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 四宮達ダンジョンマスターの四人は、眷属召喚直後にはそこそこの情報共有を行っていたのだが、もうそのような事は一切しなくなっていた。


 ダンジョンを作成してしまったので、隣接した四ダンジョンと言う位置は変えられない事に苛立ち、安易に四宮についてきて危険な状況になりつつある事を激しく後悔している女性二人の星出と岡島。


 この時点で四宮と辰巳に対して恋人としての気持ちは二人共に一切なく、偉そうな事を言っていた割には無計画であった事実に漸く気が付いていた。


 眷属召喚できる枠全てを<淫魔族>にしていたと聞いた時から不安だったが、最近の行動は目を覆いたくなるように欲望だけで動いているので、できる事なら一刻も早くこの場を離れたかったのだ。


 暫くは怯えて慎重に生活していたが、最近は冒険者や他のダンジョンマスターからの襲撃が一切ない事に安心し、一体の眷属を外に出して獲物を狩ってこさせて残りの三体と常にお楽しみ……と言う事を繰り返していた。


 これは四宮も知らない事だが、召喚直後にレベル27としていた<淫魔族>であるサキュバスのシノイチも、四宮に対する信頼関係は既に無くなっている。


 実は、召喚直後はシノイチだけは見張りをさせていたので欲望の対象になっておらず、翌日に侵入してきた魔物をダンジョンに吸収するように自ら(・・)進言していた<淫魔族>であるサキュバスのシノイチだが、その日の夜には眷属故に抵抗する事は出来ないが、強制的にその欲望の捌け口になってしまい、それ以降は聞かれた事だけを淡々と返すだけになっていた。


 この件に関しては、同じく<淫魔族>であるインキュバスを召喚している女性陣二人にも言える事で、本来多くの知識を有している<淫魔族>は宝の持ち腐れになっている。


 女性陣のうちの一人である岡島が召喚した人型の<光族>は、<淫魔族>とは異なって童顔ではあるのだが、その姿を見てこちらも強制的に餌食になっているので、信頼関係はない。


 普通の状態では考えられないような暴挙も、絶対の主と言う立場を得てしまってから、たかが外れてしまったのだろうか。


 星出が召喚した蟻に関しては欲望の対象になるような魔物では無い為に一応信頼関係が出来てはいるのだが、人型の<淫魔族>や<光族>が言葉を発する事が出来ない蟻の通訳を自ら買って出る事は無い為、十分な意思疎通は出来ない状態にある。


 そんな中でも、女性陣二人は眷属を上手く使って常に情報収集を怠る事は無かった。


 最も身近にいる四宮と辰巳と言う存在の愚行を見ているので、油断する気持ちになれなかった事は幸運だったのだろう。


 そんなある日、召喚者として公開されている人物四人が、この辺鄙な町のギルドに金目金髪の女性冒険者と共に現れたと言う情報を掴む。


 その四人の風貌は何度確認しても同時に召喚された吉川達であり、その強さは別格と言っていい程だと言う情報を得て、残りの一人の金目金髪の存在はよくわからないが、名前は三原と名乗っているらしく、どう見ても日本人……つまり、今迄の情報から、この世界の人間ではなく召喚者である事を把握した。


「ちょ、どうする?まずいよ。どう見てもあいつ等、辺境を旅しているって言っているらしいから、アタシ達狙いだよ!」


 流石に直接的に命の危機が迫っているので、いつも明るい岡島でさえ真剣だ。


有希(岡島)、ここは覚悟しなくちゃいけないかもしれない。上の二人は確実に見つかる。今この情報を仮に教えたとしたら、最悪は私達を売って助かろうとする可能性すらある。ううん、きっとそうする」


 とんでもない行動ではあるが、岡島も否定できない。


「私達が助かる方法は一つだと思う。この世界が嫌になって自ら核を破壊して消える……と伝えて、そうしたように見せるしかない」


「で、でも……そう伝えた瞬間に、最悪出流(四宮)達からも狙われかねないよ?」


 極限状態の中、選択を迫られる二人。


「そう。きっとそう。だから、夜中に……と言ってもあいつらの<淫魔族>が邪魔だけど、その隙をついてダンジョンが朽ちたように見せかけて、手紙をあいつらのダンジョンの前に置いておく。本当にこれは賭け」


「……そうだよね。どっちみち冒険者組に見つかれば終わりだもんね」


 見逃してくれるかもと言う甘い考えはない。


 逆の立場であれば、絶対に見逃さないからだ。


 ここで力を発揮するのは、星出の眷属である蟻だ。


 この種族は地中に潜んで活動し、その屈強な顎で岩を軽々とかみ砕き、運搬する事も出来る。


 地下型のダンジョンである為に、上手く活用できるかもしれないと言う思いで召喚しておいたのだが、その保険が有効に活用できる時がやってきた。


「皆は、上の連中の<淫魔族>の動きを探って」


 ダンジョンのコアルームに食料を詰め、その後はコアルームからダンジョン入り口に向けて大きな岩を徐々に詰め込み始める。


 この頃には四宮や辰巳は地下の二人には興味が無くなっており、一切顔を出す事も無ければ声をかける事も無かったのが幸いし、誰にも気が付かれずに、もう少しで完全に外からは潰れたダンジョンに見える状態にまで達していた。


 ここで、漸く入り口を完全に塞ぎ続ければ安全に住めるのではないかと思い至った二人は眷属に聞いた所、ダンジョンのレベルも上昇せず、入り口を意図的に完全に塞いだ状態を維持していると、コアが自然と破壊される事実を教えられた。


 最早聞かれた事にしか答える事の無い眷属達だが、そこには思い至らない二人は詳細を何とか聞き出す事に成功したのだが。


 その内容は、二人にとっては愕然とするものだった。


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