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「一階層は、キャンプ場!遊んで泊ってくれれば、それだけで糧になるからね!」


「素敵ですね、セーギ(湯原)君!!何も冒険者の方だけに来ていただくのが目的ではないですものね。フフフ、キャンプしている方もダンジョンの侵入者……そこに気がついているマスターはどれほどいるでしょうか?」


(カーリ)様。推測になりますが、歴代ダンジョンマスターの誰もその境地に辿り着いてはいないと思います。貴方は何か知っていますか?ハライチ」


「いいえ、私も正直驚いております。流石は(セーギ)様です」


 ダンジョンの糧になるには、対極の位置にある冒険者の侵入が最も糧になると知られているのだが、まさか普通の人族を楽しませる階層を作り、その滞在を糧とするとは思いつかなかったハライチとミズイチ。


 確かに、冒険者は人族の仕事の一つとして成り立っており、逆に人族であれば誰でもなり得るのだから、人族が滞在すれば大きな糧になる事は間違いない。


 第一階層の設定から、知識の塊である<淫魔族>二人の想像を超えて見せたセーギ(湯原)


 必要であれば分割エリアを増加して理想の変更を行いながら、想定通りのダンジョンになる様に作業を続けている。


「じゃあ、一階層はそれで良いよね?広い草原と森林が隣接している状態にして、昼夜が存在して雨は無。気温も少しだけ高めの状態で飲める水の小川を作って泳げるようにして、魚も投入っと!」


「流石は(セーギ)様です。ですが、無条件で楽しめる階層は……一階層だけでも相当な広さですから、二階層からは少しで良いので、迎撃も考えて頂ければ……」


「ハハハ、わかっているよ、ハライチ。俺も他のマスターや召喚冒険者の対策を怠る程バカじゃないよ。キャンプで楽しむ人と敵を区別するために、一応一階層には転移魔法陣B、二階層には転移魔法陣Aを目立つように置いておくよ」


 転移魔法陣Aは、侵入者をダンジョンの入口方面に送り、転移魔法陣Bは同じく侵入者を進む方向に送り込めるものなので、攻略を行う侵入者は直接二階層の入り口に飛べるし、二階層から直接一階層の入り口に飛べる事になる。


「で、二階層だけど……突然殺傷能力を上げるのは気が引けるからって、贅沢な悩みだよね?」


 湯原のこの余裕には当然理由があり、眷属は全てレベル上限の99に達しており、更には召喚魔物を含めたダンジョン所属の魔物、当然イーシャとプリマやハライチ、ミズイチも含まれるのだが、その全員に対して、今まで眷属に渡してレベルアップさせていた<保有レベル>を与える事が出来るのだ。


 その上召喚時点でレベル99の魔物も準備できるようになっており、罠も致死性どころか即死級の罠まで設置可能になっている。


 ある意味何でもありなので、一階層のように侵入者が危険を感じずに遊べる状況を創り出せる余裕があったのかもしれない。


「じゃあ、二階層は少しだけ体力が必要な……体力が奪われる階層にしますか?セーギ(湯原)君」


「それ、良いね!じゃあ、楽しむ所を少し減らして、昼間は小川で泳ぐと寒いと感じるくらいの気温で変動なし。晴天ばかりじゃ面白くないから、時折雨も降る……と。で体力を奪うには、傾斜だろうな。緩い山岳地帯のイメージにしようか」


 湯原と水野も楽しくなってきたのか、どんどんと設定が決まっていくのだが、既に分割して準備されているエリアにはそのような設定がなされている場所はなく、新たに拡張・分割する事になっている。


 今までのエリアの設定は、ハライチとミズイチによる敵を迎撃する事に主眼を置いた設定であるので仕方がない。


「じゃあ、次の階層で二階層の疲れを癒していただいて……」


 水野の言葉を聞いて、思わずハライチとミズイチは互いの顔を見合わせる。


 どこのダンジョンにも、侵入者の疲れを癒す条件を入れている事などは有りえないからだ。


 一階層の設定でさえ驚いたのだが、まさかの水野の発言にどう止めるべきかを思案していると、


「いいね!そうしようか。じゃあ……」


 湯原まで嬉しそうに(・・・・・)同意してしまったために何も言えなくなってしまったが、内心では、それでは二階層の意味が全くないのではないか……と言いたくて仕方がなかった。


 水野は優しさからこのような事を言っていたが、湯原の方は……四階層から徐々にではあるが侵入者に対して厳しい条件とするつもりであり、二階層すら超えられない者はそれ以上侵入するに値しないと警告を発する意味も含めてこの設定にしていた。


 少し無理をした者が楽に戻れるように……とは言え、転移魔法陣で戻られると二階層の意味がないので、一旦三階層で回復してから戻れるように配慮した結果だ。


「でも、癒しの階層で変に侵入者が暴れたり、ひょっとしたらその場に多少無理をしてきた方に悪さをされては困りますね」


「そう。だから、一階層から三階層まではレベル99にした監視のアイズを置くし、召喚魔物の<鎖族>、チェーの仲間を配置しよう!」


 眷属として召喚したわけではない<鎖族>であれば通常レベルは25と高めではあるのだが、レベル上昇は非常に難しい魔物になっている。しかし今の二人には関係ない。


(セーギ)様。鎖族であれば初期召喚レベルは25で、レベル以下の者を完全に捕縛できる力のみ(・・)を持っております。発動されている魔法や異常状態を捕縛する事は出来ません。もちろんチェー様とは異なり分裂する事も不可能です」


「……そっか。わかった。何かあれば、チェーに向かって貰えば大丈夫だよね?」


 最初からチェーの分裂体を設置しても良いのだが、分裂体であってもレベル99の存在があれば、その存在を隠していたとしても力の無い人族とは言え敏感な者には得体の知れない恐怖心を与えてしまう可能性があるので、緊急事態時にのみ対応させる事にしている。


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