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 もう見えない程に進んでいるイーシャとプリマだが、レベル99の眷属の一体であるスラエであれば気配を悟られずに即座に追い着く事が出来る。


 スライムなのだが、その移動速度は正に瞬間移動と言っても過言ではない程であり、プルプル震えたスラエは透明に変化すると、二人の後を追うように消える。


 スラエの分裂体がダンジョンに残っているので詳細情報は即座にわかるのだが、大きな危険が無ければイーシャとプリマが戻った時に直接報告を聞く事にしている湯原と水野だ。


「そう言えば、以前説明してくれた俺達のダンジョンが一気にレベルが上がった時の話……あれってさ」


 二人とスラエを見送った後、再び湯原のダンジョンコアルームに集合している面々を前に、思い出したかのように話し始める湯原。


 ある時、一気にダンジョンレベルが40近くまで上昇し、髪と目の色が金に変色して長寿を得た時があったのだが、ハライチやミズイチの説明によれば、人族をダンジョンに連れ込んでいない以上は他のレベルの高いダンジョンマスターの眷属を吸収したのだろうと言う話だ。


「そんな奴らがウロウロしていると言う事は、今回のあの場所もその関係者がいる……って、まぁスラエがいるから大丈夫なはずだけどね」


 既にダンジョンの糧になっている以上はその糧の詳細を知る方法は存在しないのだが、この推論は正解で、他のダンジョンマスター同士が戦闘していた結果瀕死となっている眷属を偶然見つけて連れ帰ったのだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 時は、湯原と水野のダンジョンレベルが一気に40近くまで上昇する前に戻る……


「淀嶋ジィ、最近僕の周りに鬱陶しいコバエが飛んでいるんだよね」


「む?おぬしもか?水元の。実は儂の方も同じでのう。なれば……やはり弦間かのう?」


「そうとしか考えられないんだよね。弦間のレベルは自称60……を信じないとしても、どう見ても僕達よりは上っぽいから、相手にするのはちょっと面倒くさいかな」


 二人のダンジョンマスターが弦間と言うダンジョンマスターの話をしているが、この二人はダンジョンレベル36近辺で得られるダンジョン同盟と言う力と契約できる眷属の力で同盟を組み、更には転移魔法陣Cを使って互いのコアルームに出入りできるようになっており、時折こうして情報交換を行っている。


 同じ側(ダンジョンマスター)であれば格下を始末しても糧にはならないのだが、この弦間と言うダンジョンマスターは非常に支配欲が強く、ダンジョンマスターだろうが冒険者だろうが、全てを支配しようと暗躍している。


 今回自分達の周囲を配下の魔物を使って調査してきているのは、糧にするためではなく支配下に置くためだろうと推測は出来るのだが、相当な強者である為に直接の戦闘は避けたいと思っている。


 淀嶋と水元二人の予想通り、この弦間はあらゆる手を使って召喚冒険者だけではなく、糧にすらならないダンジョンマスターも制御する事で制限付きの上限、ダンジョンレベル上限60に到達しており、眷属も制限付きレベル上限60となっている強者だ。


 初期の条件をクリアしていない以上はどうあってもこれ以上ダンジョンレベル、眷属レベル共にレベルアップは見込めないので、ダンジョンレベルが不足して召喚できる魔物はレベル50未満であったりするのだが、湯原達とは異なり、ダンジョンレベル60から先の能力を知る手段を持ち得ていないので、中々上昇しないレベルにヤキモキしながらも、今後新たに得られる力に胸を膨らませていた。


 実際に眷属に与えられる<保有レベル>も、全ての眷属がレベル60になった途端に0になって増加しなくなっているのだが、一方で内包魔力は増加し続けているので、その内ダンジョンのレベルも上昇するだろうと楽観視している。


 重ねて言うが、初期条件をクリアしていないので絶対にそのような事は起こらないのだが……ダンジョンレベル60でも相当な能力を持ち得ており、淀嶋と水元が四宮と辰巳に対して行ったように、他のダンジョンマスターを配下として従属させる事が出来るのだ。


