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プロローグ

初めての作品です。

少しでも面白いと思ってもらえれば幸いです。

「俺の…………俺の、姉になってください!」


「………………」




<数時間前>


 私の名前はソリエ。

 今日からフォスタール王国の、カルラ街にある、冒険者ギルド東支部に配属となりました。

 今はギルド内の応接間で、私の教育係となる先輩を待っているところです。

 もちろん、ドキドキと不安で、胸がいっぱいです。

 そのせいで昨日は、ろくに寝れませんでした。


「はぁ〜」


 自然と溜息が出てしまいます。

 でも大丈夫です。私には、このおばあちゃん特製スパイスがあります!

 これは村を出るときに、おばあちゃんが持たせてくれたものです。

 そのまま舐めれば、眠気はスッキリ! 料理に隠し味として混ぜれば、ピリッとした辛さがあとをひきます。

 これさえあれば私はどんな荒くれ冒険者様がきたって、意地悪な先輩にいじめられたって大丈夫なんです!

 特製スパイスをひと舐めして、「ひゃ〜!」とベロを出していると、ギルド職員の方が入ってきて、教育係の先輩を紹介してくださいました。





 私の教育係となる先輩は、何と、このギルドの副長さんでした!

 ナチさんと言う人で、髪型は緑色のショートカット、雰囲気はボーイッシュ? でしょうか。

 ですが、身体は女らしい凹凸のある身体。

 キャッチコピーを付けるのならば、彼氏にしたい女No. 1! 

 これしかないです!


 面倒見がいいのか、教え方がとても丁寧で分かりやすかったです。

 でも、綺麗な容姿なので、見惚れてしまって、少し話が入って来ない時間もありました。反省しなきゃです。


 ナチ先輩が言うには、他の先輩方は良い人のようです。冒険者様も殆どの人が常識のある人みたいです。

 これも冒険者学校のおかげなんだとか。


 私の不安も杞憂に終わりました。めでたしめでたしです。


「じゃあ基本のおさらいはこれくらいにして、少し受付をやってみましょうか」


「はい。ナチ先輩!」


 受付は殆ど、言うことが決められています。なので事前に貰っていたマニュアルどおりにやれば問題ありません。

 冒険者の方々も、私が新人と知ってか、ぎこちなく、遅い私の説明なども笑顔で聞いてくださいました。

 私の中の冒険者様への認識を変えないといけませんね。


 そして、何人かの受付をし終わり、ナチ先輩にもアドバイスをもらいました。


「―――っていう感じで動けば、もっと効率良くなるわ。でも初めてにしては上出来よ」


「は、はい! ありがとうございます!」


「ふふ。そんな緊張しなくて良いわよ」


 本当にここに来て良かったです。

 すると、ギルドの作業室から、ナチ先輩は呼ばれてしまいました。


「呼ばれたみたいだから、ちょっと外すわね。すぐ戻ってくるから、それまで1人で頑張ってみて」


「わ、わかりました! がんばります!」


 1人になってしまいました。でも、きっと大丈夫です。冒険者様も皆さん良い人ですし、分からなかったら他の先輩方もいます。


 あっ! 冒険者様がまた1人ギルド内に入ってきました。


 何故だかギルド内がさっきよりもザワザワした気がします。


 今は、日が出て少し経ったころなので、冒険者の方々が1番来る時間帯です。空いているのは私の受付だけ。当然その冒険者様は、私の受付に歩いてきます。


 最初の挨拶が肝心です。手のひらに「辛」と書いて飲みこみます。おばあちゃんに教わった、緊張をほぐす方法です。これで準備万端です!


「お、おはようございます! ご用件をお伺い致します!」


「俺の、、、、俺の姉になってください!」


「………………」


 何を言っているのか分からなくて、目が点になって黙ってしまいました。緊張のしすぎですかね。あはは。


「ご、ごほん、すいません。もう一度、ご用件をお伺いしてもよろしいですか?」


「はい! 俺の、姉になってください!」


「かしこまりました。俺の、姉になってください、という用件ですね。では、ギルドカードの提示をお願いしま………………ってえぇぇぇーーーーっ!?」


 なんと、聞き間違いじゃなかったみたいです。どうしましょう。こんなのマニュアルには載っていませんでした。言い寄られた時の対処方法はありましたけど、これは言い寄られたと言うのでしょうか?うぅ〜分かりません。


 そうだ、聞いてみましょう。


「えっと、彼女になって欲しいのでしょうか?」


 自分でも何を言ってるんだろうと思います。でも、冒険者様が彼女になってくれと言っているのであれば、対処できます。言い寄られた時の対処方法はマニュアルに載ってますからね。えっへん!


