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 あの不思議な空間で冒険者側のなんちゃって優等生吉川グループと、ダンジョンマスター側の金髪四宮グループは、個別に送還先を相談していた。


「おい、四宮。吉川達と情報共有しなくて良いのか?」


 あまり深く物事を考える事が出来ない四宮グループの辰巳がこう伝えてくる。


「バカだな。協力するとは言ったが、実際に向こうに行ったらどうなるか分からねーだろ?命がかかっている以上、安易に情報を渡すのはバカのする事だ。吉川達もそれをわかっているから、俺達とは別に話しているじゃねーかよ」


 顎で吉川グループを示すと、残りの星出と岡島もチラッとそちらを向いて頷く。


「それによ?俺達はダンジョンを展開して眷属を呼ぶまで最弱だ。向こうに着いた瞬間に裏切られて糧にされる可能性もあることくれー理解できねーか?」


「ま、まさか……でも、有りえるのかな?」


 四宮の最悪の想定に対して、流石に同郷でそれはないだろうと思いたい星出だが、湯原や水野相手であれば容赦なく始末したい気持ちになっている自分に気が付き、自信がなさそうになる。


 その予想は的中しており、かなり離れた位置で送還先を相談している吉川グループでは、あわよくば送還直後に人気が無ければ、始末してしまう事も選択肢として相談していた。


 彼らは、今この時点でレベル20。


 その力の一部を使える事に歓喜し、それ以上の力を容易に得る事が出来る餌があるのだから、真の優等生ではない吉川達の意識ではそうなる。


 互いに送還場所を打ち合わせると情報を相手に与えないようにする為か、無言で勝手にこの場から消えて行く。


 ダンジョンマスター側の金髪四宮グループは、国の外れにある少々寂れた場所()


 冒険者側のなんちゃって優等生吉川グループは、王都の中央付近。


 何故か転移直後に服装も変わり、周囲からはそこにいて当然の存在と認識されているのか、突然現れているはずなのだが驚かれるような事は一切なく、時は流れている。


「これが、異世界……よし、俺達のレベルを上げる為、さっさと冒険者ギルドにでも行くか」


 これからの戦闘に心を躍らせている、けんかっ早い辰巳が暴走する。


「バカか?俺達は対極の立場だぞ?いきなり敵地に行ってどうするんだよ?先ずは、一刻も早くダンジョンを生成して、眷属を呼ぶんだ。それくらい分からねーか?何のために栄えていない場所に来たか位、考えろや!命がかかっているんだ」


「うっ、そうだった。悪い」


 一応正論っぽく聞こえる四宮の言葉に納得している辰巳。


 その後四人は、即ラスリ王国から出ている他国に向かう街道に沿って歩き始める。


……ガサガサ……


 同一方向に向かっている人がいるが、全員何かしらの武器を持っているか、武器を持っている人々と共に行動している。


「チッ、しくじったぜ」


 自分の認識が甘かった事に漸く気が付く四宮達。


 完全な丸腰で街道を移動するのは、この世界では有りえない事だと身を持って理解した。


 と言うのも、街道の脇から突然襲い掛かって来た巨大なネズミに見える魔物を、丁度横を抜かそうと歩いていた男が一刀両断したのだ。


 この男がいなければ、レベル1の自分達では手も足も出ずに蹂躙されていただろう事は想像に難くない。


「出流君……早く眷属を呼ばないと、私達、死んじゃうよ?」


 四宮に対し、非情な現実を見る事になった星出が涙を溜めながら訴える。


 四人共に、巨大なネズミの動きに反応できなかったのだ。


 一方簡単に対処した男は、そのネズミの体の中から奇麗な水晶の様な物を取り出した後、ネズミを燃やしてさっさと行ってしまった。


 四宮達以外はまるで日常の一風景であるのかのように誰も驚いていないのだから、その雰囲気が余計に四人に焦りを与える。


「だが……安易にこんな場所で実行するのは危険だ。クソ。こうなったら、なるべくこの世界の人間の近くを移動して戦闘を肩代わりしてもらい、日が落ちる前に街道から外れて奥に行くぞ。ここは賭けだ」


 街道にダンジョンを作ろうものなら、あっという間に攻略される事は間違いない。


 目の前で見た攻撃力の高い男の力を嫌でも確認させられたのだから、安全に対しては貪欲になるのは当然だろう。


 結果的に相当なリスクはあるが、街道から外れた位置でダンジョンを生成する他ないと考えたのだ。


 実は、この世界の服装になった時のポケットに白金貨が五枚(50万円)程入れてあるのだが、そこには気が付いていないので、その白金貨を報酬に護衛を頼むと言う選択肢は彼らの中にはない。


 丁度馬車で移動している一団の中に紛れ込み、街道をひたすら進む四宮達。


「これなら、あっち(冒険者)の方が良かったじゃねーかよ。しょっぱなからこんなに苦労するなんてあり得ねーよ」


「本当そうよね、出流君。でも、ここを乗り越えれば、きっと大丈夫よ」


 こんな事をコソコソ話しながら、ひたすら歩く。


 やがて馬車は停車して野営の準備をしているようで、これ以上は紛れる事は出来ないと判断した四宮達は、そのまま街道を進む。


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