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「主様。この階層分割は非常に重要です。将来的に増やしたい構想の階層を詰め込めます。その後階層移動を行うのですが、この際に分割されている階層に対して階層追加を同時に行う事により、それぞれが新たな階層として認識されます。一気に行えば、4階層の条件のまま全ての階層を増やす事が出来るのです!」
この階層移動もレベル26付近で得られており、湯原と水野は既に設置してある階層を入れ替えるものと認識していたのだが、やはり大きく異なる使用方法があったのだ。
分割した階層を四階層の中で相当数造り、階層移動と階層追加を同時に行う事により、分割された階層が全て新たな階層になるとの事だ。
それも、四階層の状態での内包魔力量だけで……だ。
今までに仕入れている情報では、最強と言われていたこの場所に元存在していたダンジョンも数十階層、噂話程度の情報では、現在稼働しているダンジョンでも最下層は50階層程度ではないかと言われている。
そうなると、仮に4階層で何かを行う際の内包魔力が100必要だとして、同じ事を50階層のダンジョンで実施すると、五階層毎に倍になる……つまり2の10乗、1024倍の内包魔力である102400が必要になるのだ。
こうなってしまうと、おいそれとダンジョンの強化を行う事が出来なくなる。
それを気にせずに一気に行える事になるのだから、この情報は値千金以上の価値があるのは間違いない。
「大変申し上げにくいのですが、恐らく皆様ご存じの通りに私達<淫魔族>は夜と言う環境でなければレベルに合致した力を発揮する事が出来ません。私達も主様をお守りさせて頂きたいので、二階層の分割後の一部を夜の設定にして頂きたくお願い致します」
「もちろん問題ない。宜しく!」
「私も、こちらこそよろしくお願いします。私のダンジョンには、コアルームで警戒して下さっている眷属の一人である<属性族>のレインちゃんがいますので、後程紹介させて頂きますね!」
こうして、今現在保有している内包魔力の話は終わったが、<淫魔族>の話はまだ終わらなかった。
「主様、その目と髪が金色になったのには理由がございます」
異世界に順応したために目と髪が変色していたと思ってあまり気にしていなかった湯原と水野は、再び話始めたハライチの言葉を真剣に聞く。
もちろん絶対の主である湯原と水野に関する話であり、自分達もその変化に対する知識が無いので、眷属達も真剣だ。
「その変化は召喚者の方々、冒険者の方にも言えるのですが、レベル40を超えた段階で必ず起こる変化でございます。見かけの変化の他には、大幅に寿命が延びる事になります」
「それ以外の変化ってあるの?例えば……目からビームが出るとか?」
「ビーム……が何か存じ上げませんが、目から何かが出ると言う事はございません。あくまで今迄の状態のまま寿命が大幅に伸びたとお考え下さい」
自分で言って少し恥ずかしくなった湯原と、真剣なハライチの返しをみて思わず吹き出してしまう水野だ。
「プッ、フフフ。ごめんなさい。フフ、セーギ君も、まだまだ少年なのですね?」
「う、まぁな。そうなると、金目金髪が全員召喚者のレベル40以上と言う事で良いのかな?」
「いいえ、元より金目金髪の種族、人族も存在しますので、一概には申し上げられません」
危険な相手を見分ける一つの指標になるのではと期待したのだが、そこまで都合の良い話ではないらしいが、逆に自分達が町に行っても特に注目されない事になると判断する。
その後も、二人の<淫魔族>の知識の泉は枯れる事が無かった。
眷属として召喚している全ての者達の、今後得る事になる能力までを説明し始めたのだ。
自らの力の事ゆえに、眷属達もソワソワしつつ質問すらして見せている。
もちろんチェーやスラエ、スラビ、ビーはこの場にいるデルを通してだが……
最終的には、全眷属が物理・魔法耐性を持つ事だけは変わらなかったが、途中では鑑定の能力の他特に重要視されたのが、ビーが内包魔力を生成できるのだ。
その能力をコピーできるようになるスラビ。
他にも細かい条件や能力の説明があり、眷属達のやる気も上昇している。
想像を軽く超えて来る知識を披露して見せた二人の<淫魔族>の話を聞いて、やはり情報は命と直結すると改めて感じた湯原と水野だ。
「で、その情報はあいつ等は知っているの?」
「いいえ。その……欲望にまみれる様な主には本能による強制の忠誠以外は誓うつもりはなく、何も教えてはおりません。周囲のダンジョン最下層が50階層程度と言う情報からも、誰も知り得ていない情報ではないかと思います」
「セーギ君。あの二人がこの情報を知っていれば、こんな状況にはなっていないと思いますよ?」
「それはそうだな」
こうして有りえない情報を得た二人の話は、それぞれの内包魔力をどのように使うべきかに移行する。
ここで一旦スラエとビーが水野のダンジョンのコアルームに行き、レインが湯原のダンジョンに来て構想を練る。
以前は二人で個別に検討しようと言っていた事もあるのだが、ここまでの情報を考慮すると、共に考えた方が有意義だと言う結論に至っていた。