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「わ~、凄いなの」
「突然、イーシャが出てきたなの!!」
設定終了後に、コアルーム間の転移魔法陣Cのチェックを行い、イーシャとプリマが楽しそうに遊んでいる。
残念な事にコアルームから出ると只々広くて薄暗い岩の空間があるので、遊び場としては不適切なのだが、ここはこれから内包魔力が増えてきてから改良すれば良いと湯原と水野は考えている。
「セーギ君。これから、魔物の呼び込みをしますか?それとも、今迄のように暫くは活動しますか?」
「取り敢えずここまで来訪者がいないのであれば、他のダンジョンから攻められないとも限らないから、一気に力を付けた方が良いのかな?う~ん、難しいね」
一応一階層は偽装しており、未だダンジョンと認識されてないところに魔物が集まれば怪しまれる。
訪問者がいない事からある程度の時間は稼げるとは思っているのだが、恐らく眷属を使って情報収集をしている他のダンジョンマスター達に対しての情報は何もない。
初期に召喚できる眷属の詳細を知っている湯原と水野としては、このダンジョンの周囲に存在している蜘蛛や蟻、鳥ですら敵の眷属の可能性であると認識して動かなくてはならないのだ。
今の時点ではダンジョンマスター側からの攻撃や接触が無い事から、一先ずは自分達の作戦通りに出来立てのダンジョンについては明らかになっていないだろうと判断はしているのだが、何時までもこのままである訳がない。
ダンジョンマスター側も新たなマスターが召喚された事は絶対に掴んでいるので、長きにわたって生存しているマスター達であれば必ず情報を掴みに来るはずだからだ。
その後、敵になるのか味方になるのかは別の話だが、少なくとも情報が洩れる前にはある程度の力が必要になるのは間違いない。
いくら上限レベルが最大の99であったとしても、そこに到達する前は等しく弱者なのだから……
「よし。せっかく二階層を作ったから、ここに相当数の魔物を保管しよう!」
「そうですよね。わかりました。そうしましょう!」
「では、某とレイン、イーシャ様とプリマ様も護衛に残り、我らはコアルームではなくダンジョンの外付近を警戒致します」
「頑張るなの!」
「絶対にご主人様を守るなの!!」
この二人もレベル7になっており、永遠のレベル1の湯原や水野では本気で移動されるとその姿を追う事も出来ない程になっている。
そして、外を守るデルとレインはレベル30。
ここを突破されては如何にイーシャとプリマでも敵から守り切る事は出来ないのだが、そんな事はお構いなしに気合が入りまくっている。
こうして残りの眷属はダンジョンから出て消えて行く。
今回はスラエ、スラビ、ビーの本体も出撃する程の力の入り様だ。
その日の晩、既に広大な二階層には相当な数の魔物が存在している。
半分程度はビーが新たに手に入れた能力である麻痺毒によって倒れており、その他の魔物達もスラエによって部分的に消化されていたり、スラビやチェーによって手足がおかしな方向に曲がっていたり……
一体として真面に動ける魔物は存在していなかった。
当然この階層はコアルームに直結しているので、眷属四体としても無事に歩けるような状態で二階層に魔物を入れる事等断じて許容できなかったのだ。
ほぼ全ての魔物を収納して運んできたのは異次元収納の能力を持つスラビであり、おかげで一切目立つ事無く大量の魔物をダンジョンの糧とする事が出来ている。
存在している段階で糧になるのだが、やはり相当痛めつけられているので徐々に死亡してダンジョンに吸収されて行く。
その不足した分を充当する方法で動いているのだが、既に二階層に動けないまでも大量の魔物がいる以上、狩り出るのはスラビとビーだけになっており、スラエとチェーは二つのダンジョンの二階層のコアルームに近い扉の前で警戒している。
時折安全そうな場合に限ってイーシャとプリマに止めを刺させる事で二人のレベルを上げる事も出来ている。
一月以上この行為を繰り返していたので、流石に他のダンジョン所属の魔物も含まれており、自らの配下が急減した事を把握した一部のダンジョンマスター達が魔物を配置していた場所の調査に乗り出した。
自らのダンジョンの近くで狩りを行う程抜けてはいない眷属なので、他のダンジョンマスター達は何もない場所を必死で捜索する事になっているのをあざ笑うかのように、定期的に狩場を変えている眷属によって、魔物はその数を減らしていった。
着実に力を付けている二つのダンジョンは、ここまでレベルが上昇した。
因みに、保有レベルは既に眷属に対して与えて使い切っている。
<湯原>のダンジョン レベル41 内包魔力6430 <保有レベル0>
<水野>のダンジョン レベル40 内包魔力6200 <保有レベル0>
「これで、ダンジョンをさらに強化できるな!」
こうして再びダンジョン強化が行われる事になったのだが、一方で四宮達のダンジョンにも大きな変化が起こっていた。
街道付近の冒険者を狙いすぎたため、ついにダンジョンの所在がバレたのだ。