「いや、違います。姉になって欲しいんです!」


 違いました〜。


「聞き間違いじゃなかったようですね。で、ですが、ここは普通、彼女になってください! じゃないんですか? それともこちらでは、これが普通? 私の勉強不足? うぅ〜、ギルド職員とは奥が深いですね……」


 そこかよ! と周りから聞こえた気がしますが、空耳でしょう。基本しか教えてもらってないので応用はまだ難しいです〜。


「彼女なんていりません。姉が欲しいんです! 俺は本気です!」


 黒髪、黒目で童顔の冒険者様が真剣な表情でグッと身を乗り出してきました。はじめてちゃんと顔を見た気がします。


「す、すみませんが、私はあなたの事をよく知りません。そして既に弟がいます」


「な、なん、だと……。既に誰かの姉だと……。俺はとうとう既姉者(きあねしゃ)にも手を出してしまったのか……」


 冒険者様は敬語から砕けた口調になると、今度は後ろに仰け反ってしまいました。顔に絶望のような、それでいてニヤニヤしているような、よく分からない顔になっています。ちょっと気持ち悪いです。

 ですが、そんな事も言ってられません。ギルド職員として適切な返事をしなければいけません。よし!


「既姉者? というのはよく分かりませんが、可愛い弟はいますよ。それにこれは私個人で決めていい事なのでしょうか? 両親はもういないので、お婆ちゃんと話し合わなければいけない気がします。なので、一旦、持ち帰らせてください。」




「「「「持ち帰るのかよ!」」」」




 ひえぇ〜〜。ギルド内にいる冒険者様と職員の方々が一斉にこっちを向いてツッコミを入れてきました。

 私、ボケたつもりはないのに〜。


「ちょっと何の騒ぎ?」


「あ! 先輩! こちらの方が私に姉になって欲しいそうなんですが……。今の私には決められないので持ち帰って考えてみる旨を説明したところです!」


 良かったです。先輩が戻ってきてくれました。


「はぁー。またあなた……。オトくん、ソリエは大事な新人なの。用事がないからどっかいってなさい」


 しっしっと先輩が手で帰るよう促します。

 このような態度をとるということは仲がいいんでしようか。


「相変わらずきついなーナチさんは。まぁ、そんなところが良いんだけどね。はやく姉になってくれればいいのに」


「それは、無理って何回も言ってるでしょ」


「聞こえない、聞こえないっと。じゃあまたね、ナチさん、それにソリエさん」


 オトさんと呼ばれていた方が帰ってしまいました。本当に用があれだけだったのですね。

 冒険者様は何を考えているのか分かりません。


「ソリエ、オトくんはまた来ると思うから嫌ならすぐ断っていいからね」


「はぁ〜。嫌というか、よく分からなかったというか。ナチ先輩は、オトさんとはお知り合いなんですか?」


「ただの冒険者と受付の関係よ。知り合ったのは、オトくんが冒険者になった時だから、3ヶ月くらいしか経ってないわね。因みに本名はハオトよ」


「ハオトさん、というのですか。その短期間で、あんなに仲が良いなんて、やっぱり先輩は凄いですね」


「仲が良い、ね〜。あの子は冒険者としてはよくやってくれてるからね。もうDランクだし。でもあの姉告、あ、姉告って言うのは、さっきあなたがやられたことね。あれさえなければね〜。あれを、毎回止めてたらちょっと話す仲になったってだけなのよ」


「そうだったんですか。若そうなのにお強いんですね」


 私が見た感じだと身長も私より少し高いくらいだったので、年も若そうだと感じた。14才くらいですかね。


 ランクと言うのは冒険者の制度で下からF、E、D、C、B、A、Sとあります。Fランクと言うのは本当に駆け出しの人でEランクは初心者、Dランクは初心者からは抜け出しているけど中級者まではいかない人、Cランクは中級者、Bランクは中級者と上級者の間、Aランクは上級者となっています。Sランクの人はほんの一握りの化物と言われています。どういう人なのでしょうか。


