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<保有レベル30>の意味がよく分からずに、四宮は無意識化でその文字の部分に意識を集中すると……その詳細が浮かんできた。
……呼び出す眷属全体に与える事が出来る初期レベルの総数。レベルは最低1を与える必要がある……
一体を強化してレベル27にして、残りの三体をレベル1にするのか、ほぼ均等に振り分けるのかを悩む事になる。
取り敢えず悩みながらも、少しでも安全に過ごすために作業を進める。
他の連中がどうしようが関係なく、取り敢えずは最低でも自分の周囲を安全な環境にする事が第一だからだ。
<人型><魔物>
ここでは、目的がサキュバス一択の為に<人型>を選択する。
進めた先の選択肢の中にサキュバスが無い事は一切考えていない。
<魔族><精霊族><獣人族>
日本の小説情報によれば、サキュバスは魔族であったはず。
精霊族と言う雰囲気的に美しい感じを与える種族や猫耳の獣人族に意識が行ったが、最上級のおもてなしを想像するとサキュバスに落ち着くので、<魔族>を選択する。
そもそも、余裕がないのでさっさと作業を進めなくてはと言う焦りも有った。
ここで<保有レベル30>の時と同様に全てに意識を集中すれば、もう少し呼び出すべき眷属の詳細情報が得られているのだが……
<淫魔族><吸血族>
「よっしゃ、予定通りだ!」
迷わず<淫魔族>×4を選択するが、レベルを振り分ける必要がある。
安全に過ごすためにはどうすれば良いのかを、焦りながらも必死で考える四宮。
同時に召喚された者達の冒険者組はレベル20を与えられており、あの空間で彼らの動きは見えなかった事から、それは事実だろうと考える。
今思えば自分達も眷属を得られると浮かれていたのだが、あの動きは異常だったとしっかりと認識し、もう少し警戒すれば良かったと後悔している。
と同時に、冒険者組と共に餌にしてやろうと睨みつけていた湯原と水野が、どちらの立場なのかすら確認する間もなくあの空間を後にしてしまった事に今更ながら気が付くのだが、最早どうしようもない。
更に四宮は、この世界にいる冒険者達のレベルがどの程度なのかを何も知らない事に舌打ちする。
実際にレベル20は相当な強さを持っているとされているので、召喚者以外だけを気にする場合には、差し当たり召喚した眷属の特性も有るのだが、レベル30も有れば十分だったりする。
逆に、眷属の属性によってはもう少しレベルが低くても問題ないケースもあり得るのだが、そのような知識もないので、召喚者である冒険者に確実に対抗できるようにすると言う結論に至る。
この世界の標準的な冒険者のレベルは不明だが、取り敢えずは一点集中とする事にした四宮は、一体を27とし、残りの三体はレベル1にした。
最悪、湯原と水野が共に冒険者側で襲い掛かってきた場合、レベル20二人を相手にしても問題ないと思われる状況にしたかったのだ。
全ての設定を終えたようで、目の前が急に光り輝いて思わず目を瞑ってしまった後に、視界が戻ると跪いている四人の美女がいた。
「……いいじゃねーか」
全員同じ顔で同じスタイルだが、少々庇護欲をそそる垂れ目の大きな黒目、そして妖艶さと清楚さを併せ持つ美しく長い黒髪を後ろで束ねているスタイル抜群の女性達。
漸く不安よりも欲望が四宮の心を支配し、差し当たり最もレベルを高くした一体をコアのある部屋から外に出して周囲を警戒させ、残りの三体を本能の赴くままに扱う。
眷属は主の命令に絶対服従であり、主の命を守る事を無条件で行うようにできているので、他の三人も四宮とほぼ同じ工程を辿って眷属を召喚した後に眷属と共に過ごしていた。
欲望が溢れている中でも周囲が辛うじて見えている女性陣の二人、星出 春香と岡島 有希は、淫魔を召喚した所は同じだが、四枠全てを使用する事は無かった。
少しだけ冷静に他種族についても検討していたのだ。
その結果、星出は一体を魔物の蟻を召喚し、岡島は精霊族の光族を召喚していた。
星出としては、地下ダンジョンである為に地下特化の昆虫系魔物の蟻を選択しており、岡島は、この世界での戦闘は命のやり取りになる事を理解しているので、回復や防御が行える精霊族に分類される光族を選択した。
全員がほぼ全ての枠を使用して呼び出した淫魔族は基本的に夢を見せる力を持っている種族であり、夜はレベル相応の力を扱えるのだが、昼間には力が半減する。
種族の部分に対して意識を集中する事によってこのデメリットを知る事が出来たのだが、他種族を召喚した星出と岡島でさえ、淫魔族を召喚するときには説明を碌に意識せずに召喚していた。
この淫魔族のデメリットは他にもあり、対象を夢の世界に強制的に誘えるのだが、効果があるのは自らよりもレベルの低い者で、且つ異性のみと言うおまけつき。
つまり、サキュバスであれば男性やオスにしか戦力とはならず、インキュバスはその逆と言う事になる。
辛うじて召喚初期からレベル5相当の炎魔法、その他の魔法は生活魔法レベルで使えるので、その魔法で対応できる相手であれば性別は関係ない。
本来魔法に対してのレベルと言う概念は存在せずに本人のレベルや修練度に比例するはずなのだが、淫魔族だけは特殊であり、初期からレベル5相当の熟練の人が使うような炎魔法が使用できる代わりに、それ以上威力が増す事は決してないのだ。
このデメリットに着目すれば召喚時のジョーカー的な存在であったりするが、実は彼らの本来の正しい活用方法は他に有ったりする。
そもそも敵には強制的に夢を見せて混沌させる種族である為に強い魔法を必要としない事も有るのだが、本来この種族を最も活用できる環境に置いているマスターは、今の所存在していない。
四宮達が楽しんでいたのは夜である為に各個体が最大限の力を発揮できるうえに両性が隣接しているダンジョンに存在しているので、差し当たり安全に一夜を過ごす事が出来るのだが……
各ダンジョンではそれぞれの力を確認する事もなく、恐怖から解放された為に欲望の赴くままに行動しており、無駄な一夜を過ごす事になっていた。
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