 自らのレベルが中々上昇しないのであれば、手足の配下を増やして物量での攻撃力を上げる事も重要だと考えている弦間は、とある人物の指示もあり、ある程度の力を持っている召喚ダンジョンマスターに目を付けて、眷属を使用して片っ端から襲い掛かっていた。


 その攻撃対象にはレベル47淀嶋のダンジョンと、レベル46の水元のダンジョンが含まれていたので、二人が感知したように魔物を使って事前調査を行っていたのだ。


 水元と淀嶋のダンジョンは同じラスリ王国の領土内に存在し、弦間のダンジョンは隣国であるコッタ帝国に位置している。


 距離的には弦間のダンジョンからは馬車で20日程度必要とする距離であり、レベルが高くて近いダンジョンは他にもある。


 例えば、同じコッタ帝国に位置している美智のダンジョンでレベルは48だが、そこには対極の立場であるはずの召喚冒険者である妹の朋美がおり、金目金髪である以上どう見ても高レベルである事から、同時に異なる立場の者を相手にするのは危険と考えて、それ以外のダンジョンマスターを配下に置いて戦力増強の上、期を見て襲い掛かる事にしていた。


 この弦間は非常に支配欲、自己顕示欲が強く、態度が悪い。


 当然普通の人であれば反撃するし相手にもしなくなっていくので、自業自得ではあるが日本にいた頃から大の人嫌いになっていた。


 そして得てしまったダンジョンマスターとしての力。


 この力で全てを支配して、気に入らない人物を蹂躙してやろうと企んでいた。


 呼び出した眷属は、人嫌いが功を奏したのか全て言葉を話さないタイプではあるのだが、やはりそこにも支配欲がある為に信頼関係はあまり良くなく、当然内包魔力等の吸収率も良くはないのだが、その状態で制限下にある上限値レベル60にまでなるのだから、恐ろしい執念だ。


 その支配欲と自己顕示欲から周囲の調査を行って、自らのレベル60にはとある人物を除いて誰も至っていないと確信し、ダンジョンレベルを公にしている。


 弦間の眷属は、<蟻族><鳥族><蜘蛛族><馬族>を<四天王>を選択して呼び出しており、レベル上昇に伴って<蜘蛛族>が契約魔法を取得した事から、他のダンジョンを配下に置く手段を得ている。


「クック、お、お前達。忌々しい淀嶋と水元の手足をもいでくるんだな。こ、今回は、アリとウマで行くんだな」


 主には逆らえない眷属はレベル60の力を使って、既に仕入れていた魔物からの情報によって二人の主力の眷属の内の一体である<淫魔族>が出没する場所に高速で移動する。


 そこはラスリ王国の領土であり、コッタ帝国と接している深い森。


 淀嶋と水元は、周囲を飛び回っているコバエを眷属に調査させていたのだ。


 淀嶋と水元は、自分達を調べるかのように飛び回っている小さな魔物はどう考えても弦間の魔物だろうとは思っていたのだが、確信を得るために互いに眷属を一体出して調査する事にした。


「水元の。では儂は<淫魔族>が二体おるから、一体を出そう」


「淀嶋ジィ、僕も同じにするよ。その方が連携を上手く取れそうだよね」


 淀嶋のダンジョンレベルは47であり、眷属はこうなっている。


  <淫魔族> レベル55

  <淫魔族> レベル20

  <光 族> レベル48

  <蜘蛛族> レベル45


 同盟を組んでいる水物のダンジョンレベルは46であり、眷属は、


  <淫魔族> レベル52

  <淫魔族> レベル20

  <光 族> レベル48

  <自然族> レベル45

 

 となっている。


 各眷属のレベルの振り分けは、同盟を組む前から二人の仲が良くなり始めており、互いに危険を冒しても顔合わせをする必要があると考え、その時に意識合わせをしたためだ。


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