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互いに相談した通りに、人型は同性の一体と、スライム、そして蜂と鎖を引き連れている。
そのすぐ後ろに、今尚ダンジョンと主人の二人を全力で守ってくれているイーシャとプリマの二人だ。
「先ずは、俺の方から紹介させてもらおうかな」
湯原の言葉に、人型の<魔人族>である男が一歩前に出て深く一礼する。
身長は主である湯原と同じ180cmで筋肉質。
金と銀のオッドアイに、黒い短髪の中からよく見れば小さい角が二つ見えている
「某、この度主であるセーギ様に召喚頂きました眷属であり、<魔人族>の……」
「デルで良いかな?」
言葉に詰まっている男にすかさず名前を付けてみる湯原だが、実は非常に安直で、魔族…悪魔…デビル からデルになっていたりするのだが、デルは嬉しそうに微笑む。
「我が主からデルの名を頂戴いたしました。宜しくお願い致します」
……パチパチパチパチ…‥
何となく日本の時の癖で拍手をしてしまう湯原と水野に吊られ、イーシャとプリマの二人も手を叩く。
「次は、<蜂族>の……ビーだ!」
これも安直だが、詳細は説明しない。
正にそのままだからだが、この世界ではそのような関連が分かる者はいない。
日本の蜂とそう大きさは変わらないが、何故か可愛らしい黒目が目立つ蜂の魔物。
湯原の紹介の際に前方に飛んで移動し、滞空しながら何となく頭を下げているように見える。
……パチパチパチパチ…‥
今度は、人型眷属であるデルと水野の眷属である<属性族>の女性も共に拍手をしている。
「最後は……スラビだ!!」
もう名前の由来の説明の必要はないだろう。
ピョンピョン跳ねながら前方に進むと、空中でくるっと一回転して戻るスライムB。
こぶし大の大きさで、やや白色の体をしている。
……パチパチパチパチ…‥
「そして、俺のダンジョンを守ってくれている大切な仲間、イーシャだ!」
突然自分に振られて驚くイーシャだが、本当に仲間として扱ってくれている事に感激しつつ前に出る。
「ね、猫獣人のイーシャなの!ご主人様達の為に頑張るなの!」
……パチパチパチパチ…‥
「フフ、では次は私ですね。先ずは、<属性族>のレインちゃん!」
こちらも主である湯原と全く同じ身長の160cmとなっており、名前の由来はその美しい七色の髪にある。
透き通るような金の瞳を全員に向けると、美しい所作で一礼して簡単な自己紹介をする。
「私、カーリ様に召喚頂きましたレインと申します。今後ともどうぞよろしくお願い致します」
……パチパチパチパチ…‥
「次は、フフフ、チェーちゃんとスラエちゃんです!」
……パチパチパチパチ…‥
銀色の鎖を蛇のようにしながら進み、その先端にはちゃっかりとこぶし大の大きさである無色透明のスライムAが乗っているので、二体を一気に紹介する水野。
スラエは、本来存在を認識されない程に透明になれるのだが、この場では敢えてそこまではしていなかった。
この二体の名前の由来は想像通りだろう。
「そして、私の方でもずっとダンジョンと私達を守ってくれていた大切な存在、プリマちゃん!」
「あ、ありがとうございますなの。プリマなの。頑張るなの!」
……パチパチパチパチ…‥
一通りの紹介が済んで、眷属を含めて10の個体が混ざり合って座りながら親睦を深める。
「実際、デルとレインは……申し訳ないが暫くはコアルーム専属だろうな。その姿、替えられるのか?」
どう見ても外観から人とは異なる種族であり、眷属だと明らかになってしまう可能性に言及している湯原。
「我が主。大変申し訳ありませんが、今のレベルではこのままになりますが、恐らくレベルが上がれば角は隠せるようになる……と思います」
デルの回答に続き、湯原の意図を正確にくみ取ったレインが補足する。
「ですがセーギ様。恐らく危惧されている眷属としての認識は、この姿のままでもされないかと思います。私の知識では立場はどうなっているかは分かりませんが、同族はこの世界に普通に存在しているはずですので」