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「アンタさぁ、今後の活動はどうするつもり?今日は無事だったけれど、次も同じとは限らないわよ?」
「そうだな。仮に俺達が真面に動けたとしても、あいつ等には勝てねーだろうからな。残念だが、ここ以外だと……少し前は弦間のダンジョンも他と戦闘していたらしいから、安定している場所。以前護衛で二人を送って行った先、ラスリ王国の縁結びの聖地にできた新しいダンジョンに行ってみるか?」
「それは良いかもしれないわね。何やら噂によれば、一階層が丸々町になっていて好きな家に住めるらしいし、安全だって言うんだからちょっと信じられないけれど、行く価値はあるわね。ひょっとしたら、近くの村でセーギ君やカーリちゃん、イーシャちゃんにプリマちゃんにも会えるかもしれないわ!あの二人、傷は良くなったのかも気になるし、行きましょうよ!」
「お、おう。賛成してくれてよかったぜ。俺としちゃー、移住する勢いなんだが……それでも良いか?」
「大丈夫よ。私達は冒険者。どこでも生活できるでしょ?」
思った以上の勢いに押されているハシムだが、共に移動して活動できる事に安堵している。
当然普通の冒険者なので、荷物も積んで一月以上の馬車の旅を行う事になる。
その原因となった召喚冒険者の吉川と笹岡は……
「笹岡、どうする?あのダンジョン……マスターを仕留められるかもしれないと安易に考えていたけど、あの殺気。ハッキリ言って、俺達の今のレベルじゃ太刀打ちできない」
「確かに、吉川殿の言う通り。何故殺気だけで済んだのかは不明だが、次も無事でいられる保証はない。ここは、移動すべきでは?」
美智や朋美を助けるために、異常に殺気立ったゴースト10体の侵入時の波動を自分達に向けられたものだと勘違いした召喚冒険者の二人も、レベル上げの場所を変える事を決定してしまった。
「そう考えるとそろそろ頃合いかもしれない。あの女もレベル30以降は上昇し辛いと言っていたけど、そこから上昇して今は35もある。これだけあれば、藤代と椎名も始末できるのでは?」
「それは……そうかもしれない。だが、三原に対抗できるかと言われると……正直、不安が残るな」
「大丈夫だよ。あいつは片腕。俺達二人で攻めれば遅れはとらない」
「では、ラスリ王国の今は亡き四宮達がいたダンジョン周辺の魔物を攻めるのか?」
「いや、さっきギルドで噂を聞いたけれど、あの国に何やら新しいダンジョンが二つできて、相当ユルユルらしい。時期的にあの二人、湯原と水元だろうね。あいつ等ダンジョンマスター側だったみたいだよ。丁度良くないか?」
その言葉を聞いて、いやらしい笑みを浮かべる笹岡。
同郷だろうが餌・糧としか見ておらず、自分達が負けるとは爪の先程も思っていない。
「確かに。それで一気にレベル40を超えるわけだ。流石は吉川殿」
この二人も、湯原と水元のダンジョンに向かって移動する事になる……のだが、高レベルの召喚冒険者である為、移住を考えて準備をして馬車で移動するリリアとハシムとかち合う事はなかった。
しかしどこに行っても、ある程度は噂になってしまう召喚冒険者達。
その噂によって、彼ら四人の居場所を察知できている三原。
少し前にダンジョン同士の有りえない戦闘、彼女も地上を移動しているレベルの高い魔物、恐らく眷属と思われる者達やゴーストを発見しており、その姿を見てからは行動を控えて大人しくしていたのだが、騒動も収まり、いつの間にか隣国に逃げていた吉川と笹岡も戻って来るとの情報を掴んで、その行先である湯原と水野のダンジョン方面に移動し始めている。
「フフ、あいつ等は両手を切飛ばして復讐してやる。楽しみだ」
一方自ら裏切って攻撃した三原や、突然豹変した吉川や笹岡に狙われているのは感じながらも、ただひたすらラスリ王国で活動を続けていた藤代と椎名。
味方ですら魔物の影響を受けて裏切る可能性がある事に気が付き、今まで以上に慎重に活動していたのだが……時すでに遅く、召喚冒険者として広く認知されてしまっているので、他の冒険者から同行を求められる事が多くなっている。
持ち上げられて気分が良いのでその申し出を徐々に受けている中で、一時期行方不明になっていた国家所属の召喚冒険者が、縁結びの聖地の出来立てのダンジョンの攻略に向かった事を知る。
そう、ダンジョン間の戦闘に巻き込まれ、半ば強制的に弦間のダンジョンに攻め入った挙句、片腕を失って王城に引きこもっていた岩本だ。
王城に戻った岩本の評判はもちろんすこぶる悪く、最も必要な時に逃げて行った臆病者と揶揄されていたのだが、片腕がなくとも相当強く、このままでは自らの地位も危ういと事態を重く見た国王によって強制的に新たに出来たと言われているダンジョン攻略を命じられたのだ。
この情報を整理している藤代と椎名。
彼女達が知っている新たなダンジョンマスターは四人。
三原に逃げられた場所付近には、できて間もないが既に枯れているダンジョン四つを発見しており、自分達と同時期に召喚された四人の物だと判明している。
そうなると、今有名になっている二つのダンジョンは時期的に湯原と水野のダンジョンであり、結果あの二人はダンジョンマスターであったと理解する。
「あの二人だったら、余裕じゃない?」
「そうだね、彩ぴょん。それに、三階層まではサービス階層らしいよ?やっぱり色々舐めているんじゃないかな?きっと私達みたいに本当の苦労を知らないんだよ。少しお灸をすえる必要があるかもね」