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 神々が期待しているのは、世界の安定。


 今迄にその安定を築いていたのは、長きにわたって最強ダンジョンと言われているダンジョンを管理していたダンジョンマスター二人だった。


 ダンジョンは人々にとっては生活の糧であると共に、脅威でもある。


 行き過ぎた力は脅威に早変わりするので、その力を恐れ始めた国家に対して、冒険者やダンジョンマスターとして活動している召喚者達が国家を焚きつけた。


 その結果、国家を上げて強大な力を持っているとされるダンジョンマスターの内の一人を始末する事に成功したのだが、完全に我を忘れて怒り狂っている残された一人のマスターによって大陸が混沌とした状況に陥った。


 冒険者や国家、そして彼らにさりげなく力を貸していたダンジョンマスター共に相当な犠牲が出たのだが、騎士すらも総動員した複数の国家戦力によって我を忘れて猛進するダンジョンマスターとその眷属を始末した歴史がある。


 その後は復興のために活動する必要が出てきたために、冒険者はその力を全て復興に注力し、ダンジョンマスターも相当ダメージを受けたダンジョンの回復や戦力補完の為に活動しており、余計な動きをする事は無かった。


 やがて見かけ上復興は終わったが、それまでの期間、冒険者達は復興作業に勤しんでいたためにダンジョンに侵入する頻度が激減していた。


 外敵の侵入が思わしくなかったダンジョンマスター側は、ダンジョンの復興に必要な力を蓄える事が出来ずにいるままとなっており、対極の位置にいる二つの召喚者の状態、冒険者とダンジョンマスターのバランスが大きく崩れた。


 ダンジョンマスターの強さの秘密は、眷属にある。


 その眷属は一度殺害されてしまうと、ダンジョンで生み出される魔物とは異なり決して復活できないのだ。


 その眷属を失ったダンジョンを攻め落とすのは非常に容易く、召喚者の冒険者によってその数を大きく減らしている。


 そのバランスを取るべく、今回はダンジョンマスター側が多く召喚されていた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「湯原君。やっぱり私達って、異世界に来たのですね」


「どう見てもそうだよな。だけど、なんだかんだと、あの人達は沢山サービスしてくれたよな。ありがたい事だよ」


 周囲には馬車が闊歩し、石造りの建屋、木造の建屋、更に遠くにはそびえ建つ城が見える。


 自分達は学生服を着ていたはずだが、二人共に今は周囲の人々と同じ様な服装であり、少し崩したワイシャツの様な物に長ズボン。


 そして、顔をすっぽり隠せるほどのフード付きの外套を着ている。


 この世界に到着した直後に学生服であれば相当目立つので、服については他の召喚者達と同じ対応だが、フード付き外套についてはサービスだったりする。


 他の召喚者達から発見されないように、神々が配慮したのだ。


 周囲を見回すとフードを被って行動している者も多数いるので、一切怪しまれる事無く周辺を散策する二人。


 少しだけこの大陸についての情報は仕入れているが、活動していくには情報が少なすぎるので、こんな事を小声で話しつつ情報収取を行う事にしていた。


「湯原君。コアは、何時出しますか?」


「どれくらいで生成するべき位置が発見できるか分からないから、今はまだ出さないでおこう」


「はい。わかりました。あの……なんだか頼り切ってごめんなさい。でも、正直とっても安心できるし、嬉しいです」


 意中の人にここまで言われて、嬉しくならない男はいないだろう。


 直球の言い回しをストレートで食らい、武の心をもってしても赤面するのは止められない湯原だ。


「あ、え?あぁ。どういたしまして。お、俺も水野と一緒に……」


「あの……」


 その言葉の途中で、相変わらず周囲を警戒しているので小声ではあるが、水野に遮られる。


「周りの人達、私達のような苗字で呼んでいる人って一人もいないですよ?そこから他の人達(召喚者)に情報が洩れるかもしれませんし、せっかくですから……名前で呼んでいただけませんか?」


 これは確かに湯原も気になっていたのだが、突然馴れ馴れしく名前で呼ぶ事が出来なかっただけだ。


 だが、日本の名前のままではやはり違和感があるのは否めないので、少しアレンジする事にして、二人で相談した結果はこうなった。


「お、俺もそうしたいと思っていたし……じゃあ、これから宜しく!カーリ」


「はい。こちらこそよろしくお願いしますね。おんぶにだっこで申し訳ありませんが、お荷物にならないように頑張ります。セーギ君!」


 あだ名の様な感じにはなっているのだが、何故か互いに真っ赤になりながら歩いている。


 フードを被っているおかげでその表情を他人に悟られる心配はないのだが、この短い時間だけは、何とも言えない甘い雰囲気を味わう事が出来ていた二人だ。



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