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「アンタ達が召喚されたのは、このラスリ王国。同一召喚時には他の場所には行っていないと言う情報があるから、他の召喚者達もラスリ王国にいるのは間違いない。で、立場が不明な二人については、ギルドで召喚者の冒険者情報がアンタ達以外に出回っていない事から、余程慎重な奴か、ダンマス側って事になるけど、どんな性格?」
自分達の情報がすっかり出回ってしまっている事を改めて告げられて肩を落とすが、もうどうしようもないので、湯原と水野の事を思い出す。
常に文句を言っても言い返す事は殆ど無く、図体だけデカイ木偶の棒と思っているこの場の四人。
その湯原を庇う水野も同じ様に感じていた。
この世界に召喚される直前に湯原が空手をやっていたと初めて聞いたが、だから何だと言う話で、二人に対する見解は変わる事は無かった。
「あいつらが慎重だとは思えない。臆病と言うのなら分からなくもない」
吉川のそっけない話を聞いて、臆病であればなおさらギルドに登録して身分を明かす様なバカげた行動はしないだろうと判断する。
実際には信子自身もはるか昔に召喚者として情報が流れてしまった事が有るので、ここを突っ込む事は出来なかった。
「わかった。と言う事は、臆病故に冒険者に登録していない可能性もある訳だ。登録せずとも、生活する事は可能だからね」
結局、得られた情報では冒険者として活動していない可能性があると言うだけで、ダンマス側なのか、冒険者側なのか不明であると言う結論になり、それならば、立場の明らかなダンマス狙いの方が余程有益だと判断する信子。
「じゃあ、確実にダンマス側になっている者の情報を貰おうか」
自分達も狙っていたので偉そうな事は言えないが、同郷の者を売ると言う緊張感からか、無意識に眼鏡をかけ直す吉川。
「……俺達と同じ四人組。一人は金髪ロン毛、一人は茶髪の男。それと、その彼女達だ」
「へ~、彼氏・彼女なんだ。でも、きっと<淫魔>でも召喚して浮かれているから、亀裂が入っているでしょ」
流石に経験者だけあって、あの空間で四宮達が騒いでいた事をきっちりと言い当てている。
「そんなチャラ男君達なら、頭もスカスカだから辺境に行けば一発でしょ。どこに飛んだのかは分からないんだよね?」
「何も相談しなかったから、分からない」
獲物を狙うハンターよろしく、信子は四宮達を追い詰めていく。
「う~ん、私の時とは与えられた情報が違うと思うんだよね。と言うか、余りにも昔だから、私も飛ばされる際にどんな情報を貰ったかよく覚えてないし……そこは、虱潰しに行くしかないかな」
こうして、半ば強制的に王都を出立して辺境巡りをする事になった一行。
当然道中には冒険者としてのレベルを30まで引き上げると言う約束を実行するべく、かなりの強さの魔物の相手をさせられている吉川達。
流石に死にそうな時には信子のフォローがあるのだが、完全なフォローではなく明らかに手抜きのフォローである為、全員が死に物狂いで対応している。
信子としてはこの四人の内の誰か一人でも生き残っていれば情報はつかめるので、積極的に助ける事はしていないのだが、助ける姿勢を見せないと、四人が決死の覚悟で逃げたり情報を秘匿した場合に面倒だと思っていた。
「ちょっとよっし~、最近魔物が強すぎない?確かにレベルは上がったけどさ?ハッキリ言って、あの人が楽したいだけなんじゃないの?」
完全に防御魔法を発動して魔物の攻撃を受け、隙を生み出させている椎名は、横にいる吉川に思った事を告げる。
「自分も少々思う所はある」
「残念だけど、私も理沙に賛成だな」
背後に位置している笹岡や藤代からも同じ様な事を言われている吉川だが、じゃあどうすると言った話になっても最終的には結論が出ないので、黙って魔物に視線を向ける。
旅を始めてからかなりの時間が経過しており、道中立ち寄っているギルドでダンマスを仕留めたと言う情報ばかりか、新たに出現したダンジョンの情報すら無いので、いまだに獲物を探して移動している。
この時点で相当重傷を負う事は有れども、椎名の光魔法によって完全に回復されると言う流れが出来上がっており、四人はパーティーで行動しているために等しくレベル28にまで到達している。
「自分思うに、もう信子殿の手助け無しでレベルアップが出来るのでは?」
矢を放ちながら、再び笹岡がこう告げる。
これには吉川も同意する所だが、今更信子と別行動と言っても、彼女は認めないだろう事はこの場の四人は分かっている。
その為、四宮の情報を掴んだ時に決別しようと心に決めていた。
自分達が四宮達の前に現れる必要はなく、信子が四宮達に目が向いている時に去ろうと思っていたのだ。
こうして強制的に日々旅を続けている吉川達だが、レベルアップの恩恵か一切の疲れもなく順調に旅を続け、ついに吉川達が送られた寂れた町に到着した。
ここでもギルドで情報を聞くが、今迄と同じくダンマスの情報も無ければ、ダンジョン発見の報も無かった。
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