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(2)

 俺の背後で怯えている水野に対し、金髪四宮はその手を水野の方に向ける。


 もちろん俺はその手を俺の背後に通すつもりは一切ないので、普通に掴んで威圧する。

 あいつが言っている、睨みつける行動と共に……


 初めてこれ程強く人を至近距離で睨んだ所、少々怯えているような四宮。

 ついでに、金魚の糞共も怯えているように見える。


 これで普段俺が睨んではいないと分かって貰えたはずだが、この男達の脳ではそこまで理解する事は出来なかったらしい。


「てっ、テメー……調子に乗るな!!」


 見下していた相手に恐れをなした事を知られたくないからか、俺に捕まれている手を振りほどくと、殴りかかってきた。


 これを避けるのは問題ないが、背後の水野が怪我をする可能性があるので一応受け止めておこう。


……バシッ……


 拳を掌で受け止めて握り潰すつもりで力を入れる。


 委員長タイプの吉川達も、まさか俺がここまで荒事に対応できると思っていなかったのか目を見開いている。


 そんな暇が有ったら先生を呼ぶなり、目の前の金髪バカを止めるなりしてくれれば良いのに、そうはしないらしい。


 その間にも、再び手を振りほどいた金髪四宮と腰巾着のけんかっ早い雑魚(辰巳)は沸騰し始める。


「この野郎、手加減してやりゃ調子に乗りやがって」


「この際だ。良い機会だからやっちまおうぜ?四宮」


 流れる様に二対一に持って行くところも雑魚らしくて良いが、こうなってしまっては俺も腹を括るか。


 今まで何を言われても黙って耐えていたのは、いや、黙ってはいなかったけど一応耐えていたのは、俺は空手をやっているからな。


 中途半端なチンピラを相手にすると大怪我をさせてしまう可能性があるし、有段者が素人に手を出すだけで犯罪者扱いになる。


 だけど、ここまで目撃者がいれば正当防衛になるだろう……と期待しよう。

 一応手加減はしてやるし、問題ないだろう。


 で、勝手に突っかかってきて熱くなっている二人の攻撃を軽くいなして、際限なく拳を振り回して来るのを防ぐ為に、軽く鳩尾に一撃入れて黙らせる。


「オェ~」


「て、てめぇ~!ぜってー許さねーぞ!」


 これだけ手加減してやってもこのザマの癖に、威嚇だけは一人前だ。

 まるで立場の分かっていない子犬みたいだな。


……ガラララ……


「お前ら、何をやっている!」


 そこに漸く来たのが担任。

 蹲っている四宮と辰巳、そして普通に立っている俺と近くに怯えている水野。


 状況が良く分からないようで、見かけ優等生委員長の吉川に事情を聞いているようだ。


 で、俺の耳に聞こえてきたのは有りえない言葉……


「四宮が湯原に挨拶をしていたのを完全に無視したので、四宮と笹岡が湯原に注意したのですが、何故か湯原が二人に突然殴りかかったんです」


「え?おいおい、お前らふざけんなよ?こいつらが有りもしない文句を付けた上で殴りかかってきたんだろうが!お前の目は節穴か?」


「私も見ましたし、聞いていました!湯原君が突然暴力を振るったんです!」


 当然俺が事実を告げるのだが、見かけだけは真面目な四宮の彼女である星出が追随してきた。


「湯原!お前は空手の有段者だったな?どうなるか分かるよな?」


「先生!湯原君は悪くありません。あの二人が目つきが悪いといつも言いがかりをつけて、今日は私に殴りかかろうとしたんです。それを止めてくれた……」


「水野~、嘘は良くないよ?私達も吉川君の言っている事が正しいと証言します!」


 水野の必死の抵抗も、吉川グループの藤代によって轟沈する。


 こうなると、ほぼ孤立している俺と水野に味方をしてくれる様な人物はこのクラスにはいないだろうな。


 で、翌日に職員室で転校について言われたわけだ。


 こうなったら、本当にあいつ等をボコボコにして転校してやろうかと言う勢いで教室に入り、初めて四宮達四人と吉川達四人を睨みつける。


「はっ、この程度でビビっているような奴が嘘ばかり言いやがって。嘘の証言を否定しなかったお前らも同罪だからな。無事に家に帰れると思うなよ?」


 ついでに、日和見のクラスメイトにも初めて(・・・)凄んでおく。


 今の俺が出来るのはここまでだけど、こうなると残される水野が本当に心配だ。

 最悪は、俺の転校先に一緒に行かないか?と伝えるために水野の近くに向かう。


 道中のクラスメイトは、まるで波が引くように俺から遠ざかっていくのが少し悲しかった。


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