 ハオトさんはDランク。最初は試験を受けてFかEから始まります。なので、3ヶ月でDランクというのは相当、早い方でしょう。マニュアルでも平均的にEからDになるには早い人でも半年かかると言われています。


「オトくんは確か、今年で15歳だったと思うわ」


 私と3つ違いですか。若いですね〜。予想はニアピンでした。


「ふむふむ。ハオトさんは皆さんにあのような、姉告? というものをしているんですか?」


「そうね。ここの女性職員は1人を除いて全員されたわ」


「皆さんされてたのですね。1人というのは……」


「ここから1番離れた受付にいるリミナって子よ」


「リミナ先輩、という方ですか……ええっと、1番離れた受付……っ!? 私の見間違いでしょうか? リミナ先輩が物語に出てくるエルフに見えるのですが?」


 ナチ先輩が指す方を見ると、物語に出てくる、エルフのお姫様のような女性が目に入る。


 短く切りそろえられた襟足。

 右目を隠すように流された前髪。

 その銀髪は、神々しい光を放っているように、キラキラして見えます。

 隠されていない左目は、大きな黒目。少しつり上がった目尻。クリッとした二重から覗かせる眼光は、この世の全てを釘付けにしてしまうでしょう。

 肌は白く、体は無駄のないスレンダーボディー。

 正直、羨ましすぎて、嫉妬すらしないレベルです。

 比べること自体が、不敬と言われても文句が言えませんね。


 ナチ先輩と言い、皆さん綺麗すぎです。

 …………はぁ。どうせ私は幼児体型ですよ。

 いえ! そんな事言ってられません!私だって、憧れモデルボディーになってみせます! フンス!



「そ、あの子は先祖返り。真名持ちとも言われてるわね。ちなみにここのギルド長もよ」


「あれが先祖返り……。お婆ちゃんから聞いたことはありましたが、初めて見ました。凄く綺麗な美人さんですね」



 このフォスタール王国は昔々、エルフが作ったと言われています。その為、私達にはほんの少しだけエルフの血が流れているのです。

 そして、たまにリミナ先輩のようにエルフの容姿、能力の赤子が産まれ、先祖返りと言われているそうです。

 場所によっては、先祖返りを神の使いと言って崇める所もあるんだとか。


「先輩、真名持ち、真名というのはなんですか?」


「ん?あぁ、真名持ちって言うのは――」


 先輩が言うには真名と言うのは、先祖返りの方が持つ力の事だそうです。真名を唱えると、固有の力が使えるらしいです。私には想像もできません。


「と言うことは、リミナ先輩はお強いんですね」


「それは分からないわ。謎が多いのよ、あの子。いつだったかしら、何年も前に血だらけのあの子を今のギルド長が運んできたの。それ以来、ここで仕事をしてるんだけど、どうもその怪我の影響で記憶がないらしいの。だから真名も忘れてるんだって」


「そんな事があったのですか……」


「まぁでも真名を忘れてたって、私らみたいな普通の人とはポテンシャルが違うと思うけどね」


「あはは、ポテンシャルですか。でもなんで、ハオトさんはリミナ先輩には姉告をしないんですか?」


「それが分からないのよね〜。本命はあの子なんじゃないか、高嶺の花だと思ってるからとか、先祖帰りは好きじゃないとか、色々噂はあるんだけどね。結局、オトくんにしか分からない事よ。無駄話しすぎたわね。さっ! 仕事よ仕事! まだまだ覚えてもらうことはあるんだから」


 そうでした。すっかり仕事中と言うことを忘れていました。

 冒険者の方々も私が先輩に教えて貰っていると思って、私の受付に来ないようにしてくれていたんですね。なんだか申し訳ないです。うぅ……。

 でも、何でリミナ先輩には声をかけないんでしょうか。少し気になります。気にしたってしょうがないんですけどね。むぅ〜。


 とりあえず今は仕事に集中しなきゃです!

 これからもっともっと頑張らないといけないみたいですし。


「はい! 先輩!」


 頑張るぞ〜、おー!


モチベーションのためにも、どうか★をおおおおおおおおお!

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