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 相当な破壊音がしているので少々離れた街道にもその音や振動は伝わっているのだが、夜に何も備え無しで動くような者はいないために、周囲の警戒を行う程度に留めている。


 だが、立場が異なれば必ずしもそうではない。


 ダンジョンマスターは常に眷属を使って情報を仕入れようと活動しており、そこには湯原と水野も含まれる。


 ある程度力を得ているダンジョンマスターにとってこの場所は、街道に近い場所である為に旨味のある情報……敵対する眷属や冒険者についての情報はないだろうと考えられており、新たなダンジョンマスターに関しては、人族が新たなダンジョンを発見して噂になった瞬間に、攻略している人族も含めて一気に始末しようと考えており、幸か不幸か王都等の人が多く集まる所に情報網を広げていた。


 いくら初期のダンジョンマスターと言え即座に敗北するとは考えていないので、今回の信子(三原)の様な召喚者の冒険者が同行しているとは夢にも思っていない。


 湯原と水野だけはこの世界の情勢を知ると言う意味でも、安全に情報収集を行うと言う意味でも、レベルの高いものが存在している可能性の低い街道周辺を偵察させていた。


 同郷の者達、冒険者側とダンジョンマスター側の情報を得る事も目的の一つであり、既に集めた情報や四宮達の性格から、恐らく街道に近い人気のない場所にダンジョンを作成しているだろうと言う考えも有った。


 この場にいるのは、分体が作成可能な三体、スラエ、スラビ、ビーの分裂体達だ。


 本体とは即座に意思疎通が可能で、その意志をデルやレインが通訳している為、夜ではあるのだが情報共有が行われている。


「思った以上に簡単に情報を得る事が出来たね、カーリ(水野)


「そうですね。でも、あの信子(三原)さんと言うような方が大勢いるのであれば、気を付けなくてはいけませんね」


 残念ながら、更に分裂した分体が信子(三原)を追おうとしたのだが、レベル差による身体能力の差から振り切られてしまったのだ。


 その分、近くにあるのであろう四宮達のダンジョンの情報を得るべく活動している。


「でも、不意打ちとは言えこっちの追跡を難なく振り切るような人物(三原)にあそこまでの怪我を負わせる……相当レベルが上がっていると見て間違いないだろうな」


我が主(湯原)。どれ程レベル差があろうが、某を始めとした眷属一同が必ずお守り致します事、ここに誓います!!」


 何故かレインも深く頷き、人型ではない眷属達もせわしなく動いている。


 因みに、時間も時間なのでイーシャとプリマは夢の中だ。


「いやいや、そこを心配している訳じゃないから。でも、ありがとう。デル、皆」


「フフフ、では話を戻しますね。このままいけば、恐らく四宮君達ダンジョンマスター側の勝利ですね?」


「はい。あの信子(三原)と言う冒険者がいれば全く逆の結果でしたが、既に<淫魔族>によって正確な判断ができない吉川と笹岡と言う男達も冒険者の敵に回りますので、この結果は覆らないでしょう」


 水野の問いかけに、眷属であるレインが答える。


 他の眷属も否定するような行動をとらない為、総意であると判断した湯原と水野。


 この世界の能力を使った戦闘についての知識は持っていないので、眷属の意見の総意であれば疑う必要はないと考えている。


セーギ(湯原)君。どうしましょうか?同じ立場の者を助けるか、冒険者側をダンジョンに引き込んで生活してもらい糧とするか、成り行きを見守るか……難しいですね?」


 いくら心の優しい水野としても、一部操られているとは言え世話になった者を容赦なく裏切り、そして自分を含めた同郷の者を平気で狙いに来る冒険者組である吉川達を助けたいと言う気持ちは無くなっている。


 一方のダンジョンマスター側の四宮達に対しても、日本にいた頃からの態度、あの空間で獲物を狙うような目で自分達を見ていた事から、こちらも助けるに値しないと思っているのだが、結論は湯原に委ねる事にしていた。


「そうだな。どっちをとってもメリットとデメリットがありそうだけど、情報が不足しているんだよな。成り行きに任せて静観……かな?」


「そうですね。あの<淫魔族>のレベルは32なのですよね?こちらの戦力はレベル20ですから、いくら戦闘能力が低いと言っても厳しいですよね?」


 湯原の決断に対し、水野も一応自らの戦力の確認をするために眷属を見回すが、全員が少々悔しそうに肯定する。


「あ、ごめんなさい。皆さんの事を変に言うつもりはないのです。皆さんのおかげで、このダンジョンもレベル11になっているのですから……本当に頼りにしています!」


 その表情を見て、自分の失言を反省してすかさずフォローする水野だ。


 こんな話がなされている混沌の時代のダンジョンとは異なり、四宮達のダンジョン近くの街道奥では、戦闘が継続されている。


「ちょ、ちょっと!よっし~(吉川)ささっち(笹岡)、何すんのさ!」


 虚ろな表情で襲い掛かって来る吉川と笹岡の攻撃を何とか捌いている椎名。


 同時に襲い掛かって来るシノイチとタツイチの相手は、無条件で藤代が行う事になっている。


 こうなると火力の乏しい藤代と椎名が勝てるはずもなく、敗北する。


 シノイチとタツイチは、自らの主に対して積極的に益になる行動をとらなくなっているので、今回の相手はどう見ても召喚者の冒険者である事から、主が大幅なレベルアップになる為に命まではとっていない。


 だが、この四人が共に行動し続けると自らの安全を脅かす可能性があるので、制御できる男二人を遠くに移動させるにとどめた。


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