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 四日ほど移動している中で、やはり魔物が襲い掛かって来る事が有った。


 一瞬馬が嘶いたかと思うと、急停止したのだ。


 その後、前後にいるはずの護衛の冒険者が馬と共に急いで移動する気配を感じ、幌を少しだけ空けて周囲を確認する湯原。


 本人のレベルは水野と共に永遠の1である為、気配察知と言われる便利な能力は持っていない。


 馬と共に冒険者が移動した気配と言うのも、大きな音を立てていたので誰にでも気が付けるものだ。


 そう時間がかからずに戻ってきた冒険者は、小さ目の水晶の様な物を手にしていた。


 少し遠目で見えただけだが、恐らく魔核だろうと言う事だけは理解できる。

 

 流石に四日も共に移動していると、互いに少しくらいは会話をする事も有った。


 どうしても移動距離が稼げずに夜が更け、町に到着できる可能性が低いと判断されて野営を行った日が有ったのだが、この日は特に冒険者から情報を得る事が出来ていた。


……パチパチ……


 焚火を囲んで、御者、水野、湯原、冒険者二人が食事をしている。


「お二人さん、新婚ホヤホヤの旅行ってとこかな?この馬車に乗っていると言う事は、縁結びのあのダンジョン跡地かな?」


 大剣を地面に乱雑に突きさして話しかけてくるのは、女性の冒険者。


 真っ赤な髪をポニーテールにして、その引き締まった肉体は正に美の一言しか出てこない程に均整の取れた鍛えられ方をしている。


「そうに決まってんだろ?わかりきってる事を聞くんじゃねーよ。なぁ?お二人さん」


 この男性は、湯原や水野と同じくフード付きの外套を羽織ってはいるが、フードは外しているので、女性と同じく真っ赤な髪が良く見える。


 魔法を攻撃の主体としているようで、短い杖を大切そうに懐にしまい込んでいる。


 会話が進む中で、湯原と水野は非常に面白い情報を得る事が出来たと共に、やはり常に互いの呼び方まで気を付けていて正解だったと安堵する。


 それは…‥‥


「実はよ、知っているかもしれないが、少し前に王都のギルドで召喚者が出たんだよ。で、そいつらが冒険者の登録をしたんだが、歴史上、同時にダンジョンマスターが召喚されているのは間違いない。辺鄙な所に移動する連中程その疑いがあるから、正直に言うと、俺はお前達がダンジョンマスターじゃないかと疑っていた」


「疑っていた(・・)……と言う事は、疑いは晴れたと言う事で良いですか?」


「あぁ。申し訳ないが、レベル鑑定をさせて貰ったからな」


 いつの間にか鑑定を掛けられていた事に驚くが、永遠のレベル1では阻害する事は出来ないので、今後対策が必要だと心に留めて置く湯原。


 今この時でも冒険者の二人は攻撃のそぶりを一切見せないので、鑑定によって自分達が不利になる情報は見えていないのだろうと取り敢えずは判断するが、視線は厳しく二人の冒険者を見つめ、何をおいても水野を守れる姿勢を取る。


「おいおい、悪かったって。もうこれっぽっちも疑ってはいねーから、そう緊張しないでくれ」


「アンタが余計な鑑定をするからでしょ?って、相棒がごめんね。召喚は一度に行われるので、マスターも既に召喚されてから三週間程度たっているはず。マスターはレベル1不変である為に必ず身を守る護衛を付けているから、召喚直後であればそのような事は無いらしいけど、流石に三週間も経っていれば、護衛を付けていない事は今まであり得ないと言うのが通説なのよ」


「そうそう。それで、俺はそこの奥さんがマスターで、旦那が護衛と踏んだわけだが、両人共にレベル1。仮にあんたらがダンジョンマスターだとしたら、とんだ世間知らずの突然変異、護衛すら呼べない出来損ない以外には考えられねーからな」


「それに、召喚者はこっちでは聞いた事の無い様な不思議な名前で呼び合っているから、お二人さんとは完全に違うわ。私は最初からそう言っていたけど、万が一マスターであれば一攫千金だからと言って鑑定まで行っていたってわけなのよ。本当にごめんね」


「はぁ、まぁ、済んだ事は良いですよ。疑いも晴れているようですから。カーリ(湯原)も良いだろ?」


「え?はい。大丈夫です。ところで、お二方はこう言った護衛を常にされているのですか?」


 ここぞとばかりに、少しでも情報を集めようとする水野。


 突然確信を突かれた時には焦りもしたが、横にいる湯原が動じる事無く自分を守ろうとしている動きを見て惚れ直していた事もあり、余計な動揺が表に出る事は無かった。


 逆に、目がハートマークになって赤い顔で湯原を見ている所を冒険者二人にはしっかりと見られているのだが、その姿を見た冒険者二人は、完全に新婚で浮かれている普通の人であると改めて確信していた。


「俺達は、このコースの依頼は初めてだな。思っていた以上に魔物が出ねーから、鍛錬を兼ねた依頼のつもりだったが、正直当てが外れたと言う思いはあるぜ」


「そうそう。今回は召喚者の噂を聞いて王都に急いできたので、辺鄙な場所に移動するマスターを始末すると言う一縷の望みにかけてこの依頼を受けたのよ。結果大外れだったけどね。あ、安心して。依頼はきちんとこなすから」


 二人が想定した以上に召喚者の情報は知れ渡っており、更には完全にダンジョンマスター側の人間は冒険者達の糧として見られている事実を突きつけられた。


 ただ、この数日だけ行動を共にしたこの二人のように、気の良い冒険者もいるのだな……とわかっただけでも収穫なのだろうか。


 こうして周辺に出て来ていた魔物のレベルが2から3程度であると言う情報も得て、この日の夕食は終了した。


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