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 数多くの魔法陣の先からは激しく放電している雷が見え始めると共に、四つの魔法陣からは鎖が飛び出て朋美を空中でがんじがらめにしてしまう。


「朋美!!逃げて!!朋美!!!お願い!!!」


 もう為す術がないのは誰の目から見ても明らかだが、意識が朦朧としている眷属達や魔物、レベル1のダンジョンマスターであり姉でもある美智達は朋美を救おうと蠢いているがその動きは非常に遅く、どうあっても助けられない。


「……お姉ちゃん。皆、ゴメンね!」


 そんな覚悟の声を聞いた直後に、視界が一瞬で真っ白になる程の雷魔法が行使される。


「朋美!朋美!!!」


 美智の必死な声だけが響くこの20階層だが、未だ視界が戻らない内に朋美の声が聞こえたのだ。


「え?ゴースト??そっか!湯原さんと水野さんの応援、間に合ったんだ!!お姉ちゃん!助かったよ!!!皆!助かったんだよ!!」


 徐々に戻る視界の先には、攻撃をしていたゴーストとは少々異なる雰囲気のゴーストが10体も並んでおり、その全てが手を後ろに組んで攻撃しないと言う姿勢を敢えて取っている。


 流石はレベル99に底上げされた召喚魔物のゴーストであり、ただのレベル80のゴーストの全力の魔法すら一瞬で無効にして見せた上に逆襲し、瞬時に消滅させていた。


 その証拠に、巨大な魔核が一つだけ床に転がっている。


 実は美智がとてつもない脅威が来たと認識したのは、この10体のゴーストが殺気立ったまま一気にダンジョンに侵入したからだったのだ。


 ハライチとミズイチの判断で、先行してゴースト達を向かわせていたおかげでギリギリ救出する事が出来た事を即座に報告し、続いての指示を受けている一体のゴースト。


 徐に一歩前に出ると頭を下げ、こう告げる。


「主が、皆様を回復させたいと仰せです。私の魔法でも可能ですが、今後の話もあるとの事で、転移魔法陣Cの設置を許可頂きたくお願い致します。我ら主のダンジョンのとある階層に繋がります。宜しければ、コアルーム以外の階層で設置頂けるように指示を受けております」


「お、お姉ちゃん。これは受けるべきだよ!」


 ハライチとミズイチとしては、湯原と水野のダンジョンコアルーム直結だけは認める事は出来ない以上は、逆に美智のダンジョンに求めるのは筋違いだと思っているので、主の許可を取ってこう交渉するように指示をしていた。


「そうですね。早くみんなに回復して頂きたいですし、この階層でお願いしても良いですか?」


 美智としても絶望の淵から救われたのだから否はなく、一刻も早く眷属達を回復させたかったのでこの20階層に転移魔法陣Cを設置する事に同意した。


「ありがとうございます。どのあたりが宜しいでしょうか?」


 転移魔法陣Cを手に持ち設置場所を問いかけるが、美智としては正直何処でも良かった。


「どこでも結構です。申し訳ありません、このような事を申し上げられる立場ではないのですが、早く回復させてあげたいので」


「承知しました。では、この階層の出口、下層に続く場所の近くに設置させて頂きます」


 階層のど真ん中に設置してはこの階層の改修がし辛くなるので、端に寄せる事にして設置したゴースト。


 直後に転移魔法陣Cが輝き、中からビー本体、デル、チェー本体、スラエ本体、湯原、水野の順で現れる。


 因みにこの場にいるのがレベル99ばかりとなっているのだが、眷属と召喚魔物では強さの基準が異なるので、チェー本体に対してこの場のゴースト10体が纏めて戦っても勝利する事は不可能だ。


 と、そんな事はさておき、湯原は周囲に倒れている魔物や眷属達の回復を指示する。


「ビー、頼んだよ」


 ビーは巣から多数持ってきた原液状態の回復薬を持ちながらその場で分裂して、倒れている魔物や眷属達にかけて行く。


 他の眷属達は、朋美の事は知っており感謝もしているし、信頼もしているが、姉である美智については初見であり、油断するわけにはいかないので湯原と水野の傍を離れる事はない。


 流石は原液状態の回復薬であり、即座に完全回復する眷属や魔物達。


「あ、ありがとうございます。ありがとうございます」


 その様子を見ながら泣いてしまう美智と、喜びあっている美智のダンジョンの眷属・魔物達と朋美だ。


 その後は少々話をし、湯原と水野の20階層にはゴーストが多数と致死性の罠が設置されている事から、来訪時には魔法陣Cを設置している場所周辺からはあまり動かないようにと言うお願いをして了承してもらう。


 もちろん自分(湯原)達も、この場所から動かずに連絡員が来るのを待っている事を告げた後に帰還していく。


「ね、お姉ちゃん。凄く信頼できるし、強いでしょ?」


「本当ね。もう駄目かと思ったけれど、それをあんなに一瞬で。本当にとてつもないマスターがいるのね。私も頑張らなくちゃ!」


 こう言ってはいるが、相当格上の存在である侵入者や湯原達の訪問によって、いつの間にかダンジョンレベルが48から51に上昇しているのには暫く気が付く事が出来なかった。


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