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 湯原の質問に答える神。


「……お前は湯原と言ったか?期待が出来そうだ。詳細の説明をしなくなってから久しいが、あの二人と同じ事を聞いてくるとはな。日本では有りえない力を与えられても冷静さを保てた人物、どうしても期待してしまう」


 一人の神が感心したように話すと、もう一人が質問に答えてくれる。


「確かにその通りだ。質問に答えよう。誰もが四天王……四体の眷属の方がお得と考えるだろうし、事実今回のダンジョンマスターの様子からも、欲望にまみれた同一種族を四体呼び出すだろう。種族によって得手不得手が有るので、仮にレベル差が大きく有ったとしても敗北する事も有るのだが……と、話が逸れたな。実は……」


 説明によれば、呼び出せる魔物はダンジョンのレベルに応じて種類、数が決められるが、眷属については総合でレベル297……呼び出した個体数で分割する事になるので、三傑の場合は各個体の成長限界が最大レベルの99になる。


 四天王の場合と三傑では呼び出せる眷属の種類も異なり、四天王を選択すると選択肢が大幅に減るらしい。


 三傑であれば最大レベル99の眷属となるのだが、もちろんこれは成長限界であり、召喚初期はレベル30を召喚した眷属に分割する事になる。


 そうなると四天王の場合、一体の最大成長限界レベルは297を四分割するので74にまで落ちる上に、初期のレベルも30を四つの個体に分ける事になる。


 この話を召喚者にできたのは、以前ダンジョンマスターが暴走してバランスが崩れた事によって説明を止めてからは二度目であり、神は湯原の冷静さから以前の様な危機的状況にはならないだろうと判断し、更に事情を説明する。


「……つまり、ダンジョンコアを一度顕現してから一月後にダンジョンを生成しないと、上限レベルが60固定。その後更に一月後に眷属を召喚しないと、こちらも上限レベル74付近で固定と言う事ですか?」


「数の上ではそうだが、実際はダンジョンレベルに応じて眷属のレベルが上がるから、レベル74になる事は難しいだろう。だが、それだけ……日本で言う所の環境適合とでも言うのか?レベル99になるのであれば、そこまでの力を得るための期間が必要なのだ。この事実を知っているダンジョンマスターは、今はお前達二人だけ。長い歴史の中での召喚者達を含めると、過去にはいたのだが……」


「あっ、俺達はダンジョンマスター側だったのですか。そうなると、仮に直ぐにダンジョンを作成して眷属を呼んだとしても、ダンジョンのレベル上限60の制約で眷属も実際は上限が74としても60位にまでしか上昇できない……と言う事ですね?じゃあついでと言う訳ではないですが、俺達二人で一つのダンジョンを管理すると言う事は出来ますか?」


「眷属については均等にレベルアップさせればその通りだ。ダンジョンの統合……残念ながら生成時にそれは出来ないな。だが、隣接する形で作れば問題ないだろう?」


 湯原としては、神のこの一言で唯一の味方であり好意を寄せている水野と共に行動できる事、そして守れる事に安堵していた。


「では久しぶりに出会えた気の良い召喚者達よ、旅立つと良い」


 神の一言で場所を決めにかかる湯原と水野だが、向こうに到着後に即始末される可能性もあるので、場所選びは非常に慎重になっている。


 今回の(・・・)召喚者は大陸の中のとある国家、ラスリ王国のみにこの場から送還できるようで、全く人気のない場所か、逆に王都のように人の溢れる所か……非常に判断に迷っている。


「迷っているようだな。お前達にはもう少しだけ助言をしておこう。気になっているのは先行して向こうに行った連中だろう?あの連中もかつてない程の低俗っぷりだったからな。何も考えなしで向かっては、ダンジョンマスター側はダンジョン生成すらしていないので戦闘力は皆無故に除外できるが、冒険者側には始末されかねない勢いだったな。そこを気にしているのだろう?」


「そうなのです。私達、何もしていないのに……」


 極限の状態で初めてかけてもらえた優しい言葉に思わず水野が反応したのを見て、再び神が微笑みながらこう告げた。


「そこで少しでも生存確率を上げるために、やはり王都に向かう事を勧める。冒険者ギルドも多数あるので今回の召喚者達とかち合う可能性も少ないし、素顔を隠して様子を見れば人ごみに紛れる事が出来るので、見つかる可能性は少ないだろう。大した情報を与えられずに済まないな。無理やり召喚しておいて、申し訳ないと思っている」


「……そう言えば、帰りたいと言う感情が無い事を不思議に思っていました。見た限り、今回召喚された他の者もそのように見みえたので、何かされましたか?」


 湯原の鋭い指摘に、再び二人目の神が反応する。


「湯原と言ったな。本当に鋭い男だ。その通り。勝手な事とは重々承知しているが、帰還願望についてはなくさせて貰っている。即そこまで気が付いたのはお前が初めてだ。だが、感情を操作している事については申し訳ないと思っている」


「いいえ。その感情が無い為かは分かりませんが、不思議と悲しいと言う事も有りませんので。事情もおありでしょうから、受け入れますよ。アドバイスありがとうございました。行こうか、水野?」


「はい、湯原君。皆さん、ありがとうございました!」


 こうしてこの会話以外にも神々からのアドバイスを貰い、王都に送還される二人。


 残された神々は……


「あの二人であれば、長く平和な時間が続くかもしれないな」


「あぁ。長きにわたって安定を保ってくれたあの二人にそっくりだからな。大いに期待できそうだ。だが、もう我らには召喚できる力は残されていない……最後の賭けだ」


 こう呟いて、姿を消した。


 実は送還先の世界は神々が言っていた通りに長きにわたって安定していたのだが、それにはもちろん理由がある。


 会話の中でも出てきていた慎重な者……ダンジョンマスター側のとある人物が非常に慎重な人物であり、暴走している冒険者やダンジョンマスターを制御、最悪は始末してくれていたのだ。


 当然他の召喚者達からは目の敵にされ、事情を知らない冒険者達からは相当レベルの高いダンジョンとして攻略の目標とされていた。


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