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(1)

「そう言う訳で、お前には早々に転校してもらう必要があるんだ。当然事情はわかるね?湯原君」


 職員室で、気弱そうな担任が見かけだけは申し訳なさそうに俺にこう言ってくる。


 事の発端は、この担任の指導力不足だと思うけど、もう今更どうしようもない。

 こうなったのは少し前のアレが原因だろうから……


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「おい、湯原!テメーのその目が気に入らねーんだよ。いつもいつも睨みつけやがってよ!偉そうにしてんじゃねーぞ?」


「湯原君。申し訳ないけど私もそう思うな。もう少し優しい表情できないかな?私、いつも睨まれて悲しいよ」


 高校一年で180cmとゴツイ体格もあってか、自分じゃどうしようもない吊り目についてあげつらってくる二人。


 毎日毎日本当に下らない事を良く飽きもせず出来るもんだ……と、ある意味感心出来る領域に達している。


 一人は直接的に文句を言って来る四宮(しのみや) 出流(いずる)

 俺に言わせれば、お前の無駄に染めた金髪の方が気に入らないが……


 そこに、あたかもアドバイスのように言ってきているのは、四宮の彼女である星出(ほしいで) 春香(はるか)


 こいつは靨や八重歯、奇麗な黒髪を一纏めにして一見清楚で見た目可愛らしく……実際、星出の性格を知らなければ惚れてしまってもおかしくない雰囲気を出している。


 まっ、本当のクソみたいな性格を知っている俺から見れば、吐き気を催す程邪悪な顔にしか見えないけど。


「これは元からの目だって、何度も言っているだろ?これ以上は変えようがない。そもそも、睨むも何も、二人を見たのも今日は今が初めてだ。余計な言掛かりは止めて貰いたいな」


 当然の事を言うが、ここで引き下がる程の頭は持っていないこの二人と、こいつらとつるんでいる同レベルの残りの二人。


「おいおい、湯原。せっかく星出がアドバイスしてくれているんだから、素直に聞いとけよ」


「本当、そうだよね。これ以上クラスの雰囲気を悪くしないでほしいな」


 四宮の腰巾着で、大して強くないのに喧嘩っ早い辰巳(たつみ) 英人(ひでと)と、辰巳の彼女の岡島(おかじま) 有希(ゆき)だ。


 辰巳の方も髪の毛は地毛ではなく茶色だが、その彼女である岡島も星出と同じく見た目は普通(・・)に見える。


 むしろ黒目黒髪のポニーテールで150cm程度の身長、更には少々垂れ目な事も有って、庇護欲がそそられると思う。


 もちろん、“と思う”と言うのは岡島の本当の性格をよく知っているから、第三者がぱっと見て感じると思う感想だ。


 こんな一方的に難癖をつけられるやり取りが毎日あるのだが、周囲は俺達に向かって冷めた視線を向けるだけ。


 特に一部……と言っても、こっちも常に四人でつるんでいる、ある意味真面目集団は、俺を含めて絡んできている四人に対しても明らかに不快そうな表情を浮かべている。


 俺としては巻き込まれているのだから、俺を含めて睨むのはお門違いだ。


「えっと、湯原君は優しいですよ?目も生まれつきだから、仕方がないと思いますけど」


 このクラスで唯一の味方は、160cmで俺と比べると非常に小柄で可愛らしい垂れ目の女の子、水野(みずの) 香織(かおり)


 席が離れているのに、毎日事が起こると必ず助け舟を出しに来てくれる。

 正直に言おう。この子は性格も良く、見た目も可愛い。


 つまり、俺がかなり気になる人であったりする。


「水野~、お前さぁ!何かコイツに弱みでも握られているのかよ?」


「そんな事は無いですよ」


 金髪四宮に言い寄られて、少し怯える水野の前に俺が入り込むのもいつもの通り。


 さらに言うなら、下らない言いがかりを咎めもしないで、本当に不快そうな視線を向けて来るあの四人もいつもの通りだ。


 俺の中では委員長と言ってもよさそうな風貌で眼鏡君の吉川(よしかわ) 幸次(こうじ)

 何故か七分刈りなのだが、最近知った所によると剣道部に所属している為らしい。


 もう一人の男は弓道部に所属している五分刈りの男、笹岡(ささおか) (みつる)


 そこに二人の女、別に付き合っていなさそう……と言うか、俺には一切関係ないから良く知らないが、噂によれば単純に友達らしいけど、


 藤代(ふじしろ) (あや)と、椎名(しいな) 理沙(りさ)の合計四人の視線が突き刺さる。


 何故か四宮達も吉川達には絡まないし、吉川達も四宮達に何かを言う事も無ければ、関与しようともしない。


 無実の罪と言っても良い俺と、仲裁に入ってくれている水野が悪いと言わんばかりのこのクラスの雰囲気に嫌気がさしていた所で、何を思ったのか、四宮がいつもと違う行動に出た。


「お前もさ、何いつも庇いに来ているんだよ?鬱陶しいぞ!」


 そう言いつつ、俺の背後にいる水野に手を出そうとしたのだ。


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