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 今日の女子会は神保のダンジョンで開催されており、丁度その時に岩本と三原が侵入してきた。


 いつもの恋バナで非常に盛り上がっていたのだが、インキュバスによって二人の侵入が伝えられると話題は岩本と三原に移行する。


 するのだが……どうしても恋バナとの関連を即座に断ち切る事はできていないのは、安全が担保されている環境でこの楽しい一時を過ごせる事を喜んでいるからだろうか。


「そう言えばさ~、この二人って、付き合っているのかな?そこの所、どう思う?その頭脳で教えてよ?ハライチさん」


「そうですね。この“俺が思うに”男(岩本)は恋愛の何たるかをわかっていないと思いますよ?朋美様」


「て、手厳しいですね、ハライチちゃん。でも、確かに三原さんの方も岩本さんを見る目が恋愛の目ではないですね」


「流石はカーリさん。名探偵。アハハハハ!あんな連中が私達より先に恋人見つけるなんて、あってはならないわよね?」


「その通り!やっぱり神保さんは流石よね?私も完全に同意するわ!神保姉さんって呼んじゃおうかしら?」


「お姉ちゃんは私ですよ?朋美!」


 もう無茶苦茶になっているのだが、この場で冷静なインキュバスと護衛のチェーは二人が持っている魔道具を処理する必要があると判断していた。


 ダンジョンコアから作られた非常に貴重な魔道具で、召喚冒険者がダンジョンに侵入しても糧にならないと言う優れものだ。


 これがあるために他のダンジョン侵入時でも糧を与える事がなかったのだが、それでは全く生かしている意味がないと思っているインキュバスは、チェーを通して湯原(セーギ)の判断を仰ぐ。


 その結果は、その魔道具だけをきっちり破壊するように言われたので、チェーがすかさず分裂体を作成して一気に二人の元に行き、いつの間にかその効能だけを捕縛破壊して戻ってきた。


「さすがに仕事が早いですね、チェー様。これで……糧が入っているようです」


 インキュバスは、自らの主が管理する神保のダンジョンに大きな糧が入っている事を把握し安堵する一方、何が起こったか理解していない岩本と三原は、自らの存在がダンジョンに大きな糧を与えているとは思っていない。


 その作業が行われている時でも女子会は続いているので、作業終了後に憂いは一切なくなったとばかりにインキュバスも新たなお酒とおつまみの準備をするのだった。


 こうしてダンジョンマスターと一部召喚冒険者、その眷属や魔物達ダンジョン関連の者が楽しく過ごしている中で、岩本と三原は日々過酷な作業を強いられ、自分達をこのような環境に落としたと思っている湯原(セーギ)水野(カーリ)に対する恨みを募らせていた。


 全くの逆恨みであるが、今チャンスはないが、1階層入り口付近であれば退路も確保できるし、仮にダンジョンの外にいる時であれば容赦なく仕留めてやろうと思っている。


「今日はこれだけか?」


 最近では貴族達からの納税も全くなくなってしまったミド・ラスリの機嫌はすこぶる悪い。


 今日の岩本と三原は、ダンジョンではなく王都の近くで目撃情報の有ったマンティスを5体程仕留めており、一般的な冒険者であれば全く手の出ないレベル30の大物なのだが、ラスリ王国のギルドに納品しても全てで虹金貨1枚(100万円)にしかならなかった。


 かつての贅沢を忘れられないミド・ラスリは、金貨1枚(1万円)を二人に投げるとその場を後にする。


 いつも通りに、僅かに残った護衛の騎士を引き連れて少々寂れてしまった繁華街に繰り出すのだ。


「くっ、俺が思うに、あいつ(国王)はクソ野郎だな」


「そんな事は言われなくてもわかっているわよ。そんなわかりきった事よりも、アンタ、契約魔法を使えないの?」


「……俺が思うに、習得できていない」


 契約魔法が使えれば、レベル50を超えているので今の奴隷契約を強制的に解除する事ができるのだが、二人共に習得していない。


 岩本は以前契約魔法を行使できたが、ダンジョンに関する者だけと言う限定であり、今はその能力すらチェーによって剥奪されて一切使う事が出来ないのだ。


「いつまでこんな事をしなくちゃならないのよ!」


 ギルド併設の食堂で貧相な食事をしている三原だが、事態を改善する方法は全く思い浮かばない。


「俺が思うに、先ずは魔道具だ」


 奴隷契約をさせられてから私財を強制的に没収されているので、失っている右手と右肘下は無いままに日々活動している二人。


「そんな事を言って、アレがいくらしたと思っているのよ!今の私達、二人で日に金貨1枚(1万円)よ?場合によってはレベル一桁の冒険者よりも低い収入の状態で、あんな高価な魔道具を買えるわけがないでしょう?」


「だが、俺が思うに、それがなければ始まらない」


 毎日解決策のない話をしながら過ごしており、余裕は一切持てなくなってしまっていた。


「こんな事なら、俺が思うに大人しく過ごしておけばよかった」


 後悔先に立たず!を体現している岩本だ。


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