけでその場が和む。ほんとに同じ生き物とは思えない。妹という種族なのかもしれない。姉が、同じ人間とは思えない。逆の意味でな。汚らしい存在なんだよ。分かったか!」


 プチンッ

「おい、表に出ろ」


「あ? なんか言ったか悪魔信者」


「表に出て、決闘すんぞって言ったんだよ! この残念イケメン野郎!」


「はっ! 良いだろう。だったら決闘におあつらえ向きの所がある。付いて来い」


 もう目立つ目立たないなんて関係ねー。

 こいつだけは許さん。

 姉を悪魔呼ばわりとは良い度胸だ。


 こうして俺の初めてのパーティーメンバー勧誘は幕をあけた。


★がほしい・・・・・・

すいません。黙ります。

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